個人タクシーの開業までの流れを解説 | 開業支援の相談なら「開業支援ガイド」

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個人タクシーの開業までの流れを解説

個人タクシーとして開業したいと考えている人の中には、登録方法が知りたい人もいますよね。今回の記事では、個人タクシーの種類や開業の条件、タクシーアプリへの登録について解説します。

個人タクシーとして開業するには、複数の手続きや準備が必要なので、最初に開業までに行うことの流れを確認しておくことが大切です。開業までの流れを把握すれば、何をいつまでに行えばよいかが分かり、開業がスムーズに進むからです。

当記事では、個人タクシーの開業までに必要なすべての準備を、順に並べて解説します。個人タクシーの開業を検討していて、どんな条件や手続きがあるのか全て知りたいという人は、当記事を参考に考えてみて下さい。

開業に必要な許認可を取得するまでの流れ

国内で個人タクシーを開業するには「一般乗用旅客自動車運送事業」の許認可が必要なので、許認可に伴う様々な手続きが発生します。許認可には条件があるため、まずは条件を満たせるかどうかを確認し、その後に許認可へ申請する流れとなります。

【個人タクシーの開業に必要な許認可を取得するまでの流れ】

  1. 許認可の条件を確認する
  2. 許認可に申請する
  3. 法令の試験を受ける
  4. 許可証の交付を受ける

個人タクシーの条件は複数あり、すべての条件を満たせる場合は、一般乗用旅客自動車運送事業の許認可に申請できます。許認可を申請する際は試験に合格する必要があり、許認可の申請を認められ試験に合格すると、許可証が交付されて個人タクシーの開業が認められます。

個人タクシーの開業は、まず一般乗用旅客自動車運送事業の許認可の条件を確認し、次に許認可の申請と試験の申込みをする流れとなります。許認可の条件や申請に必要な提出書類は複数あるので、個人タクシーの開業を検討している人は抜け漏れのないよう確認しておきましょう。

なお、個人タクシーの開業時期は許可を受けてから4か月以内に行わないと、処分を受けることがあります。そのため、許可を取得するまでは自分のタイミングでできますが、許可を取得してから開業までは4か月を目安に取組むようにしてください。

許認可の条件を確認する

個人タクシーで許認可を得るには、10の条件を満たす必要があります。1つでも条件を満たせないと許認可は取得できません。個人タクシーの開業を考えている人は、全ての条件をあらかじめ確認しておきましょう。

【一般乗用旅客自動車運送事業(個人タクシー)の許可の条件】

  1. 資金が160万円以上ある
  2. 普通第二種免許を取得する
  3. 運転に支障がなく健康である
  4. 申請日時点で65歳未満である
  5. 営業区域内に住所があり、申請日前後1年間で継続して1年以上居住している
  6. 運転手の経歴が10年以上ある
  7. 法令違反の場合は過去5年で処分が終了している
  8. 「一般乗用旅客自動車運送事業経営適正化審査(試験)」を受けて合格する
  9. 自己が使用権原をもつ自動車を保有する
  10. 申請する営業区域内にあり、営業所から2km以内にある車庫を確保できる見通しがある

個人タクシー事業は、道路運送法により一般乗用旅客自動車運送事業として許可制です。許可を取得するには、運転スキルだけでなく、資金、健康状態、年齢など、さまざまな条件を満たす必要があります。

個人タクシーの許認可条件は多岐にわたり、人によって異なる場合もあります。許認可の条件を確認する際は、国土交通省の公式サイトにある個人タクシー向けの「許可および譲渡譲受認可申請事案の審査基準」の内容も併せて確認しておきましょう。

求められる運転経歴は年齢による

個人タクシーの許可で求められる運転経歴は、申請者の年齢により異なります。年齢の区分は「35歳未満」「35歳以上40歳未満、40歳以上65歳未満」となっており、年齢区分により求められるハイヤータクシー法人での運転経験が違うからです。

【一般乗用旅客自動車運送事許可で求められる運転経歴】

申請時の年齢 運転経歴の要件
40歳以上 65歳未満 10年以上運転を職業 申請日前3年以内に2年以上区域内ハイタク運転を職業とすること
35歳以上40歳未満 10年以上運転を職業 5年以上区域内でハイタク運転を職業とすること 申請日前継続して3年以上区域内ハイタク運転を職業とすること
申請日前10年間無事故無違反の者は、40歳以上の要件によることができる
35歳未満 申請日前継続して10年以上区域内同一ハイタク事業者に雇用され、申請日前10年間無事故無違反であること

たとえば、34歳の人が一般乗用旅客自動車運送事業の許認可に申請する場合、運転経歴の区分は「35歳未満」が適用されます。そのため、24歳から34歳まで継続してハイヤータクシー法人に雇用されており、無事故無違反であれば、運転経歴の条件を満たすことができます。

一方、37歳の人が許認可に申請する場合は、運転経歴の区分は「35歳以上40歳未満」が適用されます。そのため、34歳から37歳までハイヤータクシー法人で継続雇用された経験が3年あり、トラックやバスの運転手経験を含め運転経歴が10年あれば、運転経歴の条件を満たすことができます。

個人タクシーの10年の運転経歴や無事故無違反の条件が厳しいと感じる場合は、申請する時期を調整することも1つの方法です。無事故無違反の条件は人身損害の場合のみ対象となるので、無事故無違反について不安がある場合はJAFの公式サイト「クルマ何でも質問箱」で確認しましょう。

開業資金は運転資金を含めて用意しておく

開業資金を用意する際は、開業資金と別に運転資金も確保しておきましょう。なぜなら、許認可を申請する際には開業資金を200万円ほど用意する必要がありますが、その200万円は常に口座にあるお金でなければならないので、運転資金としては使用できないからです。

【個人タクシーの開業資金500万円の内訳】

使用目的 開業資金
一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取得するための資金 200万円
一般乗用旅客自動車運送事業の新規許可を取得したあとに運輸局に支払う登録免許税 1万5千円
個人タクシー事業の譲渡を受ける際、連合会や組合に加盟するための資金 150万円
個人タクシー開業後に支払うガソリン代や高速道路代などの資金 150万円
合計:約500万円

個人タクシーで必要となる開業資金の目安は、自動車購入資金を除き、約500万円です。新規許可が可能な営業区域の場合は、連合会や組合に支払う資金は必要ないので、あくまで目安として申請時に200万円、運転資金として150万円ほどを用意しておくと覚えておきましょう。

なお、開業資金については許認可の審査基準には設備資金に70万円以上、運転資金に70万円必要といった記載があります。開業資金をより詳しく確認したい人は「個人タクシーの開業資金は何にいくら必要なのかを解説」を参考にしてください。

許可または認可の申請をする

一般乗用旅客自動車運送事業の許可の申請は、申請したい営業区域を管轄する運輸局で行います。その際、申請方法には「新規許可」「譲渡譲受(じょうとゆずりうけ)」「相続」の3つがあり、申請者はこの3つの中から1つを選んで申請します。

【許認可における3つの申請方法と申請できる時期】

新規許可
対象者 申請できる時期
個人タクシーとして初めて許可を得る人
および
新規許可を募集している営業区域で個人タクシーを開業したい人
毎年9月
譲渡譲受
対象者 申請できる時期
新規許可を募集していない営業区域で個人タクシーを開業したい人 通年
相続
対象者 申請できる時期
これまで個人タクシー事業を行っていた人が死亡し、個人タクシー事業を相続する人 通年

個人タクシー事業は営業区域ごとにタクシーの認可台数が決められているため、新規許可がおりない営業区域も複数あります。そのような地域で開業する場合は、個人タクシー連合会や組合に加盟し、廃業する個人タクシーを紹介してもらい、譲り受けることになります。

新規許可、譲渡譲受、相続のどれで申請するかにより、提出する書類の種類の一部が異なります。個人タクシーの開業で申請する際は、自分が提出すべき書類に漏れがないよう留意しましょう。

なお、いずれの申請方法の場合でも、許認可を取得するには法令試験にも申請する必要があります。法令試験に申請するタイミングは通常、試験を受ける前ですが、許認可に申請できる時期より先に法令試験を受けられる人は、先に法令試験を受けておくと良いでしょう。

提出書類を用意する

一般乗用旅客自動車運送事業の許認可の条件を満たすことを確認できたら、申請書と添付書類を用意します。許認可の申請で提出する書類は申請方法により少し異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。

【一般乗用旅客自動車運送事業の許認可申請時に提出する書類】

申請方法 提出書類
共通
  1. 許可申請書 または認可申請書
  2. 住民票
  3. 自動車運転免許証

(申請前に試験を受けた人のみ)

  1. 健康診断書
  2. 運転に関する適性診断票等
  3. 運転記録証明書等
  4. 自己資金の確保に関する挙証(きょしょう)資料
  5. 営業所(住居)の確保に関する挙証資料
  6. 事業用自動車の確保に関する挙証資料
  7. 自動車車庫の確保に関する挙証資料
新規許可
  1. 戸籍抄本
  2. 自己資金の確保に関する挙証資料

(申請前に試験を受けた人のみ)

  1. 運転経歴に関する挙証資料
  2. 個人タクシー試験合格者証の写し
譲渡譲受
  1. 運転経歴に関する挙証資料
  2. 個人タクシーの経験に関する挙証資料
  3. 在職証明書

(申請前に試験を受けた人のみ)

  1. 個人タクシー試験合格者証の写し
相続
  1. 申請者と被相続人との続柄を証する書類
  2. 被相続人の戸籍謄本
  3. 自己資金の確保に関する挙証資料

(申請者以外の相続人がいる場合のみ)
相続人の同意書

(申請前に試験を受けた人のみ)
運転経歴に関する挙証資料

一般乗用旅客自動車運送事業の許認可の提出書類は、共通の書類と申請前に法令試験を受けた人が提出する書類があります。法令試験を受けた人の書類には挙証資料がありますが、挙証資料とは許認可の条件を満たしていることを証明するためのものです。

許認可に申請する際はさまざまな書類を用意することになるので、計画的に準備することが大切です。特に、各種挙証資料については「採用年月日が記載されていること」といった決まりがあるので、運輸局による公示を確認して適切な資料を用意するように努めましょう。

法令試験を受ける

個人タクシーの許認可を申請する際、どの方法であっても申請から2年以内に法令試験に合格しなければなりません。法令試験に不合格でも、試験は年に複数回実施されるため、次の機会に再受験できます。

【法令試験の概要】

項目 概要
条件
  • 有効な第二種運転免許を持っている。
  • 人口が概ね30万人以上の都市を含む営業区域の場合、年齢が65歳未満である。
  • 人口が概ね30万人以上の都市を含まない営業区域の場合、年齢が80歳未満である。
  • 運輸局によるヒアリング日以前15日以内に発行された運転記録証明書、無事故無違反証明書を提出できる。
  • 申請日以前3か月以内に発行された戸籍抄本を提出できる。
実施月 該当の営業区域により異なる。
例)
関東運輸局の場合:3月、7月、11月
中部運輸局の場合:奇数月
申請先 直接申込みの場合: 営業区域を管轄する運輸局
個人タクシーの組合に所属している場合: 個人タクシーの各組合
出題範囲 1.道路運送法関係
2-1.タクシー業務適正化特別措置法関係(申請に係る営業区域が同法に基づく特定指定地域の場合のみ出題)
2-2.タクシー業務適正化特別措置法関係(申請に係る営業区域が同法に基づく特定指定地域以外の指定地域の場合のみ出題)
2-3.タクシー業務適正化特別措置法関係(申請に係る営業区域が同法に基づく指定地域以外の場合 のみ出題)
3.道路運送車両法関係
受験費用 無料
試験会場 申込み先により異なる(役所の会議室や大学など)

法令試験は○×方式および語群選択方式で40問出題され、9割以上の正解率が求められます。勉強方法としては、テキストの購入やタクシー協会や組合が実施する勉強会への参加が考えられます。自分に合った方法で法令試験の合格を目指しましょう。

法令試験に合格した際に受け取る合格証の有効期限は2年間です。したがって、許認可の申請前に法令試験を受けた人は、合格後2年以内が許認可に申請できる制限時間となるので留意しましょう。

許認可証の交付を受ける

一般乗用旅客自動車運送事業の許認可の審査および法令試験に合格すると、許認可が交付されます。新規許可の場合、許可証に登録免許税の納付書が添付されているため、期日までに登録免許税15,000円を支払いましょう。

【申請方法の違いによる登録免許税の支払いの有無】

許認可の申請方法の種類 登録免許税の支払い
新規許可
譲渡譲受
相続

登録免許税の支払いは、譲渡譲受および相続で申請した場合には必要ありません。どの申請方法でも、一度許認可が交付されると3年間有効です。有効期限の更新を希望する場合は、有効期限が切れる2か月前から1か月前の間に所定の書類を揃え、管轄の営業区域に提出してください。
個人タクシーの許認可は、初回交付時には3年の有効期限が設定され、その後は年齢や事故・違反歴に応じて1年〜5年の有効期限で更新されます。許認可証は個人タクシーで営業する際に必要な重要な書類ですので、なくさないように大切に保管してください。

許可取得後から開業までの流れ

個人タクシーの開業に必要な「一般乗用旅客自動車運送事業」の許可を取得したら、開業に向けた具体的な準備を進めます。個人タクシーを開業するには、許認可を取得した後も複数の手続きがあります。個人タクシーの営業を開始するまでの手続きの流れを確認してみましょう。

【個人タクシーの許認可を取得してから開業するまでの流れ】

  1. 運送約款や運賃及び料金の設定を行う
  2. 車庫の契約をする
  3. 自動車を用意してタクシーとして登録する
  4. 運輸局に運輸開始届を提出する
  5. タクシーアプリへ登録する

まず、個人タクシーの試験に合格した後に行う手続きとして、運送約款と運賃・料金の設定があります。これらの設定では申請書や書類を作成し、運輸局に提出して許可を受けることで、次のステップである「タクシーの登録」へ進むことができます。

タクシーの登録とは、個人タクシー事業者が運転する自動車を運輸局に登録する手続きです。許認可はタクシー運転手への許可ですが、個人タクシーの営業で使用する自動車については別途登録が必要です。

個人タクシーの開業は、許可を取得しただけでは完了せず、取得後に行う手続きが全て完了して初めて正式に営業が可能となります。手続きの中にはオンラインで行えるものもあるため、オンライン手続きも活用しながら、開業準備を進めましょう。

運賃や運送約款の設定を行う

新規許可で許認可を申請した人は、許可証の取得時に運賃や運送約款の設定を行います。道路運送法の規定により、許可を新規で受ける人は運輸支局に運賃、料金と運送約款を提出し、認可を受ける必要があるためです。

【運賃・料金と運送約款の設定の概要】

運賃・料金の設定
書式名 運賃及び料金設定認可申請書
書式のダウンロードURL 国土交通省公式サイト「一般貨物自動車運送事業」
提出先 申請した営業区域の運輸局支部
運送約款の設定
書式名 一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシー)の 運送約款変更認可申請書
書式のダウンロードURL ※関東運輸局宛ての場合
日個東京都営業協同組合「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシー)の 運送約款変更認可申請書」
提出先 申請した営業区域の運輸局

運賃・料金の設定の場合、申請書に加える別紙で具体的な運賃を設定します。別紙には特に書式が用意されていないので、1時間ごとの下限と上限の運賃、早朝、深夜の追加料金と、定額や時間制、事前確定運賃などの適用方法をWordやExcelに記載しましょう。

また、運送約款の場合、国土交通省の定めた「標準運送約款」というモデル約款があります。標準運送約款を運送約款にする場合は、「運賃及び料金設定認可申請書」にその旨を記載することで、新たに運送約款を作成する必要がなくなります。

運賃や料金、運送約款の設定については、譲渡や相続で認可を取得した場合、新たに申請書を提出する必要はありません。新規取得で許可を取得した人は、開業するために法律で定められた必要な手続きとなるので、忘れずに運賃、料金と運送約款を設定してください。

なお、GOやUberなどの配車アプリを利用する場合、運賃の適用方法の一つに「事前確定運賃」があります。配車アプリはAI技術により事前に距離を測り運賃を確定できるので、配車アプリを利用する予定の人は運輸局の公示を確認して事前確定運賃の知識も深めておきましょう。

車庫の契約をする

個人タクシーの運転手として認められた場合、自宅に車庫がない人は試験合格後、約3か月以内に車庫を契約しなければなりません。「車庫の契約が済んだら、タクシーが問題なく車庫に入れることを証明するために、「道路幅員(ふくいん)証明書」を管轄の運輸局へ提出しましょう。

【開業前に行う車庫の手続き】

条件を満たす車庫を契約する
  • 営業所から2km以内にある
  • 個人タクシーの看板を掲げられる
  • 所有する自動車の全体を収容できる
  • 個人タクシーの車庫として使用できる
  • 隣接する区域と明確に区分されている
  • 屋根がなく、地面は砂利でも認められる
  • 土地、建物について、3年以上の使用権原を有する
  • 車庫に面する道路に自動車が通行できる道幅がある
道路幅員証明書を発行してもらう
  1. 車庫がある自治体の道路管理課の窓口に問い合わせる
  2. 道路幅員証明書を発行してもらう

車庫に関しては、許認可申請時に「条件を満たす車庫を確保できる」と申請しています。そのため、車庫を契約する際は申請時の条件となる「営業所から2km以内」「看板を掲げられる」といった複数の条件を満たす車庫を契約します。

また、車庫は車両の出し入れに支障がないことが求められるため、自治体で「道路幅員証明書を発行してもらう必要があります。道路幅員証明の申請時には、申請地の所在がわかる「位置図」「平面図」「公図の写し」「現況写真」を添付するので留意してください。

車庫に看板を掲げる

個人タクシー事業者が使用する車庫には、看板の掲示が必要です。車庫に看板を掲げたら、証拠として写真を撮り、他の必要書類と共に運輸局へ書類を提出しましょう。

【車庫の確保を証明する看板の写真と必要書類】

看板の写真
条件
  1. 車庫に車両を収容した状態の前面からの写真
  2. 車庫に車両を収納しない状態で看板を含む写真
  3. 車庫の前面道路の状態が分かる写真
  4. 一方通行の道路標識を含む写真
車庫を自己保有する場合の必要書類
書類名 固定資産評価証明書
書類の有効期限 取得日から4か月以上
発行場所 各都道府県の税事務所
発行方法 窓口で即日発行
車庫を借りる場合の必要書類
書類名 ①賃貸借契約書(物件名、住所、面積、貸借料、3年以上の契約期間を明記)の写し
②車庫使用承諾書
③看板掲出承諾書
書類の有効期限 取得日から4か月以上
発行場所 車庫のオーナーまたは管理会社へ依頼する
発行方法

車庫の看板には「個人 〇〇タクシー車庫」と記載します。たとえば、田中さんの車庫の場合、「個人 田中タクシー車庫」と記載すれば問題ありません。

車庫のある営業所は、通常、個人タクシー事業者の自宅であり、マンションの場合もあります。マンションの車庫では、大きな看板を取り付けることが難しいため、表札程度の大きさでも問題ありません。ただし、念のため、管轄の運輸局に確認しておきましょう。

なお、車庫にはタクシー点検に必要な計器や備品類を備える必要があります。車庫に備品を置けない場合は、トランクに備品類を入れることになりますが、トランクが一杯だと乗客の荷物を置くことができないため、常に整理するよう心がけてください。

自動車を用意してタクシーとして登録する

新規許可で申請した場合は、自動車をタクシーとして自動車検査登録事務所で登録します。自動車検査登録事務所は運輸局の下位の組織で、自動車の新規登録、名義変更、車検などを行う機関となります。

【自動車検査登録事務所で自動車を登録する流れ】

自動車登録総合ポータルサイトへアクセスする
②「事業者向け手続き」をクリックする
③「登録及び届出等の手続き」の中から該当する手続き名をクリックする
④必要事項を入力して送信する

登録できる自動車は、新規に購入する自動車だけでなく自家用車もタクシー登録ができます。自家用車の場合もメーターの設置、空車や割増などの表示、車体の屋根に表示灯をつける等の決まりを守る必要があるため、私用で自動車を運転しづらくなる懸念点があります。

新規許可を取得した人は、個人タクシーの開業前に自動車検査登録事務所で自動車の登録をします。許認可を譲渡譲受か相続で取得した場合は、既に登録されているタクシーを譲り受けるのでタクシーの登録は不要となるので、登録手続きを飛ばして次のステップへ進んでください。

保険の加入または名義変更をする

車の登録が済んだら、次は保険の加入や名義変更を行います。個人タクシーの保険加入は「旅客自動車運送事業運輸規則」で義務付けられているため、営業開始前に自賠責保険と任意保険に加入しましょう。

【個人タクシーが加入するべき保険の種類】

項目 補償範囲の条件
自動車損害賠償責任保険
(自賠責保険)
死亡:1名につき3,000万円
後遺障害:介護を要する等級により最大4,000万円
障害:1名につき120万円
任意保険 対人賠償:1名につき8,000万円以上
対物賠償:200万円以上(免責額30万円以下)

自賠責保険とは、自動車の運転により人を死傷させる場合に備える保険で、保険対象は人身事故のみとなります。自賠責保険は強制加入保険なので、自動車を運転する全ての人が必ず加入しなくてはならない保険です。

任意保険とは、運転手が任意で加入する保険ですが、個人タクシーの運転手は自賠責保険だけでなく、任意保険への加入も必要です。これは、許認可基準の一つとして任意保険の加入が求められているためです。

自動車の任意保険には、民間のタクシードライバー向けの自動車保険やタクシー協同組合の共済など様々な種類があります。加入する保険の種類は自由に選べますが、補償範囲の条件を満たす必要があるので、加入の際は補償範囲の金額に注意して保険を選択しましょう。

タクシーの点検をする

安全に個人タクシー事業をするために不可欠な、タクシーの点検をします。タクシーの点検は自動車の故障に関する点だけでなく、「乗客を乗せるのに清潔な状態か」「運転するための地図は万全か」といった点も含め、幅広く確認することが大切です。

【タクシーの点検項目】

項目 概要
点検整備
  • 日常的な点検
  • 必要に応じた修理
  • 法定3か月点検
  • 年1回の車検
清掃と消毒 <清掃>

  • 車内のゴミを捨てる
  • 小さな掃除機やカーペットクリーナーでホコリや髪の毛を取り除く
  • 窓を拭く
  • 洗車する

<消毒>

  • イス、ドアノブ、窓開けハンドルを定期的に消毒
地図等の備え付け
  • 地図
  • 運転日報(紙またはアプリ)
  • 応急処理のための器具、部品
  • 赤色旗、赤色合図灯などの非常信号用具

点検整備の場合、日常的な点検としてブレーキ液の量やランプ類の点灯など、15項目を点検します。国土交通省の公式サイトには、点検項目チェックシートが掲載されているので、ダウンロードして使うと日常的な点検をする際に抜け漏れを防げます。

また、地図の備え付けの場合、最近ではタクシー運転手向けのスマホアプリも充実しています。これまで使用していた地図があれば、使いなれた地図をそのまま使うことも可能ですが、効率的な運転をするために新たなカーナビやアプリを検討することもひとつの方法です。

個人タクシーに必要な許可や車庫の準備が終わったら、いつでも稼働できるようにタクシーの点検や必要な備品の用意をします。準備を怠ると、事故やクレームなどの原因につながる場合もあるので、タクシーの点検は開業したあとも定期的に行うよう心がけてください。

運輸局に運輸開始届を提出する

個人タクシーの開業に必要な手続きや準備をすべて終えたら、管轄の運輸局へ運輸開始届を提出します。運輸開始届の提出は、許認可を受けてから4か月以内に行わなければならないので、なるべく早めに対応しましょう。

【個人タクシーで開業する際の運輸開始届の提出方法】

方法 備考
①様式をダウンロードする
  1. 希望地域の運輸局の公式サイトへアクセスする
  2. 「自動車」や「手続き」をクリックし、タクシー事業の許可申請書を探す
  3. 許可申請書をダウンロードする

(参考)一般社団法人東京都個人タクシー協会の書式

②運輸開始届を正副2通作成する
(控えが必要な場合は3通)
関東運輸局の場合:
<新規許可の場合>
一般貨物自動車運送事業の経営許可申請書
<譲渡譲受の場合>
一般貸切旅客自動車運送事業譲渡譲受認可申請書
<死亡後譲渡>
死亡後譲渡譲受認可申請書
<相続>
相続認可申請書
③運輸局へ提出する

あわせて「運賃料金設定届」も提出する

個人タクシーとして許認可を取得したとしても、開業したことにはなりません。運輸局へ開業することを伝えるためには運輸局への開始届の提出が不可欠なので、必ず提出するようにしましょう。

なお、個人タクシーとして開業する際は、運輸開始届の他に別で税務署に「開業届」を提出します。開業届の提出は個人タクシーの開業後1か月以内が目安と言われています。開業届について詳細を知りたい人は「個人タクシーの開業届の提出方法を解説]を参考にしてください。

タクシー等に関する届出書を提出する

指定地域内で個人タクシーの営業をする場合は、「タクシー等に関する届出書」を管轄の運輸局に提出します。運輸開始届の提出は道路運送法で定められていますが、タクシー等に関する届出書に関してはタクシー業務適正化特別措置法第44条により定められているためです。

【タクシー等に関する届出書を提出する関東の準特定地域の例】

都県名 営業区域 区域
東京都 特別区・武三交通圏 東京都特別区、武蔵野市および三鷹市
北多摩交通圏 立川市、府中市、国立市、調布市、狛江市、 小金井市、国分寺市、小平市、西東京市、昭島市、 武蔵村山市、東大和市、東村山市、清瀬市 及び東久留米市
南多摩交通圏 八王子市、日野市、多摩市、稲城市及び町田市
西多摩交通圏 青梅市、福生市、あきる野市、羽村市及び西多摩郡 瑞穂町、日の出町、奥多摩町、檜原村

準特定地域とは、特定地域についで供給過剰とされる地域のことで、タクシー事業の適正化と活性化が必要な地域です。たとえば、東京都の場合、立川市や府中市で流しの個人タクシーを行うとすると、タクシー等に関する届出書を提出する「準特定地域」に該当します。

個人タクシーを開業する際、自分が許認可を取得した営業区域が特定地域や準特定地域なら、タクシー等に関する届出書を提出します。全国にある特定地域と準特定地域の一覧は、自交総連の公式サイトにあるので、届出書の提出が必要か判断する際は参考にしましょう。

タクシーの集客方法を考えておく

法人タクシーのネームバリューがなくなり、開業後すぐに集客できない可能性もあるので、タクシーの集客方法を考えておきましょう。タクシーの集客方法を開業前から考えておくと、乗客が少ない時期に対策を打てるようになるためです。

個人タクシーの集客方法は、流しの他に「タクシーアプリへの登録」「お店への営業」「通行量やイベント情報を調べる」等があります。これらの集客方法を押さえると、タクシーアプリの利用者や近隣のお店から駅に行きたい人等の予約もとれるようになります。

個人タクシーは法人タクシーに比べ、自由度の高い働き方ができる半面、配車を自分で管理しなくてはなりません。開業前に自分が個人タクシーを始めることを多方面に周知することで、切れ目のない予約につながるので、出来るだけ多くの集客方法を調べてみましょう。

なお、タクシーアプリへの登録をする際は、個人タクシー協同組合のような協会や組合に加入し、登録することになります。

まとめ

個人タクシーとして開業するには、「一般乗用旅客自動車運送事業」の許認可を取得する必要があります。許認可には条件があるため、まずは10種の条件を全て満たせるのか確認し、問題なければ希望する営業区域の運輸局へ申請書を提出します。

許認可が取得できたら、運賃や運送約款の設定を行います。その後、営業用に使用する自動車と車庫の確保をし、車庫に関する書類「道路幅員証明書」を自治体から取り寄せ、運輸局に提出します。これらの手続きが全て終わったら、開業届を提出して個人タクシーの開業ができます。

この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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