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個人タクシーの開業届の提出方法を解説
個人タクシーの開業する場合、個人事業主として開業することになるので、開業届を提出します。開業届を提出せずに個人タクシーを開始すると、節税対策や開業届の控えが必要な手続きができない可能性があるため、忘れずに開業届を提出することが大切です。
当記事では、個人タクシーの開業届の提出方法を解説します。開業届の提出先や書き方も紹介するので、個人タクシーを開業する人は当記事を参考にしてみてください。
開業届は納税地の税務署へ提出する
個人タクシーの開業届は、申請者の住所や営業所などがある納税地の税務署へ提出します。個人タクシーの運転手は個人事業主となるため、納税地の税務署に個人事業税の課税対象であることを伝える必要があるからです。
【税務署に提出する開業届の概要】
項目 | 概要 |
目的 | 税務署に個人事業主として開業したことを伝える。 |
書式 | 国税庁の公式サイトからダウンロードする。 |
提出先 | 納税地(例、自宅)を管轄する税務署へ提出する。 |
提出方法 | ①書式をダウンロードして記載する。 ②以下の方法を選び、提出する。
|
注意点 | 経費を差し引いた所得が年間48万円以上の場合に提出する。 |
たとえば、東京都三鷹市に住む人が個人タクシーを開業する場合、開業届の提出先は武蔵野税務署になります。納税地は三鷹市の住所にあるため、三鷹市を管轄する税務署が武蔵野税務署となるからです。
開業届を提出すると、税務署は提出者を個人事業税の対象者として認識するので、提出者の元へ毎年確定申告の書式を送付します。開業届の提出は原則、開業後30日以内とされているため、個人タクシーを開業したら忘れずに開業届を税務署へ提出しましょう。
なお、副業として年間所得が48万円以下の個人タクシーは、所得が基礎控除額内に収まるため、開業届の対象外です。副業でタクシーを運転する予定の人は、開業届の提出は必要ないので覚えておきましょう。
開業届の書き方を確認する
開業届を提出するために、あらかじめ開業届の書き方を確認しておきましょう。開業届の書き方を確認しておかないと、記入の際に「これはどうやって書けばいいのか」と迷う可能性があるためです。
【開業届の書き方】
記載項目 | 記入例 | ||
税務署の名称 | 〇〇(税務署) | ||
提出日 | 2024年8月15日 | ||
納税地の情報 | 〒〇〇〇-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇1丁目〇〇−〇〇 〇〇ビル10階 TEL:〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇 |
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氏名(フリガナ) | 田中 太郎(タナカ タロウ) | ||
生年月日 | 昭和39年12月11日 | ||
個人番号(マイナンバー) | 1234 5678 9012 | ||
職業 | タクシー乗務員 | ||
屋号 | 田中タクシー | ||
届出の区分 | 開業 | ||
所得の種類 | 事業所得 | ||
開業や廃業、移転のあった日 | 2024年8月1日 | ||
開業・廃業に伴う届出の有無 | 青色申告承認申請書 | 有 ■ | 無 □ |
課税事業者選択届出書 | 有 ■ | 無 □ | |
事業の概要 | 千代田区周辺におけるタクシー運転手 | ||
給与等の支払い状況 | 専従者:0人、給与の定め方:(空欄) 使用人:0人、給与の定め方:(空欄) |
たとえば、開業届に記載する日付の場合、提出日は開業日から30日以内にしなければなりません。そのため、8月1日に個人タクシーを開業する人は、9月1日までの任意の日付を開業届の提出日にします。
また、個人タクシーで節税対策をしたい場合は、青色申告承認申請書の欄の「有」にチェックを入れます。開業届の提出時に合わせて青色申告承認申請書を提出すると、確定申告で複式簿記をする必要がありますが、その代わり、65万円の青色申告特別控除が適用されるからです。
個人タクシーを開業する際は、開業届に納税地の住所や開業日など複数の項目に記入します。記入する際は、提出日と開業日の日付が30日以上空いていないこと、個人番号(マイナンバー)を記入すること、などに注意しましょう。
控えが必要な場合はもらい忘れないようにする
開業届の控えが必要な場合は、開業届を提出する際に控えをもらい忘れないようにしましょう。開業届の提出時に控えをもらわないと、後から開業届の控えを受け取る場合は時間がかかるためです。
【開業届の控えが必要な状況】
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たとえば、小規模企業共済に加入したい場合は、開業届の控えを提出する必要があります。小規模企業共済に加入すると、毎月掛け金を支払うことで個人事業主が得られない退職金に備えられますが、加入の際は開業届の控えが必要となるためです。
また、退職後にハローワークで失業給付を受けていて、個人タクシーの開業で再就職手当をもらう場合も、開業届の控えが必要になります。再就職手当は就職や開業が決まった人に支給される給付金で、再就職手当をもらう際は開業届の控えが必要となるためです。
税務署に開業届を提出する際、控えが欲しい人は忘れずに控えを受け取りましょう。控えを希望する場合は、窓口で開業届の控えの用紙を渡す、郵送で「控えを希望します」というメモと返信用封筒を同封する、などの方法で控えをもらうようにしましょう。
個人タクシーの開業には他にも手続きがある
個人タクシーで開業する手続きには、開業届以外にも試験の申請や許可の取得などの手続きがあります。開業届を出すタイミングは開業に必要な手続きの最後なので、開業届を提出する際は他にやり残した手続きがないかを確認してみましょう。
【個人タクシーの開業に必要な手続き】
カテゴリ | 手続き | 管轄 |
試験 |
※先に許可を申請する場合もある ※令和6年5月13日に改正された法令により、地理試験は廃止され、法令試験のみとなった |
地方運輸局 |
許可 |
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地方運輸局 |
タクシー登録 |
|
運輸支局 |
保険の加入 |
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<自動車損害賠償責任保険の場合>
民間保険会社 <交通共済の場合> 共済組合 |
車体の準備 |
-点検整備する
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<タクシーとの表示> 国土交通省 <運転日報の備え付け> 厚生労働省 <最高乗務距離の確認> 地方運輸局 |
営業所・車庫の準備 |
|
ー(管轄はない) |
届出 |
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地方運輸局 |
交付 |
|
地方運輸局 |
まず、個人タクシーの試験や許可の手続きは、地方運輸局で行います。たとえば、東京で個人タクシーを開業する場合は関東運輸局が管轄なので、関東運輸局へ個人タクシーの試験や許可を申請します。
また、タクシー登録の手続きは地方運輸局の支部に対して行います。たとえば、東京で個人タクシーを開業する場合は東京運輸支局が支部なので、東京運輸支局で講習を受け、登録手数料を支払い、運転者証の交付を受けることになります。
個人タクシーとして開業するには、さまざまな手続きが必要です。開業届を提出すると全ての手続きが済んでいるとみなされるので、タクシーの登録や準備などでまだ済んでいない手続きがないか、念のため確認してみましょう。
まとめ
個人タクシーとして開業する際は、納税地を管轄する税務署に対して「開業届」を提出します。開業してから30日以内に提出するのが目安となるので、個人タクシーを開業したら早めに提出するようにしましょう。
開業届に記入する項目は、タクシー運転手の氏名や屋号など、複数の項目を記入します。同時に青色申告承認申請書と課税事業者選択届出書も提出できるので、青色申告特別控除の適用を受けたい場合や、インボイス対応のために適格請求書を発行したい場合は添付してください。
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この記事の監修者
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
田原 広一(たはら こういち)
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
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