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不動産業を開業するときの個人事業主と法人の違いを解説

不動産業の開業を検討している人の中には、個人事業主と法人のどちらにするかを考えている人もいますよね。また、個人事業主と法人の異なる点が知りたい人もいるでしょう。 当記事では、不動産業を開業するときの個人事業主と法人の違いを解説します。個人事業主と法人のどちらにするかを考えている人は参考にしてみてください。

まずはそれぞれの異なる点を把握する

個人事業主と法人の異なる点を把握しておかなければ、個人事業主と法人のどちらにするかを決められません。個人事業主と法人のどちらにするかを考えている人は、想定している不動産業を念頭に置きつつ、それぞれの異なる点を把握するところから始めてみましょう。

【個人事業主と法人の異なる点】

  • 費用
  • 税金
  • 届出
  • 保険

個人事業主と法人の異なる点として挙げられるのは「費用」「保険」「税金」「届出」です。これらの違いは個人事業主と法人のどちらにするかを決める判断材料になるため、不動産業を始めたい人はそれぞれの項目を確認してみましょう。

費用

個人事業主と法人の異なる点として挙げられるのは「費用」です。個人事業主と法人を比較した場合、設立の観点から発生する費用に違いがあるため、個人事業主と法人のどちらにするかを考えている人は費用の違いを確認してみましょう。

【設立の観点から発生する費用の例】

項目 費用の例
個人事業主 なし
法人 ・定款に添付する印紙代
・定款認証の手数料
・定款謄本証明書
・登録免許税
・株式払込事務手数料
・司法書士等の委託料

個人事業主は登記が不要となる関係上、設立の観点から発生する費用はありません。「開業届」と「事業開始等申告書」を提出すれば、個人事業主として事業を開始することができるため、個人事業主の場合は設立にかかる費用を考慮する必要はありません。

法人は登記が必要となる関係上、「定款に添付する印紙代」や「定款認証の手数料」などの費用が発生します。「登録免許税」や「株式払込事務手数料」などの費用もかかることになるため、法人の場合は設立にかかる費用を考慮することになります。

なお、不動産業を開業する場合、あとから法人化する考え方もあります。個人事業主に課される所得税は所得金額に応じた累進税率となるため、不動産業の開業を検討している人はあとから法人化することも選択肢のひとつとして考えてみましょう。

税金

個人事業主と法人の異なる点として挙げられるのは「税金」です。個人事業主と法人を比較した場合、税金の種類に違いがあるため、個人事業主と法人のどちらにするかを考えている人は税金の違いを確認してみましょう。

【事業形態ごとの税金】

項目 税金の種類
個人事業主 ・所得税
・個人住民税
・個人事業税
法人 ・法人税
・法人住民税
・法人事業税

個人事業主の場合は「所得税」「個人住民税」「個人事業税」を納税することになります。とくに、所得税は個人の所得に対してかかる税金となる関係上、法人税とは異なる仕組みが採用され、所得税の税率は最大45%となります。

法人の場合は「法人税」「法人住民税」「法人事業税」を納税することになります。とくに、法人税は法人(会社)の所得に対してかかる税金となる関係上、所得税とは異なる仕組みが採用され、法人税の税率は最大23.2%となります。

なお、赤字だった場合、個人事業主は所得税が課されないのに対し、法人は法人住民税を課されることになります。個人事業主と法人における税金面の違いのひとつになるため、不動産業の開業を検討している人はその点を留意しておきましょう。

届出

個人事業主と法人の異なる点として挙げられるのは「届出」です。個人事業主と法人を比較した場合、必要となる届出に違いがあるため、個人事業主と法人のどちらにするかを考えている人は届出の違いを確認してみましょう。

【税務署に提出する届出の例】

項目 届出の例
個人事業主 ・個人事業の開業・廃業等届出書
・所得税の棚卸資産の評価方法の届出書
・所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
・所得税の青色申告承認申請書
・青色事業専従者給与に関する届出書
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
・適格請求書発行事業者の登録申請書……など
法人 ・法人設立届出書
・棚卸資産の評価方法の届出書
・減価償却資産の償却方法の届出書
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
・青色申告の承認申請書
・消費税の新設法人に該当する旨の届出書
・適格請求書発行事業者の登録申請書……など

たとえば、税務署に提出する届出の場合、個人事業主においては「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出が必要です。税法上の諸制度を利用する場合は「所得税の青色申告承認申請書」や「青色事業専従者給与に関する届出書」などの届出が必要となる可能性もあります。

また、税務署に提出する届出の場合、法人においては「法人設立届出書」の提出が必要です。税法上の諸制度を利用する場合は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」や「青色申告の承認申請書」などの届出が必要となる可能性もあります。

なお、必要となる届出は条件次第です。今回紹介したのは税務署に提出する届出ですが、労働基準監督署や年金事務所に提出する届出も考えられるため、個人事業主と法人のどちらにするかを決めた人は税理士などの専門家に相談することも検討してみましょう。

保険

個人事業主と法人の異なる点として挙げられるのは「保険」です。個人事業主と法人を比較した場合、加入できる保険に違いがあるため、個人事業主と法人のどちらにするかを考えている人は保険の違いを確認してみましょう。

【事業形態ごとの社会保険】

項目 保険の種類
個人事業主 国民保険(国民年金保険 / 国民健康保険)
法人 社会保険(厚生年金保険 / 健康保険)

個人事業主の場合は国民年金保険と国民健康保険に加入することになります。個人事業主として不動産業を営む場合は加入が義務付けられている強制適用事業所に該当せず、常時5人以上の従業員がいたとしても厚生年金保険と健康保険の強制加入の対象外となります。

法人の場合は厚生年金保険と健康保険に加入することになります。法人として不動産業を営む場合は加入が義務付けられている強制適用事業所に該当し、被保険者が1人以上いるときは厚生年金保険と健康保険の強制加入の対象となります。

なお、不動産業を個人事業主として営む場合は一定の条件を満たすことにより、任意適用事業所として厚生年金保険と健康保険に加入できます。社会保険は事業主からの届出が必要となるため、気になる人は「日本年金機構の公式サイト 」を確認してみましょう。

選択に迷っている人は専門家に相談することも検討する

選択に迷っている人は専門家に相談することも検討してみてください。専門家に相談することにより、個人事業主と法人のどちらにするかを決めるアドバイスをもらえる可能性もあるため、選択に迷っている人は専門家に相談することも検討してみましょう。

【相談先の具体例】

項目 概要
商工会議所 商工会議所は、商工会議所法に基づき設立された特別認可法人。法律、税務、金融、登記など、幅広い支援サービスを提供し、各分野の専門家に無料相談できる点が特徴のひとつ。
よろず支援拠点 国が全国に設置した無料の経営相談所。豊富な活動実績から経営者の課題に応じたワンストップサービスを提供し、各分野の専門家に無料相談できる点が特徴のひとつ。
中小企業基盤整備機構 3つの特殊法人を統合し設立された独立行政法人。企業の成長ステージに合わせた幅広い支援メニューを提供し、各分野の専門家に無料相談できる点が特徴のひとつ。

相談先として挙げられるのは「商工会議所」「商工会」「中小企業基盤整備機構」です。これらの相談先は開業支援を実施しているため、個人事業主と法人のどちらにするかを決めるアドバイスに加え、不動産業の成功事例や失敗事例を教えてもらえる可能性もあります。

また、これらの相談先は個別の無料相談に加え、「創業セミナー」や「創業塾」などの講習会を開催している地域もあります。創業者向けの講習会となるため、不動産業を開業するための知識を習得したい人は講習会に参加することも方法のひとつです。

ただし、今回紹介した相談先は無料相談窓口を設けていますが、専門家に相談する場合は依頼料として所定の費用がかかるところもあります。説明会やセミナーに参加するときは事前予約が必要になることもあるため、専門家に相談したい人は留意しておきましょう。

まとめ

個人事業主と法人の異なる点を把握しておかなければ、個人事業主と法人のどちらにするかを決められません。個人事業主と法人のどちらにするかを考えている人は、想定している不動産業を念頭に置きつつ、それぞれの異なる点を把握するところから始めてみましょう。

また、個人事業主と法人の異なる点として挙げられるのは「費用」「保険」「税金」「届出」です。これらの違いは個人事業主と法人のどちらにするかを決める判断材料になるため、不動産業を始めたい人はこれらの項目を判断材料のひとつにしてみてください。

なお、選択に迷っている人は専門家に相談することも方法のひとつです。専門家に相談することにより、個人事業主と法人のどちらにするかを決めるアドバイスをもらえる可能性もあるため、選択に迷っている人は専門家に相談することも検討してみましょう。

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この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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