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不動産業を開業するときの手続きの流れを解説

不動産業を開業したい人の中には、手続きに関する情報が知りたい人もいますよね。また、事業内容ごとの手続きの流れが知りたい人もいるでしょう。

当記事では、不動産業を開業するときの手続きの流れを解説します。手続きに入る前の下準備から解説しているため、不動産業を開業したい人は参考にしてみてください。

まずは手続きに入る前の下準備をする

不動産業を開業する場合、まずは手続きに入る前の下準備が必要です。不動産業を開業したい人は、まずは不動産業を開業するための下準備に着手しましょう。

【手続きに入る前の準備】

  1. 開業する事業内容を決定する
  2. 必要な資格を取得する
  3. 事務所を設置する

不動産業を開業するときの手続きの流れは各工程が前後することや並行することもあります。あくまでも参考としてそれぞれの工程を確認してみましょう。

①開業する事業内容を決定する

不動産業は「宅地建物取引業」「不動産管理業」「不動産賃貸業」に大別され、必要な手続きは事業内容ごとに異なります。まずは事業内容を決める必要があるため、開業する事業内容が決まっていない人は不動産業のどの事業内容を開業するかを決定しましょう。

【不動産業における事業内容の概要】

項目 概要
宅地建物取引業 「宅地や建物の売買」「宅地や建物の売買または賃借の代理」「宅地や建物の売買または賃借の媒介」を行う事業のこと。売買や代理などの事業を営利目的として不特定多数の人に継続的に行う場合が該当。
不動産管理業 「不動産を所有するオーナーから管理業務の委託を受ける事業」のこと。オーナー対応や入居者対応などの業務も含まれ、賃貸住宅や分譲マンションの管理業務を行う場合が該当。
不動産賃貸業 「土地や建物などの不動産を賃貸し賃料を得る事業」のこと。地主や大家と呼ばれ、自らが保有する土地や建物などの不動産を第三者に貸し出し、営利目的として不特定多数の人に継続的に行う場合が該当。

宅地建物取引業とは、「宅地や建物の売買」「宅地や建物の売買または賃借の代理」「宅地や建物の売買または賃借の媒介」を行う事業のことです。売買や代理などの事業を営利目的として不特定多数の人に継続的に行う場合が該当します。

不動産管理業とは、「不動産を所有するオーナーから管理業務の委託を受ける事業」のことです。オーナー対応や入居者対応などの業務も含まれ、業務内容は多岐にわたりますが、賃貸住宅や分譲マンションの管理業務を行う場合が該当します。

不動産賃貸業とは、「土地や建物などの不動産を賃貸し賃料を得る事業」のことです。多くは地主や大家と呼ばれ、自らが保有する土地や建物などの不動産を第三者に貸し出し、営利目的として不特定多数の人に継続的に行う場合が該当します。

不動産業は「宅地建物取引業」「不動産管理業」「不動産賃貸業」に大別されます。必要な手続きは事業内容ごとに異なるため、開業する事業内容が決まっていない人は不動産業のどの事業内容を開業するかを決定しましょう。

②必要な資格を取得する

不動産業は「宅地建物取引業」「不動産管理業」「不動産賃貸業」に大別され、開業するときに必要な資格は事業内容ごとに異なります。未取得の場合は開業できないおそれもあるため、資格を保有していない人は必要な資格を取得しましょう。

【不動産業における資格の要否】

項目 必要な資格
宅地建物取引業 宅地建物取引士
不動産管理業 <賃貸住宅管理業の場合>
賃貸不動産経営管理士(管理戸数が200所未満の場合は原則不要)
<マンション管理業の場合>
管理業務主任者
不動産賃貸業 不要

宅地建物取引業として開業する場合は原則として「宅地建物取引士」の資格が必要です。宅地建物取引士の資格を取得するには、不動産適正取引推進機構が年1回実施する宅地建物取引士資格試験に合格する必要があります。

賃貸住宅管理業として開業する場合は「賃貸不動産経営管理士」の資格が必要になる可能性があります。賃貸不動産経営管理士の資格を取得するには、賃貸不動産経営管理士協議会が年1回実施する「賃貸不動産経営管理士試験」に合格する必要があります。

マンション管理業として開業する場合は原則として「管理業務主任者」の資格が必要です。管理業務主任者の資格を取得するには、マンション管理業協会が年1回実施する「管理業務主任者試験」に合格する必要があります。

不動産賃貸業として開業する場合は原則として資格が不要です。不動産賃貸業の場合も管理業務は発生しますが、「賃貸不動産経営管理士」や「管理業務主任者」などの資格を取得せずとも不動産賃貸業として開業することは可能です。

不動産業は「宅地建物取引業」「不動産管理業」「不動産賃貸業」に大別され、開業するときに必要な資格は事業内容ごとに異なります。未取得の場合は開業できないおそれもあるため、資格を保有していない人は必要な資格を取得しましょう。

なお、不動産業の資格に関する情報が知りたい人は「不動産業の開業における資格を解説」も参考にしてみてください。

③事務所を設置する

不動産業は「宅地建物取引業」「不動産管理業」「不動産賃貸業」に大別され、宅地建物取引業の場合は事務所の設置が必要です。宅地建物取引法により定められているため、宅地建物取引業として開業予定の人は事務所を設置しましょう。

【不動産業における事務所の設置義務】

項目 事務所の設置義務
宅地建物取引業 あり
不動産管理業 なし
不動産賃貸業 なし

宅地建物取引業における事務所の定義は「継続的に業務を行うことができる施設」です。その前提を踏まえ、「専用の出入り口がある」「居住スペースと分けられている」「事務所としての形態が整えられている」といった条件を満たしている必要があります。

また、宅地建物取引業の場合は取引額が大きく、顧客の個人情報を取り扱うことになるため、事務所を設置するときはセキュリティ面に加え、企業財産保険や個人情報漏洩保険などの各種損害保険に加入することを検討する余地があります。

不動産管理業と不動産賃貸業の場合は事務所の設置義務はありませんが、顧客との対面による商談が考えられる場合は事務所を設置することも方法のひとつです。不動産管理業や不動産賃貸業として開業予定の人も事務所を設置することを検討してみましょう。

なお、不動産業の事務所に関する情報が知りたい人は「不動産業の開業における事務所の設置要件を解説」も参考にしてみてください。

次は事業内容ごとの手続きの流れを把握する

不動産業を開業するための下準備が完了した人は次の工程として事業内容ごとの手続きに入ることになります。下準備が完了した後の手続きは事業内容ごとに異なるため、不動産業を開業予定の人は該当する事業内容の手続きの流れを把握しておきましょう。

【事業内容ごとの手続きの流れ】

項目 手続きの概要
宅地建物取引業 ・宅地建物取引士の登録申請
・宅地建物取引業の免許申請
・営業保証金の供託
不動産管理業 <賃貸住宅管理業>
・賃貸不動産管理経営士の登録申請
・賃貸住宅管理業の登録申請
※管理戸数が200所未満の場合は原則不要
<マンション管理業>
・管理業務主任者の登録申請
・マンション管理業の免許申請
不動産賃貸業 なし

「宅地建物取引業」「賃貸住宅管理業」「マンション管理業」として開業する場合は登録申請や免許申請が必要ですが、「不動産賃貸業」として開業する場合は登録申請や免許申請が不要となるため、その前提を踏まえながら手続きの流れを確認してみましょう。

宅地建物取引業の場合

宅地建物取引業の場合、「宅地建物取引士の登録」と「宅地建物取引業の免許」に関する手続きが必要です。宅地建物取引士試験の合格後に宅地建物取引士として登録申請し、登録完了後は宅地建物取引業を免許申請する流れになります。

【宅地建物取引業の手続きの流れ】

  1. 宅地建物取引士の登録申請
  2. 各都道府県知事または国土交通大臣に免許申請
  3. 営業保証金の供託または保証協会加入による弁済業務保証金の供託

まずは「宅地建物取引士の登録申請」を行います。登録完了後は宅地建物取引士証が交付され、宅地建物取引士としての活動が認められれば、宅地建物取引業の免許取得の要件となる「宅地建物取引士の設置」を満たすことができます。

その次は「宅地建物取引業の免許申請」を行います。免許申請は原則として所在地の道府県知事に行いますが、設置する事務所が2つ以上の都道府県にまたがる場合は主となる所在地の都道府県知事を経由し国土交通大臣に免許申請することになります。

宅地建物取引業の免許は「宅地建物取引士に関する要件」に加え、「営業保証金に関する要件」もあるため、宅地建物取引業の免許を取得する場合は営業保証金として「主となる事務所が1,000万円」「従となる事務所が500万円」の供託が求められます。

なお、営業保証金に関しては、宅地建物取引業保証協会に弁済業務保証金を納めることにより、営業保証金を免除してもらう方法もあります。気になる人は「全国宅地建物取引業保証協会の公式サイト」を確認してみましょう。

賃貸住宅管理業の場合

賃貸住宅管理業の場合、管理戸数が200戸以上の事業者は「賃貸住宅管理業の登録」に関する手続きが必要です。該当する場合は賃貸不動産経営管理士試験の合格後に賃貸住宅管理業として登録申請し、登録完了後は賃貸住宅管理業を登録申請する流れになります。

【賃貸住宅管理業の手続きの流れ】

  1. 賃貸不動産経営管理士の登録申請
  2. 賃貸不動産管理業の登録申請

まずは「賃貸不動産経営管理士の登録申請」を行います。登録完了後は賃貸不動産経営管理士証が交付され、賃貸不動産経営管理士としての活動が認められれば、賃貸住宅管理業の登録申請の要件となる「賃貸不動産経営管理士の設置」を満たすことができます。

その次は「賃貸住宅管理業の登録申請」を行います。賃貸住宅管理業の登録申請を行う場合は共通認証システムの「GビズID(gBizID)」に登録し、国土交通省の公式サイトにある「賃貸住宅管理業登録等電子申請システム」から登録申請することになります。

GビズIDを登録せずとも賃貸住宅管理業の登録申請は可能ですが、GビズIDを登録した場合は「情報入力の手間を削減できる」「書類の押印が不要になる」といった点があるため、未登録の人はGビズIDの登録を検討してみてください。

なお、賃貸住宅管理業の登録申請を行う場合は「登録免許税の納付」が必要です。申請完了後は「登録免許税納付証明書」の送付も必要になるため、気になる人は国土交通省の公式サイトにある資料「賃貸住宅管理業登録申請の流れ」を確認してみましょう。

マンション管理業

マンション管理業の場合、「管理業務主任者の登録」と「マンション管理業の登録」に関する手続きが必要です。管理業務主任者試験の合格後に管理業務主任者として登録申請し、登録完了後はマンション管理業を登録申請する流れになります。

【マンション管理業の手続きの流れ】

  1. 管理業務主任者の登録申請
  2. マンション管理業の登録申請

まずは「管理業務主任者の登録申請」を行います。登録完了後は管理業務主任者証が交付され、管理業務主任者としての活動が認められれば、マンション管理業の登録申請の要件となる「管理業務主任者の設置」を満たすことができます。

その次は「マンション管理業の登録申請」を行います。登録申請は原則として事務所の所在地を管轄する国土交通省の地方整備局に行いますが、必要書類を提出するときはインターネットによる提出ではなく、郵送による提出となります。

マンション管理業の登録は「管理業務主任者に関する要件」に加え、「資産額に関する要件」もあるため、マンション管理業の登録を申請する場合はその証明として「300万円以上の基準資産額を有していることがわかる書類」の提出が求められます。

なお、マンション管理業の登録申請を行う場合は「登録免許税の納付」が必要です。申請完了後は「登録免許税納付証明書」の送付も必要になるため、気になる人は国土交通省の公式サイトにある「マンション管理業者の登録及び登録の更新申請について」を確認してみましょう。

不動産賃貸業の場合

不動産賃貸業の場合、原則として必要な手続きはありません。資格や免許が不要となる関係上、登録申請や免許申請などの手続きをせずとも開業できるため、不動産賃貸業として開業予定の人はその前提を踏まえておきましょう。

たとえば、不動産賃貸業の場合は「宅地建物取引士」「賃貸不動産経営管理士」「管理業務主任者」などの資格は不要です。不動産管理業を行う場合は資格が必要ですが、不動産賃貸業のみを行う場合は資格が不要となるため、資格に関する手続きも不要です。

また、不動産賃貸業の場合は「宅地建物取引業」「賃貸住宅管理業」「マンション管理業」などの免許は不要です。不動産管理業を行う場合は免許が必要ですが、不動産賃貸業のみを行う場合は免許が不要となるため、免許に関する手続きも不要です。

業務の幅を広げたい人は資格や免許の取得を検討する余地がありますが、不動産賃貸業のみを行う場合は資格や免許がいらず、登録申請や免許申請などの手続きをせずとも開業できるため、不動産賃貸業として開業予定の人はその前提を踏まえておきましょう。

最後は開業後に必要な届出を提出する

事業内容ごとの手続きが完了した人は最後の工程としていくつかの届出を提出することになります。提出が義務付けられている届出もあるため、不動産業を開業した人は各届出の概要を把握しておきましょう。

【開業後に提出が必要な届出】

  • 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
  • 事業開始当申告書

所得税法第229条では、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」などを生じる事業を開始した場合は「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」の提出が義務付けられています。それにより、不動産業を開業した人は開業日から1か月以内に開業予定地を管轄する税務署に開業届を提出する必要があります。

また、不動産業を開業した場合は原則として「事業開始等申告書」の提出が必要です。自治体ごとに名称が異なる点に加え、提出期限も都道府県によりますが、不動産業を開業した人は原則として各都道府県税事務所に事業開始等申告書を提出する必要があります。

なお、条件次第では、「給与支払事務所等の開設届」や「所得税の青色申告承認申請書」などの届出も必要になります。従業員の雇用や青色申告を検討している人は開業予定地を管轄する税務署の公式サイトから各届出の概要を確認してみましょう。

まとめ

不動産業を開業する場合、まずは手続きに入る前の下準備が必要です。「事業内容の決定」「資格の取得」「事務所の設置」など、手続きに入る前の下準備が必要になるため、不動産業を開業したい人は、まずは不動産業を開業するための下準備に着手しましょう。

手続きに入る前の下準備が完了した人は次の工程として事業内業ごとの手続きに入ることになります。下準備が完了した後の手続きは事業内容ごとに異なるため、不動産業を開業予定の人は該当する事業内容の手続きの流れを把握しておきましょう。

そして、事業内容ごとの手続きが完了した人は最後の工程としていくつかの届出を提出することになります。開業届などの提出が義務付けられている届出もあるため、不動産業を開業した人は各届出の概要を把握しておきましょう。

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この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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