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ケーキ屋を開業する際の年収の考え方を解説
独立してケーキ屋を開業したい人の中には、開業するかどうかを検討する際に平均年収を見て参考にしたい人もいますよね。ケーキ屋の場合、「地域ごとにケーキの値段の相場が異なる」「ケーキの種類や店のコンセプトで経費が変わる」などの理由から、平均年収と開業後の状況が異なり想定が崩れる可能性もあります。
そのため、開業前に年収がどれくらいになるかを確認したい人は、開業予定地の物価に合わせて「どれくらいケーキを売れば目標の年収に届くのか」「ケーキを販売するためにいくらお金がかかるのか」を、想定しておくことが大切です。
当記事では、ケーキ屋を開業する際の年収の考え方を解説します。飲食店の平均年収や年収を上げるための方法も紹介するので、ケーキ屋を開業したい人は参考にしてみてください。
年収は売上から原価を含む経費を差し引いた金額
個人事業主の場合、「1年間の売上」から「1年間の原価を含む経費」を差し引いた金額が年収にあたります。そのため、開業後の年収を知るには、まず「売上がいくらになるか」「原価を含む経費がいくらになるか」を確認することになります。
たとえば、売上が1,000万円で、原価を含む経費が750万円の場合、「売上1,000万円ー原価を含む経費750万円=年収250万円」の計算により、年収は250万円ほどになります。一方で、売上が同じ1,000万円でも、原価を含む経費が900万円の場合の年収は100万円になり、売上が同額でも原価を含む経費によって年収が変わることが分かります。
地域によってケーキの販売価格や家賃などの相場が異なるため、同じ年収でもケーキの販売数や売上、経費は異なります。そのため、ケーキ屋の開業後の年収を考える際は、まず「目標の年収にするには売上がどれだけ必要になるのか、ケーキをどれだけ売ればいいのか」を開業予定地を想起しながら確認してみましょう。
なお、個人事業主の場合、年収に加算される控除や、年収から差し引かれる税金を年収に加味して、手取りの金額が決まります。個人事業主として開業する人は、年収と手取りの金額は異なると留意しておいてください。
目標の年収に必要な売上は年収の約4倍
目標の年収を得るために必要な売上は、年収の約4倍です。ケーキ屋の場合、ケーキの材料を仕入れる費用である原価は、売上の約3割、その他のケーキを販売するための費用である経費は、約4.5割を占めるため、年収は売上の約2.5割になるからです。
「中小企業実態基本調査 令和4年確報(令和3年度決算実績)」を参考に計算すると、飲食店を営む個人事業主の平均年収は約317万円です。ここでは、飲食店の平均年収317万円を得るための売上目標と、ケーキの販売数を考えてみます。
317万円の年収を得るために必要な売上は、年収の4倍にあたる1,268万円程度になるため、1日に必要な売上は約4万8千円(※1)になります。約4万8千円の売上を上げるために、1個500円のケーキであれば96個(※2)、1個200円のケーキであれば240個(※3)売る必要があります。
※1 1,268万円÷12か月÷22営業日=約4万8千円
※2 4万8千円÷500円/個=96個
※3 4万8千円÷200円/個=240個
ケーキの販売価格の相場は地域によっても異なるため、売上を達成するために必要なケーキの販売数も地域によって変わります。そのため、目標の年収に必要な売上の目安を確認するだけでなく、ケーキの値段の相場に合わせてケーキの販売数まで考えてみましょう。
ケーキ屋の売上は季節によって異なることも考慮する
年収や月収を考える際、ケーキ屋の売上は季節によって異なることも考慮に入れる必要があります。12月のクリスマスや3月のホワイトデーなどの繁忙期や夏場の閑散期でケーキの販売量が変わるためです。
【二人以上の世帯のケーキの支出額の推移】
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
金額 | 596 | 559 | 681 | 503 | 595 | 490 | 474 | 523 | 519 | 576 | 686 | 1,431 |
参考:総務省統計局HP 家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯)
2023年の二人以上の世帯のケーキの支出額を見ると、12月や2月、3月のイベントがある時期の支出額は高く、6月や7月など、夏場の支出額は低いことが読み取れます。また、お客さんの支出額と連動して、ケーキ屋の売上や月収も増減すると予想できます。
ケーキの売れ行きには季節性があるため、平均的な売上で計算した年収や月収と、実際の月収では乖離が生まれると予想されます。月収の少なくなる時期があることを考慮し「運転資金を多めに用意しておく」「開業する時期を選ぶ」などの対策を練ってみましょう。
軌道にのるまでは売上が安定しないことも考慮する
年収や月収を考える際、軌道にのるまでは売上が安定しないことにも考慮する必要があります。開業してからすぐは、お客さんの入りが安定せず、想定通りの売上が得られない可能性があるためです。
【開業後の予想月商達成率】
参考:日本政策金融公庫の「2023年度新規開業実態調査」をもとに作成
日本政策金融公庫の「2023年度新規開業実態調査」によると、4割を超える企業が、想定していた売上を実際には下回ると答えていました。このデータから、開業者が100人いるとすると44人は、開業前の計画が想定通りにいかないことが読み取れます。
軌道にのるまで半年以上かかる傾向があり、軌道にのるまでの時期は、月収や年収も想定通りに得られない可能性があります。月収が安定しない時期があることを考慮し「運転資金を多めに用意しておく」「在庫管理を徹底する」などの対策を練ってみましょう。
原価を含む経費がいくらになるのかを把握する
売上が十分でも、経費が膨らみ過ぎると利益が減り年収が下がるため、目標の年収を得るには、原価を含む経費がいくらになるのかを把握しておくことも大切です。そのため、経費にどのような項目があり、どのような特徴があるのかを確認しておきましょう。
【主な経費の種類】
- 原価:売上の30%程度
- 家賃
- 人件費
- 水道光熱費:売上の5-8%程度
- 消耗品費(梱包資材):売上の10%程度
ケーキ屋の場合、家賃以外は売上の金額によって費用が変動します。たとえば、ケーキの販売量が多ければ多いほど、ケーキの材料にかかる費用も大きくなるため、売上が上がると原価も増えます。
一方で、家賃は売上の金額に関わらず一定の金額が毎月かかります。売上が上がっていなくても一定の金額を支払うことになるため、家賃が高すぎると資金繰りを圧迫する原因になる可能性があります。
ケーキ屋の場合、原価を含む経費は全体で7.5割程度かかります。家賃が高すぎたり、廃棄ロスや過剰人員などの無駄が多すぎたりすると、経費がかさみ年収が下がるためそれぞれの項目を確認して無駄を省けるところがないかを検討してみましょう。
年収を上げるためには売上を増やして経費を抑える
年収をあげるためには、売上を増やして、原価を含む経費を抑えることが必要です。売上を上げるための方法と、経費を抑えるための方法をそれぞれ確認してみましょう。
【年収をあげるための方法の例】
項目 | 概要 |
売上を増やす方法 |
|
経費を抑える方法 |
|
その他の方法 |
|
たとえば、売上を増やす方法の1つに営業日を増やす方法があります。一方で、営業日を増やすためには、新たに人を雇ったり、アルバイトのシフト時間を増やしたりする必要があり、新たな経費も発生します。
売上を増やす方法を実施すると、新たな経費がかかる場合もあります。そのため、売上と経費のバランスを見ながら年収をあげる方法を模索してみましょう。
まとめ
飲食店の平均年収は317万円です。ケーキ屋の場合、平均年収を得るために必要な売上は年収の約4倍にあたるため、平均年収を得るためには1,268万円が必要になります。
一方で、ケーキ屋の場合、ケーキの値段が200円~300円が相場の地域や、500円~600円が相場の地域があるため、目標とする年収や売上が同じでも、販売しなければならないケーキの数は異なります。そのため、目標の年収や売上に応じてケーキの販売数まで計算し、現実的に販売ができるかどうかまで確認してみましょう。
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この記事の監修者
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
田原 広一(たはら こういち)
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
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