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バーの開業における失敗例と解決策を解説
2023年に倒産した飲食店802件のうち、バーを含む「お酒をメインで提供する業態」の割合は279件となり、全体の34.8%を占める結果でした※1。飲食店の倒産件数が過去最多となった中、バーもやはり、開業後にお店を持続させていくことは簡単なことではありません。
開業準備の時点で計画や資金が不十分だと、開業後の営業が難しくなり、失敗する可能性が高まります。そのため、バーを開業してきた人のさまざまな失敗例を確認し、あらかじめ陥りやすい失敗の対策をしておきましょう。
当記事では、バーの開業における失敗例と解決策を解説します。バーの開業を目指す人は、いくつかの失敗例や対策を確認してみてください。
※1 出典:帝国データバンク倒産・動向速報
バー開業後の失敗は準備不足が原因
開業後にバーの経営がうまくいかずに失敗してしまう原因は、調査や資金などの準備不足だと考えられます。開業準備の時点での準備不足は、集客ができないことや資金の不足につながるため、失敗例を確認しながら対策していきましょう。
【バー開業後の失敗の例】
- 立地やお客さんに関する市場調査が不十分で集客できない
- 売上の上限を考慮して物件選びができておらず目標の売上げが上がらない
- 家賃や人件費などの経費がかかりすぎていて利益が出ない
- 広報宣伝を継続的に行えていないため客足が遠のく
バーを開業する際、事前調査や資金の準備が不十分だと、開業後の事業を回せなくなる原因になります。それぞれの失敗例と解決策を確認し、開業前に対策しておきましょう。
立地やお客さんに関する市場調査が不十分
立地やお客さんに関する調査が不十分な場合、開業後に来客数が増えず、売り上げが伸び悩むことになります。競合が多い立地への出店や顧客ニーズの理解不足は、近隣のバーへお客さんが流れる原因になる可能性があるため、解決策を確認しておきましょう。
【立地やお客さんに関する市場調査が不十分なことによる失敗例】
失敗例 | 解決策 |
地域のニーズに合わない商品やサービスの提供してしまったことで客足が遠のいた | ・地域のお客さんの好みや近隣店の価格帯なども調査し、ニーズに合ったサービスを提供する |
競合店が多いことを把握できておらず、競合店にお客さんが分散し、想定よりもお客さんが集まらなかった | ・立地を選定する際に競合となるお店は必ず確認し、競合の多い地域を避ける ・オリジナルのサービスやメニューを考え、競合との差別化を図る |
たとえば、銀座のバーでバーテンダーの修業を積んだのちに千葉県でバーを開業した人が、立地や客層の調査不足で失敗した事例があります。銀座の高所得層に向けて出していた上質な肉料理や高価なお酒などを提供した結果、地域のお客さんの需要には合わず、受け入れられませんでした。
バーを開業する際、立地や顧客などの市場調査が不十分だと売上の低下に直結します。特に地域性や競合店の存在を把握できていないと、顧客のニーズを満たせず、お客さんが離れてしまう可能性もあるため、開業前に十分な調査と分析を行いましょう。
なお、風営法の規定により、深夜0時以降は営業が禁止されている地域があります。特に住宅地の近隣で開業する場合には深夜営業ができない可能性があるため、各都道府県にて条例を確認してみてください。
売上の上限を考慮して物件選びができていない
物件の選定が適切でない場合は、開業後に目標売上を上げることができなくなる可能性があります。物件の坪数によっておおよその客席数が決まるため、適切な規模の物件でない場合は目標売上を上げることができなくなるためです。
【物件の選定が適切でないことによる失敗例】
失敗例 | 解決策 |
契約した物件が売上目標を稼ぐために必要な席数を取れる坪数でなかったため、想定していた売上を上げることができない | 売上目標を稼ぐために必要な席数を把握し、十分な席数を用意できる物件を選ぶ |
家賃が高く家賃にともなう物件取得費も高額になったため、開業資金や開業後の運転資金を圧迫させてしまった | 1ヶ月にかかる運転資金を計算し、いくらまでなら家賃が経費を圧迫せずに利益を上げていけるかを検討する |
売上は「客席数×客単価×回転数」で計算されるため、メニューの価格帯や回転数を検討し、目標の売上を上げられるだけの客席数を計算します。たとえば、売上目標が100万円で客単価5,000円、回転数が1.2回の場合、8席以上なければ売上目標に届きません。
物件選定の際、スケルトン物件の場合は、売上目標を達成するために必要な席数を取れる坪数かどうかを確認することになります。一方で、居抜き物件の場合は、十分な席数があるかどうかや、さらに追加することが可能かどうかなどを確認することになります。
バーの物件を契約する際は、お店のコンセプトや目標とする売上に見合った物件を選定する必要があります。また、開業後の運営が困難にならぬよう、契約する物件の家賃は目安として1ヶ月の運転資金の10%~20%程度におさえるようにしましょう。
家賃や人件費などの経費がかかりすぎている
バーの営業に必要以上の経費がかかると、利益率が下がり、経営を維持することが難しくなります。経費にはいろいろな項目があるため、項目ごとに経費がかさむ原因と解決策を見てみましょう。
【経費がかさむ原因と解決策の例】
項目 | 原因 | 解決策の例 |
仕入費 | 廃棄ロスが多い | ・在庫や販売数を管理する |
家賃 | 家賃が高すぎて運転資金を圧迫している | ・1ヶ月の運転資金の10%~20%以内の家賃の物件を選ぶ |
水道光熱費 | 必要以上料金プランを契約していて水道光熱費の料金が高い | ・電力会社やプランを見直す ・小まめに電源を切る、水を出しっ放しにしない |
広告宣伝費 | 業態にあわない媒体にも費用をかけている | ・媒体ごとに費用対効果を確認する |
通信費 | 電話料金やインターネット利用料が高い | ・電話やインターネットのプランを見直す |
消耗品費 | 必要以上に高価なものを使っている、消耗品を丁寧に扱わず廃棄が多い | ・ひとまとめにして購入せず、消耗品の種類ごとに仕入れ先を検討する ・消耗品の廃棄を記録し、使い過ぎのチェックや対策を検討する |
人件費 | 従業員が多い、賃金設定が高い、不要な残業や時間外労働がある | ・業務量やピーク時の必要人員を振り返る ・業界標準の賃金設定に合わせる |
仕入れに関しては、在庫の抱えすぎや廃棄の量が増えることで、無駄な経費が発生することになります。一方で、仕入れが不足していると、メニューの商品を提供できなくなり、本来であれば稼げるはずの売上を上げられなくなるため、注文数の多い商品は常備しておく必要があります。
開業したバーを営業していく中で、経費がかかりすぎてしまうと事業が回せなくなり、失敗につながります。目分量でお酒や料理を作ることも、積み重なれば思いのほか収益を上げられずに経営不振へとつながる可能性があるため、グラム単位、ml単位での計量を徹底しましょう。
開業資金が不足するとバーを開業できない
開業資金が不足すると、物件や設備などの費用が予想以上に高くついた場合に新たな資金調達が必要となり、予定通りに開業できなくなる可能性があります。バーの開業資金はいくら準備しておく必要があるのか、開業資金の相場を確認してみましょう。
【開業資金の費用例】
項目 | 概要 | 費用の目安(8坪) | 費用の目安(15坪) |
物件取得費 | 物件の契約に必要な費用 | 192万円~ | 360万円~ |
内装工事費 | お店の内装デザインや施工工事に必要な費用 | 160万円~ | 300万円~ |
什器備品費 | 設備導入や什器、備品の購入費用 | 240万円~ | 270万円~ |
宣伝広告費 | お店の宣伝や集客のための費用 | 25万円程度 | 25万円程度 |
採用費 | 従業員を雇う場合の求人にかかる費用 | 0円~10万円程度 | 10万円程度 |
運転資金 | 開業後半年分の運転資金+予備費 | 373万円程度 | 780万程度 |
合計 | 1,000万円 | 1,745万円 |
たとえば、家賃が16万円の物件を契約する場合、家賃の10ヶ月分の保証金や手数料などが加算され、192万円程度の金額を支払うことになります。また、内装工事費は、物件の坪数や状態によって費用が高くなるため、予定していたよりも工事費用が高額になることも考えられます。
開業資金が不足していると、バーの開業自体ができなくなるため、十分な資金を用意しておく必要があります。資金不足により物件の契約や設備導入ができなくなるリスクを避けるため、事前に自己資金を貯めておくことや、融資を検討することが重要です。
なお、運転資金が不足していると、開業後のバーを円滑に運営できなくなる可能性があります。開業資金の内訳には、物件取得費や内装工事費などに加え、6か月分の運転資金を用意し、客入りが不安定な時期でも余裕をもって営業できるように備えておきましょう。
広報宣伝を継続的に行えていない
開業するバーの広告宣伝が不十分な場合は、集客ができず、思うように売上が上がらない可能性があります。開業したばかりのお店は知名度が低く、口コミも期待できないため、お金や時間をかけて、お客さんを呼ぶための販促活動を行いましょう。
【広報宣伝を継続的に行えていないことによる失敗】
失敗例 | 解決策 |
新規のお客さんの集客はできていたものの、リピートするほどの真新しさがなく、いきつけにしてもらえない |
|
道路から奥まった物件のため、通行人が立ち寄ることがなく集客できない |
|
バーの認知度を高めるためには、SNSやGoogleビジネスプロフィールなどの無料ツール以外にも、グルメサイトの有料プランもあわせて利用すると効果的です。さらに、コンセプトにちなんだイベントの開催や、季節限定メニューを準備し、通常営業以外の「特別感」を用意することで、リピーターの増加も見込めます。
バーの開業後は広告宣伝が不十分だと集客や売り上げの伸びに課題が生じます。開業直後の認知度が低い状況では、積極的な販促活動でお客さんを引き寄せる努力が必要です。さまざまな販促活動によってお店の魅力を伝え、集客を行うと同時にリピーターを増やすための工夫を持続させましょう。
まとめ
バーの開業には十分な計画や資金準備が欠かせません。開業準備の段階における市場調査や資金調達、適切な物件選びなどの重要性を理解することで、開業後の失敗を対策できます。
また、広告宣伝の継続的な実施や独自の販促活動を通じて集客を促進し、お店の認知度を高めることも大切です。開業前の慎重な準備と効果的な運営戦略で、開業後のバーの知名度や口コミを増やしましょう。
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この記事の監修者
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
田原 広一(たはら こういち)
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
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