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パン屋を開業する流れを時期別スケジュールで解説

「自分の焼いたパンでお客さんを笑顔にしたい」「いつか自分の理想のパン屋を持ちたい」と、パン屋の開業を夢見る方は多いのではないでしょうか。しかし、いざ準備を始めようと思っても、何から手をつければいいのか、資金はどれくらい必要なのかなど、分からないことだらけで不安に感じるかもしれません。

パン屋の開業は、一般的な飲食店と比べて専用の大型オーブンやミキサーなどが必要になり、電気やガスのインフラ工事も大掛かりになりがちです。また、開業スタイルによって必要な初期費用や準備の進め方は大きく変わってくるという独自の特徴があります。

この記事では、パン屋を開業するための具体的な流れを、オープン半年前から時系列で分かりやすく解説します。パン屋開業の流れを確認するガイドとして、参考にしてください。

パン屋を開業するまでの流れの時期別スケジュール

パン屋の開業には、製法や店舗形式の決定から、物件探し、資格取得など多くの手順が必要です。オープン予定日から逆算して、可能なら一年前から、遅くとも半年ほど前からスケジュールを立てることが求められます。

【パン屋を開業するまでの時間別スケジュール】

時期 主な準備内容
1年〜半年前 パン屋のスタイル(製法・店舗形式)の決定
半年前 コンセプト設計、仕入先の選定・原価計算、事業計画書の作成
3ヶ月前 店舗デザインの決定、機材の見積もり、設備条件の確認
2ヶ月前 資格(食品衛生責任者)の取得、許認可の申請
1ヶ月前〜直前 メニューの確定・オペレーション確認、スタッフの採用・教育

全体のスケジュールは、選択したパンの製法と店舗形式によって変動します。また、パン屋は専用の大型機材が必要になるため、内装工事や設備の搬入に時間がかかります。各ステップの目的を理解し、余裕を持った計画を立てることが重要となるでしょう。

1年から半年前はパン屋のスタイルを決める

開業の1年から半年前の時期には、自分がどのパン屋のスタイルを決める必要があります。スタイルは「製法」と「店舗形式」の組み合わせで決定され、これによって必要な資金や準備期間が大きく変わるためです。

【パン屋のスタイル別の特徴】

スタイル(製法×店舗形式) 特徴
スクラッチ × 自宅 初期費用を抑えつつ独自のパンを焼けるが、1日の製造量に限界がある
スクラッチ × テナント 本格的なパンを広く提供できる反面、設備投資や人件費の負担が大きく開業費用がかさむ
ベイクオフ × 自宅 限られたスペースで未経験でも始めやすいが、他店との差別化が課題になる
ベイクオフ × テナント 効率よく多品種を販売できるが、家賃を上回る集客力が必要になる

たとえば、初期費用を抑える目的で自宅開業を選ぶ場合でも、製法によって必要な厨房の広さや導入する機材が変わります。テナントを借りて開業する場合も、製法次第で必要な坪数や電気容量が異なるため、物件探しの前にこのスタイルを確定させなければなりません。

用意できる自己資金や、将来的に目指す売上の規模と照らし合わせて検討することが大切です。製法と店舗形式のそれぞれの特徴を理解し、無理のない組み合わせを選択してください。

製法の選択

パンの製法は、大きく分けて「スクラッチ製法」と「ベイクオフ製法」の2種類があり、どちらを選ぶかで店舗の運営方針が変わります。製法によって、必要な厨房設備の規模や日々の作業時間、求められる技術レベルが異なるためです。

【パンの製法と特徴】

製法 特徴
スクラッチ製法 店舗で小麦粉の計量から生地作り、発酵、焼き上げまでを一貫して行う
ベイクオフ製法 工場などで作られた冷凍生地を仕入れ、店舗では解凍・発酵・焼き上げのみを行う

スクラッチ製法は、独自の味や形を追求しやすく他店との差別化を図れるメリットがある反面、製造時間が長く大型の機材が必要になります。一方のベイクオフ製法は、製造工程が短く未経験者でも品質を保ちやすいメリットがありますが、生地の仕入れ原価が高くなり独自性を出しにくい点がデメリットです。

職人としてパンの質にこだわるか、省スペースや経営効率を優先するかによって選ぶべき手法は変わります。自身の思い描くパン屋像と、用意できる資金や人材をすり合わせて適した製法を選択してください。

店舗形式の選択

パン屋の店舗形式には、大きく分けて「自宅開業」と「テナント開業」の2種類があり、自己資金や目指す事業規模によって適した形式が異なります。どこに店舗を構えるかによって、開業にかかる初期費用の金額や毎月の固定費、そして集客のしやすさが大きく変わるためです。

【パン屋の店舗形式と特徴】

店舗形式 特徴
自宅開業 自宅の1階や敷地内の空きスペースを改装して店舗にする形式
テナント開業 商業施設や路面店など、事業用の貸し店舗を契約して開業する形式

自宅開業は、毎月の家賃がかからず固定費を低く抑えられるメリットがある一方で、立地が住宅街に限定されやすく新規の集客が難しい点がデメリットです。対するテナント開業は、人通りの多い場所を選べて認知度を上げやすい反面、物件取得費や毎月の家賃といった費用負担が重くなります。

地域密着で自身のペースに合わせて小さく始めたいのか、事業として売上を拡大していきたいのかを明確にし、自身の目的に合った店舗形式を選択してください。

半年前はコンセプトと事業計画の設計をする

開業の半年前には、決定した店舗のスタイルをもとに「コンセプト」と「事業計画」を設計します。自身が選んだ製法や立地に合わせた店舗の方向性を定め、それを実現するための資金計画を明確にするためです。

【半年前に行う主な設計項目】

設計項目 概要
コンセプトの決定 スタイルに適した顧客層や提供する商品の価値を設定する
事業計画書の作成 仕入先の選定や原価計算を行い、必要な資金を客観的に数値化する

事前に決めた製法や店舗形式を前提に、どのようなターゲットにいくらでパンを売るかというアイデアを乗せていきます。そして、そのアイデアを実際の店舗として運営するために必要な初期費用や毎月の経費を計算し、第三者が見ても実現可能とわかる事業計画書に落とし込みます。

頭の中にある店舗のイメージを、毎月の家賃や材料費といった具体的な数字に落とし込む工程です。コンセプトと事業計画の決め方を確認した上で、計画を進めてください。

コンセプトの決定

開業の半年前には、決定したスタイルに合わせて店舗のコンセプトを設計します。自身の選んだスタイルによって店舗の強みと補うべき弱点が異なり、狙うべきターゲットや価格帯が変わるためです。

【スタイル別のコンセプト例】

スタイル(製法×店舗形式) コンセプトの方向性・戦略の例
スクラッチ × 自宅 こだわりの素材と製法を活かし、客単価を上げるご褒美パン
スクラッチ × テナント 職人の技術を打ち出し、遠方からの来店を促す本格ベーカリー
ベイクオフ × 自宅 地域住民が毎日手軽に買える、親しみやすい価格の焼きたてパン
ベイクオフ × テナント 提供スピードと利便性を重視し、駅前や商業施設で回転率を上げる店舗

たとえば、「スクラッチ製法×自宅開業」のスタイルを選んだ場合、テナント出店に比べて新規の集客力が劣る傾向にあります。そのため、一般的なパンの販売価格で薄利多売を狙うのではなく、パンの品質や職人のこだわりを前面に出して顧客単価を上げるコンセプト設計が必要になります。

選んだスタイルの特徴を把握し、立地や製法と矛盾しない事業コンセプトを設計してください。誰にどのような価値を提供するのかを明確にすることが、その後の事業計画の土台となります。

事業計画書の作成

開業の半年前には、決定したコンセプトを実現するための「事業計画書」を作成します。事業計画書は、開業に必要な資金を正確に把握し、金融機関から融資を受けるための根拠となる書類となるため、とくに資金調達をしたい場合は重要な書類になります。

【事業計画書で決めるべき項目】

事業計画書で決めるべき項目 具体的な内容
開業資金の見積もり 店舗取得費、内装工事費、厨房機材などの初期費用
運転資金の計画 開業後数ヶ月間の家賃、人件費、光熱費などの固定費維持費
仕入先の選定と原価計算 小麦粉やバターなど主要材料の仕入先候補と、それに基づく原価率の算出
売上予測 ターゲット層に向けた客単価、1日の想定客数、営業日数から算出する月間売上

たとえば、事業計画を立てる際は、パン作りに欠かせない小麦粉やバターなどの主要な仕入先候補をあらかじめ見つけておく必要があります。実際の業者から見積もりを取り、正確な原価計算を行って数値を記載することで、融資担当者から見ても説得力のある事業計画になります。

自身の思い描くコンセプトを客観的な数値に落とし込み、実現可能な事業計画書を作成してください。この段階で事業の解像度を上げておくことで、その後の資金調達や物件手配をスムーズに進めることができます。

3か月前は店舗デザインの決定と機材の見積もりを取る

開業の3ヶ月前には店舗デザインを決定し、それに合わせて内装工事や厨房機材の見積もりを取得します。パン屋は専用の大型機材の搬入や、それに伴う水回り・電気設備の工事に時間がかかるため、この時期に手配を進めないとオープンに間に合わなくなるからです。

【スタイル別に必要になる機材と開業費用の相場】

スタイル(製法×店舗形式) 主に必要となる機材 費用相場
スクラッチ × テナント 大型ミキサー、ドウコンディショナー、物件取得費、本格的な内装工事費 1,600〜2,500万円
ベイクオフ × テナント オーブン、ホイロ、冷凍ストッカー、物件取得費、軽微な内装工事費 800〜1,300万円
スクラッチ × 自宅開業 大型ミキサー、オーブン、水回りや排気設備の改装費 500〜800万円
ベイクオフ × 自宅開業 オーブン、冷凍ストッカー、最低限の改装費 300〜550万円

たとえば、スクラッチ製法でテナント開業する場合は、専門機材に加えて高電圧の電気工事などが必要になり、開業資金が高額になります。

複数の業者から相見積もりを取り、事業計画書で算出した金額と乖離がないかを確認しましょう。正確な必要資金を把握したうえで、設備の発注と施工に向けた手続きを進めてください。

なお、各スタイルの詳しい資金内訳を知りたい場合は、「パン屋の開業資金はいくら?店舗形態と製法で変わる費用相場を解説」もあわせて確認してみてください。

パン屋特有の設備条件の確認

店舗物件の契約や内装デザインを確定させる前に、その物件がパン屋特有の設備条件を満たしているかを確認します。業務用オーブンや大型ミキサーを同時に稼働させるには、通常の飲食店を上回る電気やガスの容量が必要になるからです。

【物件選びで確認すべき主なインフラ条件】

インフラ条件 概要
電気容量 業務用機材を動かすための動力(三相200V)が引き込めるか
ガス・給排気 ガスオーブンの使用や、熱を逃がすためのダクト設置が可能か
給排水設備 作業スペースの清掃や、大型シンクの設置に適した配管があるか
床の耐荷重 重量のある機材や、大量の小麦粉の保管に耐えられる構造か

たとえば、家庭用の電気しか通っていない物件で開業する場合、動力(三相200V)を引き込むための追加の電気工事が発生します。また、建物の構造上、必要な容量の引き込みやダクトの設置が不可能な物件もあり、その場合は機材の変更や物件の選び直しが必要です。

事前の確認不足は、追加の工事費用の発生やオープンスケジュールの遅延につながります。内装業者や厨房機器メーカーの担当者と現地調査を必ず行い、導入予定の機材が問題なく設置できる環境かを確認してください。

2か月前は資格取得と必要な許認可の申請

開業の2ヶ月前には、店舗を営業するために必要な資格の取得と、保健所への許認可の申請を行います。これらの手続きを完了しなければ法律上お店をオープンできず、申請から許可が下りるまでに数週間程度の期間を要するためです。

【パン屋開業になる必要資格と許認可】

種類 名称 概要
資格 食品衛生責任者 各店舗に1名以上の配置が義務付けられている
許認可 飲食店営業許可

菓子製造業許可

提供するメニューや販売方法によって必要な許可が異なる

たとえば、食品衛生責任者の資格は講習を受講すれば取得できますが、地域によっては数ヶ月先まで受講予約が埋まっている場合があります。また、営業許可の申請には保健所の担当者による店舗の立ち入り検査が必要になるため、内装工事の完了時期に合わせて日程を調整しなければなりません。

オープン直前になって手続きの遅れが出ないよう、内装工事の図面が完成した段階で管轄の保健所へ事前相談に行きましょう。店舗の設備が許可の要件を満たしているかを確認しながら、計画的に手続きを進めてください。

食品衛生責任者の取得

店舗でパンを製造・販売するためには、地域の保健所で「食品衛生責任者」の資格を取得し、店舗に1名以上配置する必要があります。これは食品衛生法によって定められた義務であり、有資格者が不在のままでは保健所からの営業許可が下りないためです。

【食品衛生責任者の対象者別取得方法】

対象者 資格の取得方法
資格を持っていない人 各都道府県の食品衛生協会が開催する養成講習会(約6時間)を受講する
調理師や製菓衛生師などの有資格者 講習会が免除され、申請のみで食品衛生責任者になれる

講習会は1日の受講で修了しますが、開催頻度が限られており、地域によっては数ヶ月先まで予約が埋まっている場合があります。オープン直前に資格がないという事態を防ぐため、物件や内装の準備と並行して早めに受講予約を済ませてください。

飲食店営業許可か菓子製造業許可の申請

店舗で製造したパンを販売するためには、管轄の保健所へ申請を行い、営業許可を受ける必要があります。販売するパンの種類や、店内にイートインスペースを設けるかどうかによって、取得すべき許可の区分が異なるためです。

【スタイル別に必要になる営業許可】

許可の種類 主な対象となる販売形式やメニュー
菓子製造業許可 パンやケーキなどを製造し、テイクアウト形式で販売する場合
飲食店営業許可 イートインスペースを設けたり、調理パンやドリンクを提供したりする場合

たとえば、店内で焼いた食パンや菓子パンを持ち帰り専用で販売する店舗であれば、菓子製造業許可のみで開業できます。しかし、店内でコーヒーを提供したり、サンドイッチなどの調理パンを作って販売したりする場合は、飲食店営業許可も併せて必要になるケースがあります。

必要な許可の要件や判断基準は自治体によって異なるため、自己判断で工事を進めるのは控えてください。内装工事が始まる前に店舗の図面を持参して保健所に事前相談を行い、どちらの許可が必要かを確認したうえで申請手続きを進めましょう。

1か月前はオープン準備

開業の1ヶ月前には、店舗のオープンに向けた実践的な準備に集中します。この時期には内装工事や機材の搬入が完了し、実際に厨房を稼働させることができる状態になるからです。

【1ヶ月前に行う主な準備内容】

  • メニューの最終確定とオペレーション確認
  • 店舗のスタイルに合わせたスタッフの採用と教育

オープン当日にスムーズな接客と安定した品質のパンを提供できるよう、製造から販売までの細かな工程を見直してください。次項から解説するオペレーション確認やスタッフ採用の要点を確認し、万全の状態で開店日を迎えましょう。

メニューの最終確定とオペレーション確認

オープンの1ヶ月前には、提供するメニューの最終確定と、実際の機材を使ったオペレーションの確認を行います。新しい厨房環境では、機材の仕様や室温の違いによって、事前の試作通りにパンが焼けないことが多いためです。

【オペレーション確認の項目例】

オペレーション確認の主な項目 目的と確認内容
焼成テストとレシピ調整 実際のオーブンを使用し、火の入り方や焼き時間の微調整を行う
作業動線の確認 仕込みから発酵、焼き上げ、陳列までの動きに無理がないかを確認する
原価の最終チェック 実際の仕入れ材料を使用し、想定した利益率を確保できるか確認する

たとえば、実際に仕入れた材料を使い、導入したばかりのオーブンでパンを焼いてみると、発酵の進み具合が想定と異なる場合があります。そのため、本番と同じ環境で何度もテスト焼きを行い、レシピの微調整や陳列までの作業手順を修正する期間が必要です。

開店当日にスムーズな接客と安定した品質を保てるよう、家族や知人を招いたプレオープンを実施して課題を洗い出してください。製造から販売までの一連の流れを確認し、万全の状態で本番を迎えるための最終調整を行いましょう。

スタイルによってはスタッフの採用と教育

オープンの1ヶ月前には、店舗のスタイルや事業規模に合わせてスタッフの採用と教育を行います。販売数を伸ばすテナント型での開業や、製造工程が多いスクラッチ製法を選ぶ場合は、経営者一人ですべての業務をこなすことが難しくなるためです。

【スタイル別の採用戦略】

スタイル 採用するべき人材の目安
スクラッチ製法 × テナント 製パン技術を持つ職人、接客を担当する販売スタッフ
ベイクオフ製法 × テナント 未経験から教育可能な製造補助スタッフ、販売スタッフ
自宅開業 家族の専従、または少人数のパート・アルバイト

たとえば、スクラッチ製法で販売数を伸ばすためには、早朝から生地を仕込む専門の職人の採用を視野に入れる必要があります。一方でベイクオフ製法であれば、冷凍生地を焼く作業が中心となるため、未経験のスタッフでも教育期間を短縮して製造を任せることが可能です。

事業計画書で設定した目標売上から必要な人員を逆算し、求人募集を開始してください。オープン当日に慌てないよう、プレオープンの期間を活用してスタッフの接客やレジ操作の教育を完了させておきましょう。

資金調達をするタイミング

パン屋の開業において金融機関へ融資を申し込むタイミングは、開業の3〜4ヶ月前が目安となります。融資の審査には必要金額を証明する根拠が必要であり、物件の仮押さえと厨房機材の正確な見積もりが出揃った後でなければ申し込めないためです。

【資金調達のステップ】

資金調達のステップ 目安となる時期とパン屋ならではの注意点
1. 物件の仮押さえ 開業4〜5ヶ月前:設備条件(電気容量や排気など)を満たすか確認したうえで申し込む
2. 見積もりの取得 開業3〜4ヶ月前:特殊な機材や追加のインフラ工事を含めた正確な見積もりを取る
3. 融資の申し込み 開業3〜4ヶ月前:取得した見積書を事業計画書に添付し、金融機関へ提出する
4. 融資の実行・本契約 開業2〜3ヶ月前:審査を通過して着金した後に、物件の本契約や機材の正式な発注を行う

たとえば、見積もりが出る前に概算で融資を申し込んでしまうと、後からパン屋特有の電気工事費や高額なオーブン代が追加された際に、資金ショートを起こす危険があります。パン屋は専用機材の選定やインフラ環境の確認に時間がかかるため、開業の半年前から業者を探し始め、3〜4ヶ月前には見積もりを集めて融資を申し込むスケジュールが重要です。

業者から正確な設備見積もりを取得し、必要資金が確定した段階で速やかに融資の申し込み手続きに進んでください。次項で解説する店舗形式ごとの申し込みのタイミングを確認し、余裕を持った資金調達を行いましょう。

パン屋を開業するうえで懸念される特有の経営リスク

パン屋の開業には、他の飲食店にはない特有の経営リスクが存在します。製造工程の多さや陳列販売という形式など、パン屋ならではの事業構造が利益や労働環境に影響を与えやすいからです。

【パン屋特有の経営リスク】

パン屋特有の経営リスク 発生する主な理由
長時間労働と人材確保の難しさ 仕込みから焼き上げまでの工程が多く、早朝からの稼働が常態化しやすい
原材料費の変動による利益圧迫 小麦粉や乳製品など、輸入や気候に依存する材料の価格高騰の影響を受けやすい
フードロス(廃棄)の発生 焼きたての価値が高く、陳列販売のため売れ残ったパンの廃棄が損失に直結する

これらのリスクを開業準備をしている段階で把握し、自身の店舗スタイルに合わせた対策を事業計画に組み込んでおくことが重要です。次項から解説する個別のリスクとその対策を確認し、安定した店舗運営に向けた準備を進めてください。

パン屋は労働時間が長く人件費が高騰しやすい

パン屋は他の飲食店と比べて労働時間が長くなりやすく、それに伴い人件費が高騰しやすい傾向があります。生地の計量から仕込み、発酵、成形、焼き上げまでに多くの工程と時間を要し、オープン前の早朝から稼働しなければならないためです。

たとえば、スクラッチ製法で朝8時に開店する場合、深夜や早朝の3時頃から仕込みを始める必要があり、スタッフを雇うと深夜割増や早朝手当が発生して人件費がかさみます。また、長時間の立ち仕事や体力勝負の作業が多くなるため、スタッフの負担が大きく人材の定着率が低くなるリスクも抱えています。

無理のない営業時間の設定や、一部の商品にベイクオフ製法(冷凍生地)を取り入れるなど、労働時間を短縮する工夫が必要です。事業計画の段階で1日の作業スケジュールを具体的にシミュレーションし、利益を圧迫しない人員配置を検討してください。

廃棄が利益を圧迫する

パン屋は製造した商品を棚に陳列して販売する形式のため、売れ残ったパンの廃棄が利益を圧迫するリスクがあります。商品棚が空になっていると顧客の購買意欲が下がるため、常に一定量のパンを並べておく必要があり、完売と廃棄のバランス調整が難しいためです。

【廃棄を減らすための対策例】

廃棄を減らすための主な対策 具体的な取り組み例
製造スケジュールの最適化 過去の販売データや当日の天候をもとに、時間帯ごとの焼成量を調整する
見切り販売・フードシェアリング 閉店時間が近づいた段階で割引販売したり、専用のアプリを活用して売り切る
余剰パンの再加工 売れ残ったフランスパンをラスクにしたり、食パンをサンドイッチなどに加工する

たとえば、閉店の数時間前にパンが売り切れてしまうと売上機会を逃しますが、追加で焼きすぎて売れ残ると、かかった材料費や人件費がすべて無駄になります。客足が読みにくい日でも利益を残せるよう、売れ残ったパンを日持ちする焼き菓子に作り変えるなどの工夫が求められます。

日々の販売データを分析し、過不足のない製造スケジュールを立てることが重要です。ロスが発生することをあらかじめ想定した原価計算を行い、廃棄を最小限に抑える対策を事業計画に組み込んでください。

原材料費の高騰で利益率が変動しやすい

パン屋は小麦粉やバターといった原材料費の変動に影響を受けやすく、利益率が不安定になりやすいリスクがあります。パン作りに欠かせない主要な材料の多くは輸入に依存しており、為替や生産地の気候変動によって仕入れ価格が高騰しやすいためです。

【原材料費高騰の対策例】

原材料費高騰への主な対策 具体的な取り組み例
仕入先と材料の見直し 複数の卸業者から定期的に相見積もりを取る、価格が安定しやすい国産材料をブレンドする
商品構成の工夫 原価率の低いパンや、利益を取りやすいドリンク類の販売比率を増やす
適切な価格改定 定期的に原価計算を行い、材料費の上昇に合わせて販売価格を適正に見直す

たとえば、看板商品である食パンの小麦粉が高騰した場合、価格を据え置いたままでは売るほど利益が減ってしまいます。そのため、原価の安い惣菜パンを一緒に買ってもらうセット販売や、ドリンクメニューの充実など、店舗全体で利益率を調整する工夫が求められます。

定期的に原価計算を見直し、材料費の変動に合わせてメニューや価格を柔軟に変更できる体制を整えておくことが重要です。開業前の事業計画の段階から、原価が高騰した場合の利益シミュレーションを行っておきましょう。

まとめ

パン屋の開業を成功させるためには、自身の目指すスタイルを明確にし、オープンから逆算して計画的な準備を進めることが重要です。パン屋特有の大型機材やインフラ設備の手配には時間がかかり、選ぶ製法や店舗形式によって必要な資金や直面するリスクが変わるためです。

スクラッチ製法でテナント開業する場合は初期費用や人件費の負担が大きくなる一方、自宅でベイクオフ製法を選ぶ場合は初期費用や労働時間を抑えて小さく始められます。自身の選んだスタイルと矛盾しない事業計画を策定し、スケジュールに沿って融資や物件取得の手続きを進めてください。

各ステップで発生するパン屋ならではの注意点を確認し、漏れのない開業準備を進めましょう。

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この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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