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バーの開業に最低限必要なものを解説

バーの開業には、さまざまな準備や計画が必要です。物件の契約や什器備品を整えることに加え、法的に求められる許認可を取得することが不可欠です。

当記事では、バーの開業に最低限必要なものや取得しておくべき許認可を解説します。開業資金の内訳や物件選びのポイント、お店のコンセプトに応じた設備についても取り上げているので、これからバーを開業しようと考えている方は、参考にしてみてください。

開業時は最低限必要なものから準備する

バーを開業する際は、まず最低限必要なものから準備を進めましょう。開業にあたっては用意するものが多岐にわたるため、まずは最低限必要なものを項目ごとに確認しておくことで、その後の準備も進めやすくなります。

【バーの開業に最低限必要なもの】

  • 開業と営業のための資金
  • 売上目標に合わせた物件
  • バーの開業に必要な許認可
  • バーの営業に必要な設備や什器
  • 信頼できるお酒の仕入れ先

たとえば、開業資金は物件契約や内装工事、設備導入などの費用を支払うため、開業前から準備しておく必要があります。また、必要な許認可を取得していない場合はバーの営業を開始できないため、お店のオープン日までには手続きを済ませておかなければなりません。

バーの開業準備は、最低限何が必要かを確認してから始めます。最低限必要なものの項目を把握できたら、それぞれの項目ごとに準備を進めていきましょう。

開業と営業のための資金

バーを開業する際は「開業するための資金」と、開業後に「営業していくための資金」の両方を事前に準備する必要があります。それぞれの項目や概算を確認し、準備しておきましょう。

【8坪と15坪の店舗を想定した開業資金の内訳の例】

項目 概要 費用の目安(8坪) 費用の目安(15坪)
物件取得費 物件の契約に必要な費用 192万円~ 360万円~
内装工事費 お店の内装デザインや施工工事に必要な費用 160万円~ 300万円~
什器備品費 設備導入や什器、備品の購入費用 240万円~ 270万円~
宣伝広告費 お店の宣伝や集客のための費用 25万円程度 25万円程度
採用費 従業員を雇う場合の求人にかかる費用 0~10万円程度 10万円程度
運転資金 開業後半年分の運転資金+生活費 375万円程度 780万円程度
合計 1,000万円 1,745万円

開業するためにかかる費用には、物件の取得や内装工事、設備導入などの項目があります。たとえば、物件取得費では、家賃の6〜12ヶ月分を保証金として納めることになるため、まとまった金額が必要になります。

一方、営業するためにかかる費用の項目は、主に開業後半年分の運転資金です。開業当初はお店の知名度が低く、思うように売上が上がらないことも想定できるため、余裕を持って営業を続けられるだけの運転資金を用意しておく必要があります。

バーの開業資金は、物件取得や設備導入にかかる費用に加え、開業後のお店が軌道に乗るまでの運転資金も内訳に入れて用意する必要があります。そのため、自己資金以外の資金調達が必要な場合は、金融機関や申請方法などを調べておきましょう。

売上目標に合わせた物件

バーを開業する際は、売上目標に合わせた物件を取得する必要があります。開業後のバーの売上を立てるには、客単価と席数、回転数をもとに計算するため、十分な席数を用意できる規模の物件である必要があります。

【8坪と15坪の店舗で想定した売上の立て方の例】

坪数
※1坪あたり1.5〜2席を確保できる想定で席数を算出
売上
8坪(12席) 客単価3,000円×12席×1.5回転=売上54,000円/日
15坪(30席) 客単価3,000円×30席×1.5回転=売上135,000円/日

たとえば、8坪12席の店舗の場合、客単価×席数×回転数で計算すると、想定できる1日あたりの売上は54,000円です。もしも1日の売上目標を10万円と設定する場合、8坪の店舗では売上をたてるのが困難であるため、目標売上を稼げる規模の店舗を選定する必要があります。

物件を選定する際は、目標売上を見込める席数を確保できるための坪数が必要なほか、お店のコンセプトや家賃なども考慮する必要があります。また、深夜0時以降の営業を行う場合は立地の制限もあるため、必要な許認可を確認しつつ、届出できない地域なども把握しておきましょう。

バーの開業に必要な許認可

バーの開業には、定められた許認可の手続きが必要です。必要な「資格」や「許可」の取得、「届出」の提出を済ませていない場合はバーを開業できず、無許可での営業は処罰の対象になるためです。

【バーの開業に必要な手続き】

許認可の項目 必要な手続きの例
資格の取得
  • 食品衛生責任者
  • 防火管理者
届出の提出
  • 開業届
  • 所得税の青色申告承認申請書
  • 事業開始等申告書
  • 防火対象物使用開始届出書
  • 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書
許可の取得
  • 飲食店営業許可
  • 特定遊興飲食店営業許可

たとえば、バーを開業する際は食品衛生責任者の資格を持つ人をお店に1人以上置く必要があります。また、食品衛生責任者の証明書は、飲食店営業許可を申請する際の提出書類としても必要になります。

許認可の手続きは、バーの開業前に済ませておく必要があります。その際、届出には必須のもの以外にもお店の状況によって消防や雇用関連の届出が必要な場合もあるため、自分のお店に必要な届出を確認しておいてください。

なお、各手続きには必要書類の取り寄せや審査期間に時間を要する場合もあるため、優先順位を確認しつつ手続きを進めましょう。

2つの資格

バーの開業には「食品衛生責任者」と「防火管理者」の2つの資格が必要です。食品衛生責任者と防火管理者は、食品衛生法や消防法の定めによって飲食店開業の際には取得が義務付けられているためです。
【食品衛生責任者と防火管理者の概要】

項目 食品衛生責任者 防火管理者
概要
  • 食品の安全と衛生管理を監督する責任者
  • 飲食店や食品関係の営業を行う場合に必要
  • 火災予防と消火活動を管理し、施設の安全を確保する責任者
  • 店舗の収容人数が30人以上となる場合に必要
資格取得方法
  • 各都道府県の食品衛生協会が開催する講習を受講する
  • 栄養士、調理師などの有資格者は講習が免除される
  • 各都道府県の日本防火・防災協会が開催する講習を受講する
  • 消防設備点検資格者、消防職員管理職経験者などの有資格者は講習が免除される
法的根拠 食品衛生法 消防法
講習時間 6時間
  • 甲種防火管理者 約10時間
  • 乙種防火管理者 約5時間
講習形式
  • 集合型講習会
  • eラーニング型養成講習会
  • 集合講習会
  • eラーニング型養成講習会
費用 10,000円~12,000円 ~8,000円

食品衛生責任者と防火管理者の資格は、講習を受講することで取得できます。その際、一部の有資格者は講習が免除され、保有の資格で食品衛生責任者や防火管理者として認められます。

また、集合講習会の日程は都道府県によって異なり、定員に達した場合は受講できないため、日程を確認して早めに予約をしておくことがお勧めです。一方で、e-ラーニング講習の場合は、パソコンやスマートフォンで都合の良い時間に受講することが可能です。

バーの開業前に食品衛生責任者と防火管理者の資格を取得しておきましょう。特に、食品衛生責任者の証明書は「飲食店営業許可」の申請でも必要になるため、先に準備しておく必要があります。

なお、食品衛生責任者や防火管理者の資格取得に関する詳細が気になる人は「バーの開業に必要な資格を解説」の記事も参考にしてみてください。

5つの届出

バーを開業する際は、開業届や防火管理に関する届出など、最低でも5つの届出を提出する必要があります。特にバーの開業では、深夜にお酒を提供するお店が提出する届出について理解しておく必要があるため、詳細を確認しておきましょう。

【バーの開業や状況によって必要となる届出】

開業に必要な届出
届出の項目 届出先 提出期限 手続きに必要なもの
開業届 税務署 開業日から1ヶ月以内 開業届、マイナンバーの確認できるもの
所得税の青色申告承認申請書 税務署 青色申告を行う年の3月15日まで 所得税の青色申告承認申告書
事業開始等申告書 都道府県税事務所 開業日から1ヶ月以内 事業開始等申告書、本人確認のできる書類
防火対象物使用開始届出書 消防署 建物を使用する日の7日前まで 届出書、防火対象物の配置図、平面図立面図など
深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書 警察署 営業開始の10日前まで 届出書、飲食店営業許可書、営業方法を記した書類、各種図面、住民票など
状況によって必要な届出
<店舗の規模や設備によって必要な届出>

  • 防火対象物工事等計画届出書
  • 防火管理者選任届出書
  • 火を使用する設備等の設置届

<従業員を雇う場合に必要な届出>

  • 給与支払い事務所等の開設届出書
  • 青色事業専従者給与に関する届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • 保険関係成立届
  • 概算保険料申告書
  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

届出の手続きを進める際は、各届出によって異なる提出先や提出期限などを確認し、効率よく手続きを進める方法を考えます。たとえば「開業届」と「所得税の青色申告承認書」は、管轄が同じ税務署であるため、それぞれの必要書類を揃えて一度に申請できると効率的です。

また「深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書」を提出する際は、店舗の立地や内装に関する申請要件がある上に、多岐にわたる書類の提出が求められます。そのため、物件を探し始める段階から同時進行で準備を進めておく必要があります。

バーの開業前には、開業届や深夜営業を開始するための届出を提出しておく必要があります。また、お店の規模や営業形態によって必要な防火関連の届出や従業員を雇う際に必要な雇用関連の届出もあわせて確認しておきましょう。

バーの開業に必要な届出を詳しく知りたい人は「バーの開業に必要な届出を解説」の記事も参考にしてみてください。

飲食店営業許可

バーを開業する際は、飲食店営業許可の取得が必要です。また、お店のコンセプトによっては取得が必要な許可もあるため、それぞれの許可の項目や概要を確認しておきましょう。

【飲食店営業許可の概要とコンセプトによって必要な許可】

飲食店営業許可
申請要件
  • 食品衛生責任者の設置
  • 食品衛生法に基づく設備基準の順守
申請先 保健所
必要書類 営業許可申請書、設備構造と設備を示す図面、食品衛生責任者手帳、水質検査成績書など
申請方法 保健所窓口もしくはオンライン申請
申請から交付までの期間 約2~3週間
申請費用 15,000円~19,000円程度(地域によって異なる)
申請の流れ
  1. 申請要件の総裁を確認する
  2. 店舗の図面を持参し、保健所へ相談に出向く
  3. 申請手続きを行う
  4. 保健所による設備検査を受ける
  5. 飲食店営業許可証をうけとる
コンセプトや営業形態によって必要な許可の一例
  • 特定遊興飲食店営業許可
  • たばこの出張販売許可

飲食店営業許可を取得するためには「食品衛生責任者の設置」と「食品衛生法に基づく設置基準の順守」という2つの申請要件を満たす必要があります。設備基準を満たしているかどうかは、許可申請後の保健所による設備検査の際に確認され、基準を満たせていない場合は改善するまで営業許可がおりません。

また、生演奏やカラオケなどの「遊興」を楽しむコンセプトバーの場合は「特定遊興飲食店営業許可」が必要になる可能性があります。同様に、シガーを扱う場合は「たばこの出張販売許可」の取得も必要になります。

飲食店開業許可の手続きは、バーをオープンする10日前までには済ませておきましょう。無許可で営業していた場合には処罰の対象になる可能性があるため、自分のお店に許可が必要かどうか悩む場合には、管轄の警察署に確認しましょう。

なお、バーの開業に必要な許可に関する情報は「バー開業に必要な許可を解説」の記事も参考にしてみてください。

バーの営業に必要な設備や什器

バーを開業する際は、バーの営業に最低限必要な設備や什器の導入が必要です。最低限必要な設備や什器が整っていなければ、商品を作って提供する環境やお客さんが飲食できる環境を用意できず、バーを営業できないないためです。

【バーの営業に最低限必要な設備や什器備品の例】

項目 必要なものの例 備考
設備
  • 冷蔵、冷凍庫
  • 製氷機
  • 作業台(コールドテーブル)
  • 換気設備
  • エアコン
  • 2層式シンク(水、熱湯の出る水栓)
  • 照明設備 など
  • 設備を導入する際は営業許可を取得できる基準のものを選ぶ
  • 作業中の怪我や事故を回避できる導線を考えて設置する
  • 居抜きの設備をそのまま利用する場合は故障や不具合が無いかを確認しておく
什器
  • バーカウンター、椅子
  • グラス、食器用収納棚
  • ディスプレイ棚 など
  • お店のコンセプトや内装に合わせ統一感を持たせる
  • 耐久性やメンテナンスのしやすさを考慮して材質を選定する
備品
  • グラス、食器、カトラリー
  • カクテル調製器具
  • レジ など
  • グラス類は客席数の3倍の数を目安に用意する
  • 備品の種類や数量は多岐にわたるため、備品リストを作成して準備の際の漏れや重複を防ぐ

たとえば、バーに導入する設備には、冷蔵庫や製氷機などの厨房設備に加え、快適で衛生的な環境を提供するための換気扇やエアコンも必要です。その際、設置する設備は保健所の検査基準を満たすものを選ぶ必要があり、基準に満たない場合は飲食店営業許可を取得できません。

営業許可の基準を満たした設備の導入や、バーの営業に最低限必要な什器備品類は、項目ごとに概算を確認し、見積もりを取りながら購入先を検討する必要があります。グラスや食器などの購入は、飲食店向けの業務用品サイトで価格をおさえて大量に仕入れることもおすすめです。

なお、設備の基準や費用に関する詳しい情報は「バーの開業に必要な設備を解説」の記事も参考にしてみてください。

コンセプトによって必要になるものもある

開業するバーのコンセプトによって必要になる設備や備品もあります。コンセプトバーの開業を検討している人は、従来のバーに必要なものに加えて自分のお店のコンセプトによって必要になるものを確認しましょう。

【コンセプトによって必要な設備の一例】

コンセプト 導入する設備の例
ダイニングバー オーブンやフライヤーなどの調理機器
ダーツバー ダーツ台やビリヤード台など
カラオケバー カラオケ機材、周辺機器など
スポーツバー 大型テレビ、プロジェクターなど
シガーバー ダクト式換気扇や天井埋め込み型換気扇などの換気設備
ワインバー ワインセラー
カフェバー エスプレッソマシン 

たとえば、カラオケバーを開業する場合、カラオケの機材や周辺機器が必要です。また、カラオケの導入に加え、防音パネルの導入や防音設備の工事が必要になる可能性もあります。ビリヤードやダーツ台の導入には、あわせて壁や床の補強工事が必要な可能性もあります。

コンセプトならではの設備を導入する場合、付随する工事の有無や工事費の概算も確認する必要があります。その際、開業資金を考慮して、設備を購入するかレンタルするかも検討しましょう。

なお、コンセプトバーの種類や売上げの立て方に関心がある人は「バーを開業する際の軸となるコンセプトの種類を解説」の記事も参考にしてみてください。

信頼できるお酒の仕入れ先

バーを開業する際は、信頼できるお酒の仕入れ先を探し、契約しておくことが必要です。信頼できる地元の酒販売と契約しておくことで、品質の良いお酒を迅速かつ適切に納品してもらえるため、安定した営業を維持していくために重要です。

【仕入れ先を決める際に考慮するポイント】

ポイント 内容
品質の保証 高品質なお酒を提供することで、顧客の満足度を維持し、リピーターを増やす
コスト管理 長期的な契約で安定した価格でお酒を購入でき、仕入れコストを予測しやすくなる
納期の速さと正確さ 必要な商品を納期通りに安定して供給してもらうことで、欠品を避ける

バーで使用するお酒の仕入れ先は、商品の質や価格、納品の速さと正確さなどを考慮しながら決めることが重要です。また、トレンドや地域のニーズにあわせた商品の提案、ビールサーバーの設置やメンテナンスのサポートなどもポイントにおいて検討してみてください。

バーを開業する際には、信頼できるお酒の仕入れ先と契約することが不可欠です。また、仕入れる商品の重点を置くポイントによっては、ディスカウントショップや通販などを使い分けて利用しましょう。

まとめ

バーの開業には多岐にわたる準備が必要であるため、まずは最低限必要なものから順に計画的に進めていきましょう。

まずは開業と開業後にしばらくバーを営業していくための資金が必要です。自己資金以外の資金調達が必要な場合は、金融機関や申請方法などを調べておきましょう。開業資金が確保できたら、売上目標に合わせた物件の取得や設備や什器の導入を進めましょう。

また、物件の選定や設備導入と同時に必要な許認可の手続きを進めておくことも重要です。届出の提出や許可の取得には必要書類の取り寄せや審査などに時間を要するため、提出先や期限などを早めに確認し、計画的に行いましょう。

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この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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