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キッチンカーを開業するときの営業許可を解説

キッチンカーは食品を提供するため、安全面や衛生面に問題がない状態での営業を行わなければなりません。そのため、キッチンカーを開業するときは原則として厚生労働省が管轄する保健所から営業許可を取得する必要があります。

 当記事では、キッチンカーを開業するときの営業許可を解説します。営業許可の概要や申請の流れを確認することにより、キッチンカーの開業準備を計画的に進められる可能性があるため、キッチンカーを開業したい人は参考にしてみてください。

 キッチンカーを開業するときは飲食店の営業許可が必要

キッチンカーを開業するときは飲食店の営業許可が必要になります。キッチンカーは調理加工を行った食品を商品として提供するため、食品衛生法の定めにより、保健所の施設基準を通過した営業許可証を取得しなければ営業できません。

営業許可証は都道府県知事が交付し、書類審査と実地検査は保健所が行います。原則としてキッチンカーの保管場所を管轄する保健所が対応するため、飲食店の営業許可を申請するときは管轄地域の保健所での手続きを行います。

また、営業許可証は「人」だけではなく「場所」「設備」に対して発行されます。そのため、すでに飲食店を経営しており、飲食店の営業許可証を取得している場合でも、キッチンカーを開業するときは場所や設備が異なるため、新たに営業許可の取得が必要になります。

なお、飲食店の営業許可証には有効期限があります。自治体によって異なりますが、おおむね5年から8年程度での更新が必要となるため、飲食店の営業許可証を取得するときは有効期限も確認することを留意しておきましょう。

 キッチンカーをレンタルして営業する場合も営業許可が必要となる

レンタルしたキッチンカーを利用して営業する場合も、営業許可の取得が必要です。営業許可証は「場所」「設備」だけでなく「人」に対しても発行されるため、キッチンカーをレンタルして営業する場合は営業者名義での営業許可証が必要となります。

レンタルしたキッチンカーでの営業許可を申請する場合は、まずは管轄の保健所を確認します。「レンタル事業者の所在地」「営業者の所在地」「営業先の所在地」など、所在地が異なると管轄の保健所も異なる場合があるため、自身の管轄となる保健所を確認しておきます。

管轄の保健所を確認したあとは、車検証の名義変更が必要かどうかを相談します。車検証の名義が申請者と異なる場合、営業許可の申請が受け付けられない可能性があるため、管轄地域の保健所に事前相談しておきます。

なお、車検証の名義変更が必要な場合は手続きに相応の時間がかかります。レンタルしたキッチンカーでの営業許可を申請する場合は、車検証の名義変更が可能かどうかをレンタル事業者に確認しておくことも検討してみましょう。

営業許可を取得する流れを押さえておく

キッチンカーの営業許可を取得するときは、営業許可を取得する流れを押さえておきましょう。流れを押さえることにより、営業許可を計画的に取得できる可能性があるため、まずは営業許可を取得する流れを押さえておきましょう。

【営業許可を取得する流れ】

  • 事前相談
  • 申請手続き
  • 実地検査

営業許可を取得する流れは「事前相談」「申請手続き」「実地検査」となっています。それぞれの工程での作業内容を確認することにより、スケジュール通りに営業許可を取得できる可能性があるため、まずはそれぞれの工程を確認していきましょう。

事前相談

営業許可を取得するための最初の工程は「事前相談」です。保健所へ事前相談することにより、キッチンカーを製作する前に注意点や疑問点を確認することができるため、まずは保健所の担当者に事前相談することから始めましょう。

【事前相談の例】

項目 確認事項や相談事項
商品
  • 提供する商品
  • 調理工程
車両
  • 車種や車両の大きさ
  • 運転席との仕切りの有無
設備
  • 施設基準の詳細
  • 設置する設備の詳細

事前相談するときのポイントは、キッチンカーの情報を整理することです。「提供する商品や調理工程」「車種や車両の大きさ」など、自身のキッチンカーの情報を正確に伝えることにより、担当者との間に認識のズレが発生することを防げる可能性があります。

事前相談するときのもうひとつのポイントは、質問事項を整理することです。「商品」「車両」「設備」など、項目ごとに質問する内容を整理することにより、不安点や疑問点が解消され、限られた相談時間を有効に活用できる可能性があります。

なお、事前相談の工程は自治体によっては省略することもできます。事前相談せずとも申請手続きに進める自治体もありますが、キッチンカー製作後に不備が見つかるおそれもあるため、事前相談が不要な自治体に申請するときも事前相談することを検討してみましょう。

事前相談では仕込み場所の有無も相談する

事前相談するときは仕込み場所の有無も相談しましょう。キッチンカーの仕込み作業は要件が定められている関係上、事前相談するときは仕込み作業をする場所を保健所の担当者に共有するようにしましょう。

【仕込み作業における要件】

項目 要件
キッチンカー車内での仕込み作業を行う場合 キッチンカー車内に200Lの給排水タンクを設置する
キッチンカー車内以外での仕込み作業を行う場合 仕込み場所の飲食店営業許可も取得する

キッチンカー車内での仕込み作業を行う場合は、容量が200Lある給排水タンクを設置する必要があります。大型の給排水設備が設置できるキッチンカーならば、車内での仕込み作業ができるため、キッチンカーの飲食店の営業許可のみ取得すれば営業できます。

キッチンカー車内以外での仕込み作業を行う場合は、仕込み場所の飲食店営業許可も取得する必要があります。仕込み作業が終わった食材をキッチンカーに持ち込むため、キッチンカー車内に200Lの給排水タンクを設置せずとも営業できます。

なお、仕込み作業の解釈は自治体によって異なる可能性があります。仕込み作業に該当すると知らず、許可されていない場所での仕込み作業をしてしまうおそれもあるため、仕込み作業にあたる調理工程を保健所に事前確認することも検討しましょう。

キッチンカーの仕込み場所に関する情報が知りたい人は「キッチンカーを開業するときに利用できる仕込み場所とは」を参考にしてみてください。

申請手続き

営業許可を取得するための二つ目の工程は「申請手続き」です。申請手続きに必要なものは自治体によって異なりますが、提出書類や申請手数料など、準備するものがいくつかあるため、申請手続きに必要なものを確認しておきましょう。

【申請手続きに必要なものの例】

項目 概要
提出書類
  • 営業許可申請書
  • 営業設備の大要、配置図
  • 食品衛生責任者の資格を証明するもの
  • 登記事項証明書(法人のみ)
  • 水質検査成績書(貯水槽や井戸水を使用する場合のみ)
申請手数料 16,000円~18,000円程度(自治体ごとに異なる)

たとえば、申請手続きには「営業設備の大要、配置図」が必要です。自治体によってフォーマットは異なりますが、キッチンカーに設置した設備の概要や配置を説明する資料が必要となるため、申請手続きを行うときは設備に関する資料を準備することになります。

また、申請手続きには「申請手数料」が必要です。申請手数料は自治体ごとに異なりますが、16,000円から18,000円程度の申請料が必要となるため、申請手続きを行うときには申請手数料分の収入印紙を準備することになります。

なお、オンラインからも営業許可の申請手続きができます。厚生労働省の「食品衛生申請等システム」より、飲食店営業許可の申請手続きができるため、状況に応じて申請手続きをオンラインから行うことも検討してみましょう。

申請手続きでは食品衛生責任者の資格証明が必要となる

飲食店の営業許可を申請するときは、食品衛生責任者の資格を証明するものが必要となります。食品衛生責任者の資格を持っていない場合は、営業許可の申請手続きをする前に食品衛生責任者養成講習会に参加して取得することになります。

【食品衛生責任者養成講習会の概要】

項目 概要
講習期間 1日間
講習費用 10,000円~12,000
講習内容 「食品衛生学」「食品衛生法」「公衆衛生学」「修了試験」

食品衛生責任者養成講習会の講習期間は1日です。「食品衛生学」「食品衛生法」「公衆衛生学」など、計6時間程度の講習科目を受講し、講義の理解度や知識の定着度を確認するための修了試験に合格すれば、食品衛生責任者の資格を取得できます。

食品衛生責任者養成講習会の講習費用は10,000円~12,000円です。各都道府県や各指定機関など、食品衛生責任者養成講習会の主催者によっても講習費用は異なりますが、オンライン上での受講方法を選択した場合も講習費用が異なることがあります。

なお、調理師や製菓衛生師などの有資格者は食品衛生責任者養成講習を受けずとも食品衛生責任者になれる可能性があります。該当する場合は食品衛生責任者養成講習会の受講が免除されるため、気になる人は各都道府県の公式サイトを確認してみましょう。

実地検査

営業許可を取得するための三つ目の工程は「実地検査」です。実地検査は開業者のキッチンカーが施設基準に合致しているかどうかを確認するため、キッチンカーにおける保健所の施設基準を押さえておきましょう。

【施設基準の例】

設備 概要
給水設備 調理工程に応じて40L80L200Lの給水設備を用意すること
作業場区画 調理場と運転席を完全に区画すること
作業場 天井・床・内壁は清掃しやすい構造や材質にすること
洗浄設備 流水式手洗設備を備えた2槽シンクにすること
排水設備 使用後の水を十分貯留できる汚水貯留装置を用意すること
冷蔵設備 温度計付きの冷蔵庫または冷凍庫
保管設備 衛生的に保管できること
廃棄物容器 蓋つきかつ耐水性で十分な容量があり、汚液及び汚臭の漏れのないもの

実地検査のポイントは「施設基準を満たしていること」です。「設置を定めている設備」に加え、「作業場の材質」「作業場を区画」などの車内の構造においても基準が定められているため、基準を満たしていない場合は保健所の判断により実地検査を通過できないおそれがあります。

実地検査のもうひとつのポイントは「安全面や衛生面に問題がないこと」です。施設基準を満たしていても、キッチンカーの安全面や衛生面に改善の余地がある場合は、保健所の判断により実地検査を通過できないおそれがあります。

なお、実地検査を通過したあとに営業許可証が交付されます。実地検査後から交付までの日数は1週間程度かかる場合もあるため、営業許可の取得は開業日から逆算した計画を立てて進めるようにしましょう。

キッチンカーの設備に関する情報が知りたい人は「キッチンカーに必要な設備の揃え方を解説」を参考にしてみてください。

実地検査ではHACCPの取り組みを確認される場合がある

実地検査ではHACCPに沿った衛生管理の取り組みを確認される可能性もあります。食品事業者は開業後にHACCPに沿った衛生管理を実施することになるため、飲食店の営業許可の実地検査時にこれらの取り組みを確認される可能性があります。

HACCPに沿った衛生管理の概要】

項目 概要
衛生管理計画の作成 厚生労働省が定めた「一般的な衛生管理」「HACCPに沿った衛生管理」にもとづいて「衛生管理計画」を作成する。
手順書の作成 必要となる場合は「清掃」「洗浄」「消毒」「食品の取扱い」などの具体的な方法を定めた手順書を作成する。
実施状況の記録 「衛生管理計画」と「手順書」にもとづいた衛生管理の実施状況を記録する。
効果の検証 「衛生管理計画」「手順書」の効果を定期的に検証し、必要となる場合はその内容を見直す。

HACCP(呼称:ハサップ)とは、衛生管理の手法のことです。「衛生管理計画の作成」「手順書の作成」「実施状況の記録」「効果の検証」など、食品事業者の中でも小規模事業者はHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の実施が義務付けられています。

開業後はHACCPを取り入れた衛生管理を実施することになるため、自治体によっては実地検査時に「衛生管理計画」「手引書」などのHACCPを取り入れた衛生管理の取り組みを確認される可能性があります。

なお、厚生労働省の公式サイトには、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」があります。自身の業態に近い手引書を参考にすることにより、実務に合わせた衛生管理を行える可能性があるため、キッチンカーを開業する人は確認しておきましょう。

出店場所によっては営業許可を複数取得する場合がある

キッチンカーの出店場所によっては営業許可を複数取得する場合があります。営業許可を取得した地域以外に出店する場合は、新たな出店地域の営業許可を取得する場合があるため、さまざまな地域でのキッチンカー営業を考えている人は、都道府県ごとの営業許可区域を確認しておきましょう。

【都道府県ごとの営業許可区域の例】

都道府県名 営業許可区域
埼玉県 埼玉県一円
千葉県 千葉県一円
東京都 東京都一円
神奈川県 神奈川県一円
京都府 京都府一円
大阪府 大阪府一円
兵庫県 神戸市、姫路市、明石市、尼崎氏、西宮市、その他一円

※令和5321日現在の情報

たとえば、兵庫県神戸市の営業許可を取得した人が兵庫県姫路市での営業を行う場合、新たに営業許可を取得することになります。兵庫県の場合、同じ県内でも市が異なると営業許可が必要な場合があります。

また、東京都新宿区で営業許可を取得した人が東京都杉並区での営業を行う場合、新たに営業許可を取得する必要はありません。東京都の場合、同じ都内であればひとつの営業許可のを使用し、区をまたいだ営業ができます。

なお、営業許可区域は今後変更される可能性があります。営業許可区域は今後変更される可能性があるため、他の地域に出店を考えている場合は、事前に各都道府県の営業許可区域を確認し、新たに営業許可を取得するかどうかを検討しましょう。

まとめ

キッチンカーを開業するときは飲食店の営業許可が必要になります。キッチンカーは調理加工を行った食品を商品として提供するため、食品衛生法の定めにより、保健所の施設基準を通過した営業許可証を取得しなければ営業できません。

 営業許可を取得する流れは「事前相談」「申請手続き」「実地検査」となっています。それぞれの工程での作業内容を確認することにより、スケジュール通りに営業許可を取得できる可能性があるため、営業許可を取得したい人はそれぞれの工程の概要を押さえておきましょう。

 キッチンカーの出店場所によっては営業許可を複数取得する場合があります。営業許可を取得した地域以外に出店する場合は、新たな出店地域の営業許可を取得する場合があるため、さまざまな地域でのキッチンカー営業を考えている人は、都道府県ごとの営業許可区域を確認しておきましょう。

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この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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