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訪問診療事業を開始するための手順と費用はどれくらい?

訪問診療の事業を開業したいと考えている人の中には、どういった手順でどのくらいの費用がかかるかを知りたい人もいますよね。当記事では、訪問診療事業の開業するにあたっての手順や必要な費用について解説します。

訪問診療とは?

①訪問診療のメリット

訪問診療とは、患者と医師が何月何日の何時に患者の自宅を訪問すると約束の上行われる治療です。足が悪く思うように外に出られない、家族に仕事があり病院の営業時間中に連れ出してもらえない、などの事情がある場合でも、医師からの診察を受けられます。

個人の家だけでなく、有料老人ホームなどの施設を回るのも訪問診療です。個人宅を訪問するメリットは、患者との距離が近いことが挙げられます。患者の生活スタイルや家族の人となりも手に取るように分かります。

その反面、個人宅を回ると時間が取られ一日に訪問できる患者数は限られます。訪問診療を開業するなら、個人宅中心にするか施設中心にするかの選択をすることになるでしょう。

②年々増える訪問診療を必要とする人の数

厚生労働省調べによると、日本で訪問診療を必要とする人が2025年には29万人に達するとの見込みです。高齢者の数は東京や大阪、神奈川、福岡などの都心部で65%を占め、それに伴い介護老人福祉施設や有料老人ホームの定員数も増加傾向です。

③平成30年度診療報酬の改定の背景には訪問診療も

人生100年時代という言葉が各種メディアでは踊っているように、日本人の長寿命化が進んでいます。より質の高い医療を確保するため、そしてどこに住んでいても適切な医療と介護を受けられる社会を実現するため、診療報酬は+0.55%、薬価台は-0.09~1.65%となる改定が行われます。

この中で、どこに住んでいても適切な医療・介護を受けられる社会を「地域包括ケアシステム」として団塊の世代が75歳となる2025年を目途に構築が勧められています。このシステムでは訪問診療を単純な在宅医療だけでなく、かかりつけ医としての機能、看取りまでを含む包括的な機能を含むように計画されています。

④定年前のベテラン医または30代の若手医が多く開業

長く内科医を務めたベテラン医師が人生の最後として開業をする場合、またはやる気とモチベーションの高い若手の医師がよりキャリアアップを狙って開業するという場合が見受けられます。在宅専門の場合は特別な診療技術、そして特別な医療機器が必要と安定した経営には壁があります。

そのため、まずはクリニックを開業して、その中で訪問診療部門を組み入れるといったスタイルで行うのが無難です。

どうやって訪問診療を開始するのか?

①あなたは今医師としてどの立ち位置か

開業までの手順は、自身が開業医なのか勤務医なのか、あるいは起業家なのかで診療訪問の起業方法は異なります。自身が勤務医なのであれば、開業医となる準備と同時に訪問診療を手掛ける準備をすることになります。

【開業医になるために必要な準備リスト】

  • 物件の選定と取得・契約・・・物件による
  • 医療機器の選定とリース契約(内科の場合:電子カルテ、レセコン、超音波診断装置、心電計、X線撮影装置、内視鏡 など)・・・1,500~3,000万円
  • 運転資金の確保・・・1,500万円
  • 看護師や事務スタッフの採用・・・1,000~2,000万円(パートと正社員で2~4名)

【訪問診療を手掛ける準備リスト】

  • 訪問診療を行うための研修やOJTを受ける

→日本在宅医学会による在宅研修プログラムがあります

  • 患者の層により投薬などの知識やがん緩和ケアのスキル、在宅人口透析の知識を得る
  • 訪問診療では院長一人体制ではムリ。運転手や医療事務パートを雇う
  • 看取りから介護まで多様なニーズに応えられるプログアムを作成する
  • 複数の医療機関との連携による24時間体制の確保をする

個人での24時間体制は難しい傾向があるため、近隣の医療施設との連携を強みにしましょう

現時点で既に開業医なのであれば、事業に訪問診療部門を組み込むという準備をすることになります。

②在宅療養診療所として認定されるとメリットが

地方厚生局に届け出ている訪問診療所は在宅療養支援診療所として区分されます。在宅療養支援診療所として申請したいのであれば、診療所であるということの他に24時間連絡を受けられる医師または看護職員の連絡先を文書で患者様に提出する必要があります。

この他に、下の7つの条件に合致する場合は在宅療養診療所として日本訪問診療機構(医療コンサル会社レスメッドが運営)登録されサイト上で紹介されます。参考にしてください。

  1. 患者様を直接担当する医師または看護師が、患者様およびそのご家族様と24時間連絡を取れる体制を維持すること。
  2. 患者様の求めに応じて24時間往診の可能な体制を維持すること。
  3. 担当医師の指示のもと、24時間訪問看護のできる看護師あるいは訪問看護ステーションと連携 する体制を維持すること。
  4. 緊急時においては連携する保険医療機関において検査・入院時のベッドを確保し、その際に円 滑な情報提供がなされること。
  5. 在宅療養について適切な診療記録管理がなされていること。
  6. 地域の介護・福祉サービス事業所と連携していること。
  7. 年に一回、在宅でお看取(みとり)した方の人数を地方厚生(支)局長に報告すること。

③開業には事業資金・開業希望エリアのマーケティング・事業計画を

医師と言えど病院勤めではなく、開業するのであれば「経営」をすることになります。開業までには、ざっくり言っても以下の内容を実行する必要があります。

  •  開業エリアの選定・マーケティング・顧客層分析
  • 宣伝計画作成・パンフレット・ホームページ作成
  • 診療所開設届(保健所)、保険診療手続き
  • 物件の取得・契約・内装工事者選定
  • 職員・スタッフの募集・研修

内科医が多くを占める訪問診療です。宣伝を打つ際は何か特徴を分かりやすくし、地域の人に早く覚えていただけるネーミングにする、親近感を持たせるなどの工夫をしましょう。

訪問診療を開業するための費用の相場

開業のためのノウハウは豊富に必要ですが、訪問診療の起業にはそれほど多くの初期費用は必要ありません。なぜなら、まず、クリニックに必要な診療室を用意しなくていいということ。電話と机、パソコンなどの最低限の設備は必要ですが、一般的なクリニックの開業相場(内科医の場合で2,000万円~3,000万円)よりも費用(1,000万円~1,500万円)を抑えられる傾向があります。

この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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