バーの開業に必要となる届出を解説 | 開業支援の相談なら「開業支援ガイド」

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バーの開業に必要となる届出を解説

バーを開業するには、いくつかの届出を提出することになります。その際「必須の届出」と「開業するバーの状況によって必要になる届出」があるため、把握しておく必要があります。

当記事では、バーを開業する人に向けて開業に必要な届出を解説します。文末には届出の一覧表も用意しているので、開業に必要な届出を調べている人は参考にしてみてください。

バーの開業で必要な届出は5

バーを開業する際は、必要な届出が5つあります。それぞれの届出は「所得税法」や「火災予防条例」など法律上の定めにより、事業の開始にあたり提出が求められるためです。

【バーの開業に必要な届出】

  • 開業届
  • 事業開始等申告書
  • 所得税の青色申告承認申請書
  • 防火対象物使用開始届出書
  • 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書

たとえば、開業届や事業開始等申告書は、事業を開始するので決められた税金を納める旨を示すための届出です。また、深夜にお酒の提供が想定されるバーの開業にあたっては「深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書」も提出しておくことになります。

バーを開業する前に必須で提出する届出は5つあります。それぞれの届出は、提出先や提出期限などが異なるため、1つずつ確認しておきましょう。

なお、バーを法人として開業する場合は、開業届ではなく「法人設立届出書」を提出することになり、個人事業主とは異なる書類が必要です。法人の開業に必要な書類の詳細は国税庁の公式サイトを確認してみてください。

開業届

バーを開業する個人事業主は、店舗を管轄する税務署に開業届の提出を求められます。個人事業主が消費税や所得税などの国税を納める関係上、事業を開始したことを税務署に申告する必要があるためです。

【開業届の概要】

対象者 新たに事業を開始して事業所得を得る個人事業主
提出先 管轄の税務署
提出期限 開業から1ヶ月以内
手続きに必要なもの 開業届、マイナンバーの確認できるもの
提出方法 ・管轄の税務署に持参または郵送
・e-taxによる電子申請

開業届を提出しなかった場合に特に罰則はありませんが、所得税法で定められている届出を出さなければ経営に不都合が生じることが想定されます。たとえば、開業後の資金調達に融資や補助金を検討した際に、開業届が出されていない事業者は申請できない可能性があります。

開業届は、バーの開業に必要な届出の1つです。提出期限は開業から1ヶ月以内と定められているものの、開業後は多忙になることが想定されるため、提出を忘れることのないよう早めに提出しておきましょう。

なお、開業届は正式には「個人事業の開業・廃業届出書」という名称であり、様式は国税庁の からダウンロードするか税務署で入手できます。都道府県によって提出先や提出期限に違いがあるため、都道府県や税務署の公式サイトを確認しましょう。

所得税の青色申告承認申請書

所得税青色申告承認申請書は、確定申告を青色申告で行う旨を税務署に申し出るための申請書類です。青色申告することで、親族が従業員として働く場合の給与を経費として申請でき、最大で65万円の特別控除を受けられるため、概要を確認しておきましょう。

【青色申告承認申請書の概要】

対象者 個人事業主やフリーランスとして開業し、確定申告を青色申告で行う予定の人
提出先 管轄の税務署
提出期限 開業日から2ヶ月以内
手続きに必要なもの 所得税の青色申告承認申告書のみ
提出方法 ・管轄の税務署に持参または郵送
・e-taxによる電子申請

たとえば、バーの経理を配偶者に任せ、給与として月に20万円を支払う場合、青色申告者は年間で240万円分の給与を経費として計上できます。確定申告では売上から経費を差し引いた所得に税金がかかるため、経費計上した240万円分の節税が叶うことになります。

所得税の青色申告承認申請書は、事業者が確定申告を青色申告で行うことを届け出る申請書類です。提出先が開業届の届出と同じ税務署なので、手間を省くためにも開業届と一緒に提出するようにしましょう。

事業開始等申告書

個人事業主が開業する際は、都道府県税事務所に事業開始等申告書の提出を求められます。都道府県税を納める関係上、事業を開始したことを都道府県税事務所に申告する必要があるためです。

【事業開始等申告書の概要】

対象者 個人事業主やフリーランスとして開業する人
提出先 納税する地域の都道府県税事務所
提出期限 都道府県により異なる
手続きに必要なもの 事業開始等申告書、本人確認のできる書類
提出方法 ・管轄の都道府県税事務所に持参または郵送
・e-taxによる電子申請

事業開始等申告書は、都道府県によって提出先や提出期限が異なります。たとえば、東京都は開業から15日以内、神奈川県や千葉県の場合は開業から1ヶ月以内の提出が原則となっています。また、事業開始等申告書の名称も「事業開始・変更・廃止申告書」「個人の事業の開始等報告書」などの名称の場合もあります。

バーを開業する際は、税事務所に事業開始等申告書を提出することになります。事業開始等申告書に関する情報は、あらかじめそれぞれの都道府県税事務所の公式サイトにて確認しておきましょう。

なお、納税の届出を税務署と都道府県税事務所の両方に提出するのは、納める税金が国税か地方税かによって管轄違うためです。両方提出する必要がある届出のため、それぞれの提出先に届け出ましょう。

防火対象物使用開始届出書

防火対象物使用開始届出書は、バーの店舗となる建物を使用する際に届け出る書類です。バーを開業する場合は、たいてい店舗を持つことになるので、防火対象物使用開始届出書の提出は必須と考えられます。

防火対象物とは、消防法によって定められている建築物や車両、船、山林など火災予防の対象となるもののことを指します。届出を出さない場合は罰則の対象になるため、開業前の準備の中では優先順位を上げて必ず提出しましょう。

【防火対象物使用開始届出書の概要】

対象者 防火対象物(建物・テナントの一室を含む)を使用する人
提出先 管轄の消防署
提出期限 使用開始の日の7日前まで
手続きに必要なもの 防火対象物使用開始届出書、防火対象物の配置図および平面図、立面図、断面図、室内仕上げ表など
提出方法 ・管轄の消防署に提出
・郵送
・オンライン申請(対応している自治体)

防火対象物使用開始届出書は、新築の建物の場合であれば建築時に消防同意の手続きを行うため、届出が不要となることがあります。一方で、既存の建物にテナントの一室として入居する場合は、テナントごとの届出が必要であるため、届出書を提出することになります。

防火対象物使用開始届出書は、使用を開始する建物が消防法の基準に達しているかどうかを確認するための書類です。また、届出書の提出後は消防署による現地検査が行われるため、それぞれ設備が適切に機能することや消防用設備に不具合がないかを確認しておきましょう。

なお、届出の際は添付書類が多いため、準備した書類に抜け漏れがないかの確認が必要です。添付する書類について相談したい場合は、消防署へ問い合わせましょう。

 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書

深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書は、主に酒類を提供する飲食店が深夜0時から午前6時までの時間帯に営業する場合に届け出る書類です。バーの営業では、深夜0時以降もお酒を提供することが想定されるため、提出しておく必要があります。

【 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書】

対象者 深夜0時から午前6時までの時間帯に酒類を提供する飲食店
提出先 管轄の警察署
提出期限 届出を受理された10日後から営業が可能となるため、開業前に余裕を持って提出する
手続きに必要なもの ・深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書、飲食店営業許可書、営業の方法を記した書類、それぞれの種図面(平面図、求積図、音響・照明図など)、住民票、その他管轄の警察署によって求められる書類
・法人の場合は定款や法人登記事項証明書など
申請要件 ・用途地域の規程により「住居地域」として定められていないこと
・風営法の規程により「接待」を中心とした営業形態やカラオケ、ダーツ等の遊興行為を行う営業形態でないこと など
提出方法 管轄の警察署の生活安全課窓口に提出する

深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書を申請する際、事業者は必要書類をすべて揃えたうえで、申請要件を満たす必要があります。

たとえば、必要書類の1つである「飲食店営業許可」を管轄の保健所から受けてなければ申請が通りません。また、座って談笑をしながらの接客やカラオケやダーツなどを楽しむコンセプトのバーの場合は、申請要件を満たさないため、深夜の酒類提供が認められません。

深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書は、届出を受理された10日後からの営業が可能なため、早めに準備しておく必要があります。届出が予約制となっている警察署もあるため、前もって確認しておきましょう。

開業するバーの状況によって必要な届出

バーを開業する際は、必須の届出に加え、状況によって必要な届出があります。開業するバーの規模や設備、従業員を雇うかどうかなどの状況によって必要な届出は異なるからです。

【開業するバーの状況によって必要な届出】

店舗の規模や設備などによって必要な届出
・防火対象物工事等計画届出書
・防火管理者選任届出書
・火を使用する設備等の設置届
従業員を雇う場合に必要な届出
・給与支払い事務所等の開設届出書
・青色事業専従者給与に関する届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
・保険関係成立届
・概算保険料申告書
・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届

店舗の規模や設備などによって必要な届出は、消防署に提出することになり、従業員を雇う場合に必要な届出は労働基準監督署やハローワークに提出することになります。自身の開業するバーにおいて必要になる届出がある場合は、それぞれの概要を確認しておきましょう。

店舗の規模や設備によって必要となる届出

開業するバーの規模や設備などにより必要な届出は3つあり、消防署に提出します。店舗の収容人数が30人を超える場合や、開業前の店舗で改装工事を予定している場合には届出が必要となるため、それぞれの概要を確認しておきましょう。

【店舗の規模や設備によって必要な届出】

届出 概要 提出先 提出期限
防火管理者選任届出書 防火対象物全体の収容人数が30人以上の建物で営業する場合に必要 管轄の消防署 入居する日までに提出
防火対象物工事等計画届出書 店舗の修繕、模様替えなどを行う場合に必要 管轄の消防署 使用を開始する7日前まで
火を使用する設備等の設置届 建物内外に一定規模以上の炉、コンロ、ボイラーなどを設置する場合に必要 管轄の消防署 設置する7日前まで

たとえば、バーの営業でガスコンロや入力70kw以上の給湯機、ヒートポンプ式冷暖房機などを使用する場合には「火を使用する設備等の設置届」が必要です。火を使って調理する場合や、寒さの厳しい地域にて該当する暖房機器を利用する場合は申請しましょう。

バーを開業する際は、店舗の規模や設備の利用状況などにより必要な届出があります。届出をしなかった場合は罰則の対象となる可能性があるため、必要な届出は開業前に提出しておきましょう。

従業員を雇う場合費必要となる届出

開業するバーで従業員を雇う場合に必要となる届出は、管轄の税務署や公共職業安定所(ハローワーク)に提出する届出があります。従業員を1人でも雇う場合や親族と共に経営する場合に必要な届出があるため、該当する人は確認しておきましょう。

【従業員を雇う場合に必要な届出】

届出 概要 提出先 提出期限
青色事業専従者給与に関する届出書 家族を青色専業者として申告する場合に届け出る 管轄の税務署 申告をしようとする年の315日まで
給与支払い事務所等の開設届出書 1人でも従業員を雇用して給与を支払うことになった場合には届け出る 管轄の税務署 雇用が決定した日から1ヶ月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 通常は毎月必要な源泉所得税の納付手続きを年2回にまとめる特例を受けるために届け出る 管轄の税務署 なし(納期の特例を適用できるのは原則として申請書提出の翌月から)
保険関係成立届 労働保険の適用事務所と加入者の保険関係が成立したことを届け出る 労働基準監督署またはハローワーク 保険関係が成立した日の翌日から10日以内
概算保険料申告書 従業員の労働保険料(雇用保険・労災保険)を納付するための届出 労働基準監督署またはハローワーク 保険関係が成立した翌日から50日以内
雇用保険適用事業所設置届 従業員を雇用保険に加入させるために必要な届出 ハローワーク 従業員を雇用した日の翌日から10日以内
雇用保険被保険者資格取得届 所定労働時間が週20時間以上で1ヶ月以上雇用する見込みがある従業員を雇用するたびに届け出る ハローワーク 従業員を雇用した日の翌日から10日以内

「青色事業専従者給与に関する届出書」とは、青色申告で確定申告をする事業者が親族に支払った給与を経費として計上するために必要な届出です。たとえば、バーの経理業務を配偶者に任せて給与や賞与を支払う場合には届出を出すことになります。

従業員を雇うことになった場合は、源泉所得税の納付手続きや労働保険の加入手続きなどに関する届出を提出する必要があります。従業員を雇う予定がある場合は、開業前に申請手続きを済ませておきましょう。

なお、法人として開業する場合は社会保険の届出も必要です。個人事業主でも従業員の労働時間によっては加入が必要となるため、留意しておきましょう。

バーの開業で必要な届出の一覧

バーを開業するにあたって必要な届出の種類や提出先は多岐にわたります。届け忘れのないように、一覧表をチェックしておきましょう。

【届出の一覧表】

項目 提出先 提出期限 概要
 開業届 税務署 開業日から1ヶ月以内 新たに事業を開始して事業所得を得る個人事業主が届け出る
所得税の青色申告承認申請書 税務署 青色申告を行う年の315日まで 確定申告を青色申告で行う場合に届け出る
 事業開始等申告書 都道府県税事務所 開業日から1ヶ月以内 地方税を納める関係上開業する個人事業主は必須で届け出る
 防火対象物使用開始届出書 消防署 建物を使用する日の7日前まで 防火対象となる建物で営業を開始する際に届け出る
 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書 警察署 営業開始の10日前までに届出を受理されていること 深夜0時から午前6時までの時間帯に酒類を提供する場合に届け出る
防火管理者選任届出書 消防署 入居する前までに提出 収容人数が30人以上の店舗で営業する場合に必要
防火対象物工事等計画届出書 消防署 建物を使用開始する7日前まで 開業する店舗の改装工事や修繕などが必要な場合の届出
火を使用する設備等の設置届 消防署 設置する7日前まで 建物内外に一定規模以上のコンロやボイラーなどを設置する場合に必要な届出
青色事業専従者給与に関する届出書 税務署 確定申告を行う年の315日まで 家族を青色専業者として申告する場合に届け出る
給与支払い事務所等の開設届出書 税務署 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 1人でも従業員を雇用して給与を支払うことになった場合には届け出る
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 税務署 なし

特例を受けられるのは申請の翌月から

源泉所得税の納付手続きを年2回にまとめる特例を受けるために届け出る
保険関係成立届 労働基準監督署またはハローワーク 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 労働保険の適用事務所と加入者の保険関係が成立したことを届け出る
概算保険料申告書 労働基準監督署またはハローワーク 保険関係が成立した日の翌日から50日以内 従業員の労働保険料(雇用保険・労災保険)を納付するための届出
雇用保険適用事業所設置届 ハローワーク 従業員を雇用した日の翌月の10日まで 雇用する従業員の1週間の労働時間が20時間以上で1ヶ月以上の雇用が見込まれる場合に届け出る
雇用保険被保険者資格取得届 ハローワーク 従業員を雇用した日の翌月の10日まで 雇用保険に加入する従業員を1人雇うごとに届出が必要

それぞれの届出は提出先や提出期限が異なるため、提出が必要な届出に関する概要はもれなく把握しておきましょう。また、届出を提出しないと罰則の対象となる場合もあるため、開業前に余裕を持って提出を済ませましょう。

まとめ

バーを開業する際は、開業届をはじめとする必須の届出が5つあります。特に、警察署に提出する「深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書」は、申請要件があるうえに必要書類も他の届出よりも多いため、早めに準備しておかなければなりません。

また、必須の届出とは別に、開業するバーの規模や設備、従業員を雇う場合など開業するバーの状況により必要となる届出もあります。それぞれの届出は提出先や提出の期限などが管轄により異なるため、確認しておきましょう。

なお、届出によっては「飲食店営業許可」などの許認可を先に取得しておく必要がある場合もあります。それぞれの届出を提出する前に提出先の公式サイトや窓口で必要事項を確認しておきましょう。

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この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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