パン屋の開業資金はいくら?店舗形態と製法で変わる費用相場を解説 - 開業支援の相談なら「開業支援ガイド」

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パン屋の開業資金はいくら?店舗形態と製法で変わる費用相場を解説

パン屋の開業には、物件取得や厨房機器の購入などで多額の資金が必要です。立地や規模によっては、初期費用だけで1,000万円〜2,000万円を超えるケースも珍しくありません

しかし、これはあくまで一般的な「職人が粉から作る店舗型」の相場であり、開業スタイルの選び方次第では費用を大幅に抑えることも可能です。

本記事では、パン屋の開業資金がどのような条件で変動するのかを解説します。「製法」と「店舗形式」という2つの視点から、あなたの予算と理想に合った開業スタイルを見つけてください。

パン屋の開業にかかる費用が決まる要素

パン屋の開業にかかる資金の相場は、事業主が選ぶ要素の組み合わせによって変わります。費用が決まる要素は、パンをどのように作るかという「製造工程」と、どこで売るかという「店舗形式」の2軸があります。

【パン屋の開業資金を決定する要素】

決定要素 選択肢 資金への影響
製造工程 スクラッチ製法 機材費が高くなる(ミキサー・ドウコン等が必要)
ベイクオフ製法 機材費が安くなる(オーブン・ホイロが中心)
店舗形式 テナント型 物件取得費・内装工事費が高くなる
自宅改装型 物件取得費はゼロだが、改装費(水回り等)が必要
無店舗型 店舗費用がかからないため、最も安価

表にある通り、本格的な設備を整えた店舗はパン屋らしくあるものの、初期費用は高額になります。一方で、製造工程を簡略化したり店舗を持たない形式を選べば費用は抑えられます。

要素の選択次第で、必要な機材や物件取得費が数百万単位で差が生じるため、開業を志した段階で製造工程と店舗形式の2つの軸で、どのスタイルを目指すのかを整理しておきましょう。

パンの製造工程

パンの製造工程には、粉から生地を作って焼き上げる「スクラッチ製法」と、仕入れた冷凍生地を焼成する「ベイクオフ製法」の2種類があります。製造工程の選択は厨房機器のグレードと数を決定づけるため、資金計画において重要な分岐点の一つとなります。

【スクラッチ製法とベイクオフ製法の違い】

特徴 スクラッチ製法(職人型) ベイクオフ製法(経営型)
初期費用 高い(重装備な厨房機器が必要) 低い(最低限の機器で開業可)
原価率 低い(材料費が安い) 高い(加工済み生地を買うため)
技術難易度 高い(職人の熟練技術が必須) 低い(未経験でも習得しやすい)
収益構造 利益率は高いが、初期投資の回収に時間がかかる 利益率は低いが、初期投資が軽く回収が早い

スクラッチ製法はこだわりのパンを提供できて利益率が高めですが、初期投資が大きく高度な技術が必要になるため開業がハイリスクになりがちです。一方、ベイクオフ製法は生地の仕入れコストが割高になる反面、初期費用を大幅に抑えられるため、ビジネスとしての参入障壁は低くなります。

パン屋の開業といえばスクラッチ製法をイメージされると思いますが、ベイクオフ製法と比べると機材の費用に数百万円単位で差が出てきます。自身の資金力とパン作りに対するこだわりを照らし合わせて、自分に合った製造工程を選択しましょう。

店舗形式の選択

製造工程と並んで開業にかかる資金を左右するのが、どのような場所で開業、販売するかという店舗形式の選択です。店舗形式には「テナント型」「自宅改装型」「無店舗型」の3種類があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。

【店舗形式別のメリットとデメリット】

形式 メリット デメリット
テナント型
  • 好立地を選べるため、認知や集客が早い。
  • 内装を自由に設計でき、世界観を作りやすい。
  • 店舗を押さえるための初期費用が高い。
  • 家賃や保証金などの固定費が重い。
  • 退去時に原状回復費用が発生するリスクがある。
自宅改装型
  • 家賃がかからず、通勤時間もゼロ。
  • 地域密着型の固定客を作りやすい。
  • 集客力が立地に依存するため、爆発的な売上は難しい。
  • 水回りや排気設備の増設工事が高額になる場合がある。
無店舗型
  • 初期投資・固定費が最小限で済む。
  • 副業や週末起業からリスクなく始められる。
  • 常設店舗がないため、認知拡大に時間がかかる。
  • 製造数に限界があり、大きな利益は出しにくい。

テナント型は人通りの多い立地を選べますが、家賃や保証金などの固定費が高額になります。対して、自宅改装型や無店舗型は初期投資・固定費を抑えられますが、集客力が立地に依存したり、認知拡大に時間がかかったりする側面があります。

潤沢な資金がない場合は、まずは固定費のかからない無店舗型や自宅改装型からスモールスタートするのも一つの戦略です。郊外であれば駅チカなどの物件よりも駐車場を用意した自宅物件の方が集客できるケースもあるので、地域性に合わせた店舗スタイルを検討してみてください。

パン屋の開業で必要になる費用相場

製造工程と店舗形式を掛け合わせると、パン屋の開業スタイルは主に5つのパターンに分類されます。それぞれの費用相場と特徴をまとめたのが以下の表です。

【スタイル別のパン屋開業にかかる費用相場】

パターン 費用相場 特徴
① スクラッチ製法×テナント 1,600〜2,500万円 最も一般的だが高額。本格的な設備と内装で「世界観」を作れるが、回収リスクも高い。
② ベイクオフ製法×テナント 800〜1,300万円 駅ナカや狭小地向き。重装備が不要なため初期投資を抑えられ、一等地での勝負が可能。
③ スクラッチ製法×自宅改装 500〜800万円 物件取得費ゼロ。ただし、居住スペースを「保健所許可の降りる厨房」にする改装費がかかる。
④ ベイクオフ製法×自宅改装 300〜550万円 家賃ゼロ×低投資で損益分岐点が圧倒的に低い。未経験でも参入しやすく、本業として生計を立てることも可能。
⑤ スクラッチ製法×無店舗 50〜100万円 シェアキッチンを利用。固定店舗を持たず、ネットやマルシェで販売し、ファンを作る段階。

※「ベイクオフ×無店舗」は利益率が低くなりすぎるため、一般的には推奨されません。
基本的にはスクラッチ製法とテナントの方が初期費用は高くなる傾向にありますが、好立地でこだわりのパンを売れるために初期費用をかけたほうが高い売り上げを期待できるため、自分がどのようなパン屋を経営したいのかをよく考えて選択するのが重要になります。
なお、これらはあくまで目安の金額であり、特に店舗型の物件取得費は立地によって大きく変動します。正確な金額については業者に依頼をして見積もりを取り、資金の準備を進めましょう。

スクラッチ製法×テナント型の開業に必要になる費用相場の内訳

パン屋開業の王道であるスクラッチ製法×テナント型は、自分好みの店作りができる反面、最も初期投資が必要な開業スタイルです。

スクラッチ製法でパン屋を営むために、20坪程度の店舗を構える場合、製造機器・内装・物件取得費のすべてにまとまった資金が必要となり、総額は2,000万円近くになります。

【スクラッチ製法×テナント型の開業資金の内訳】

項目 費用目安 内容・備考
物件取得費 200〜400万円 保証金(家賃10ヶ月分〜)、礼金、仲介手数料など。
内装・外装工事 600〜900万円 電気・ガス・給排水の容量アップ工事、ダクト設置が重い負担になる。
厨房機器 500〜700万円 ミキサー、オーブン、ドウコン、ホイロ、冷蔵庫など。中古活用で圧縮可能。
運転資金 300〜500万円 材料費、人件費、家賃の6ヶ月分。初期の赤字を補填する命綱。
合計 1,600〜2,500万円

スクラッチ製法×テナント型の資金計画で注意すべき点は、物件のインフラです。パン屋のオーブンやミキサーは業務用の高電圧や大容量のガスを必要するため、電気やガスの引き込み工事で数百万円の追加費用が発生するケースがあります。

スクラッチ製法×テナント型は費用を抑えても1,000万円を超える開業資金が必須になるため、融資などの資金調達を併用しながらの開業が一般的になります。そのため、開業を思い立った時点で自己資金を貯めつつ、早い段階で見積もりを出して、開業に必要な金額を準備することが重要になるでしょう。

ベイクオフ×テナントの開業に必要になる費用相場の内訳

ベイクオフ×テナントで開業する都市型ビジネス店舗は、スクラッチと比較して初期投資を抑えつつ、集客力の高い一等地で勝負できるのが特徴です。

生地の製造工程を外部化するため、大型のミキサーや発酵機器が不要となり、厨房機器費と内装工事費を抑えて開業することが可能です。その結果、スクラッチ製法型と比較して半分程度の10坪程度のスペースでも営業が可能となり、家賃単価の高い駅前や都心部への出店が現実的な選択肢となります。

【ベイクオフ製法×テナント型の開業資金の内訳】

項目 費用目安 内容・備考
物件取得費 150〜300万円 10坪前後の狭小物件を想定。立地が良い分、坪単価は高い。
内装・外装工事 300〜500万円 重飲食ほどの排気設備が不要な場合もあり、工事費は抑えめ。
厨房機器 200〜300万円 オーブン、ホイロ、冷凍ストッカーが中心。ミキサー等は不要。
運転資金 150〜200万円 人件費はパート・アルバイトで回せるため比較的安価。
合計 800〜1,300万円

ベイクオフ製法×テナント型の留意点は、初期費用は抑えられる一方で、継続的なランニングコストが高くなることです。仕入れた冷凍生地を使用するため、スクラッチ製法よりも原価が10%〜15%ほど高くなり、薄利多売のビジネスモデルにならない点は注意が必要です。

スクラッチ製法×テナント型と比較して初期費用が抑えられると言っても、ベイクオフ製法×テナント型も1,000万円前後の開業資金が必要になります。また、広い店舗を確保すれば物件取得費も上がってくるため、早めの見積もりと試算をして開業資金を準備する必要があるでしょう。

スクラッチ製法×自宅改良型の開業に必要になる費用相場の内訳

スクラッチ製法×自宅改良型は、物件取得費や毎月の家賃が発生しないため、初期費用を抑えられる開業方式です。

浮いた資金をこだわりの内装や高性能な機材に充てることができ、地域密着型のパン屋を目指す人に向いています。しかし、居住スペースを店舗として使用するためには、保健所の許可基準を満たすための大規模なリフォームが必要となり、改装工事費がかさむ傾向にあります。

【スクラッチ製法×自宅改良型の開業資金の内訳】

項目 費用目安 内容・備考
物件取得費 0万円 自宅を使用するため不要。
改装工事費 300〜500万円 厨房と住居の区画分け、床の防水化、専用手洗い場の設置など。
厨房機器 150〜300万円 小型ミキサー、オーブンなど。スペースの制約で小型機が中心。
運転資金 50〜100万円 固定費が低いため、最低限の材料費と光熱費で済む。
合計 500〜900万円

自宅改装型の開業で注意すべきは法的なリスクです。住居専用地域(第一種低層住居専用地域など)では、店舗部分の床面積が50㎡以下であることや、延べ床面積の2分の1以下であることなど、建築基準法上の厳しい制限があります。

また、保健所の営業許可を取得するには、厨房内に手洗い専用のシンクや扉付きの収納など特定の設備が必須となるため、自宅をパン屋に改装する場合は設計段階から専門家に相談して準備を進めましょう。

ベイクオフ製法×自宅改良型の開業に必要になる費用相場の内訳

ベイクオフ製法×自宅改良型での開業は、パン作りの本格的な修行経験がない方でも自分の店を持って独立できるビジネスモデルです。

通常、原価率の高いベイクオフ製法は薄利になりがちですが、自宅を店舗に改装することで固定費を抑えることができるため、利益を手元に残すことができ、本業として生計を立てることが可能です。初期投資としても、テナント型のように数千万円をかけることなく、自宅の一部を改装するだけで済むため、借入金のリスクを抑えながらパン屋の開業を進められます。

【ベイクオフ製法×自宅改良型の開業資金の内訳】

項目 費用目安 内容・備考
物件取得費 0万円 自宅を使用するため不要。これが最大の収益メリット。
改装工事費 150〜300万円 厨房区画の仕切り、手洗い場の設置、床の防水化など。
厨房機器 100〜150万円 オーブン、ホイロ、冷凍ストッカーのみ。重装備は不要。
運転資金 50〜100万円 本業として軌道に乗るまでの半年分の生活費・仕入れ代。
合計 300〜550万円

このスタイルの強みは損益分岐点の低さにあります。テナント店では家賃20万円を稼ぐというプレッシャーがありますが、自宅開業なら運転資金に家賃が含まれず、売り上げに対する利益率が高くなるためです。

同じ自宅型のスクラッチ製法と比べると原価率で劣りますが、初期費用の低さでは勝るため、初期費用と利益率のバランスがベイクオフ製法×自宅改装型のメリットと言えるでしょう。

スクラッチ型×無店舗型の開業に必要になる費用相場の内訳

パン屋を開業するのに、必ずしも店舗を持つ必要はありません。シェアキッチンなどを利用してパンを製造し、ネットショップやイベント出店で販売する「スクラッチ製法×無店舗型」は、現代におけるリスクの低い開業スタイルです。

無店舗型は数千万円単位の開業資金を準備する必要がなく、自己資金の範囲内で小さく始められるため、本格的な独立を目指す前のテストマーケティングとして利用できます。初期費用のほとんどは「商品そのもの」と「販売ツール」に充てられるため、資金を無駄にするリスクが低いのが特徴です。

【スクラッチ製法×無店舗型の開業資金の内訳】

項目 費用目安 内容・備考
登録・契約費 5〜10万円 シェアキッチンの会員登録料、食品衛生責任者の資格取得費など。
EC・販促費 10〜30万円 BASE等のサイト開設、ロゴデザイン、ショップカード作成。
梱包・資材費 10〜20万円 通販用の箱、緩衝材、商品ラベルシール(ブランディングに直結)。
運転資金 20〜30万円 キッチン利用料(時間貸し)、イベント出店料、材料費。
合計 50〜100万円

このスタイルの留意点は、製造場所となるシェアキッチン選びです。パンを販売するためには、利用する施設が保健所の「菓子製造業許可」を取得している必要があります。

また、店舗という看板がない分、集客にはSNSでの発信力やパッケージデザインでの工夫が必要になります。内装費が浮いた分をロゴや梱包資材のデザイン費に投資し、世界観を作り込むことが重要となるでしょう。

パン屋開業で必要になる設備資金と運転資金

パン屋の開業に関わる資金は、店をオープンするまでに必要な「設備資金」と、オープン後の経営を支える「運転資金」の2種類に分類されます。

設備資金は、物件取得や内装工事、厨房機器の購入など、物理的な環境を整えるための初期投資です。一度支払えば終わる費用ですが、金額が大きいために融資を受ける際のメインとなる項目です。運転資金は、材料費や家賃、人件費など、店を存続させるために毎月発生し続ける経費です。

開業当初は売上が安定しないことが多いため、最低でも3ヶ月〜6ヶ月分の運転資金を手元に残しておくのが一般的です。開業の初期費用が抑えられる形式で開業しても、月々の運転資金が高額になり、事業を圧迫する可能性がある点は留意する必要があります。そのため、開業時に負担が大きい設備資金だけでなく、運転資金の相場も確認しておくようにしましょう。

パン屋開業で必要になる設備資金の相場

開業資金の大半を占めるのが設備資金であり、その内訳は「店舗物件・内装費」「厨房機器費」「什器費」の3つに大別されます。

【設備資金の内訳】

項目 費用の概要 変動のポイント
店舗に関わる費用 物件取得費、内装工事費、看板設置費など。 自宅なら抑えられるが、テナントなら数百万円。居抜きの可否も影響。
機材に関わる費用 オーブン、ミキサー、発酵機、冷蔵庫など。 スクラッチならフル装備、ベイクオフなら最小限で済む。
什器に関わる費用 陳列棚、レジ、トング、トレー、ユニフォームなど。 販売スタイル(対面販売かセルフか)によって必要数が変わる。

費用相場のおおよそは製造工程と店舗形式の組み合わせによって決まりますが、開業場所や既存設備などによって変動することが考えられます。たとえば、居抜き物件を活用できれば内装費や機材に関わる費用を抑えられるなど、状況によってかかる設備費用は大きく変わってきます。

そのため、おおよその開業相場以外にも、個別にかかる費用を確認しておくことが重要になります。自分のケースでは不要な設備投資を削ることで初期費用を抑えることも可能になるので、個別にかかる費用を確認しておくことをおすすめします。

店舗に関わる費用相場

パン屋開業に必要になる店舗に関わる費用は、物件を借りるための「取得費」と、店を作り上げる「内装工事費」の2つで構成されます。とくにパン屋を開業する場合は、一般的な飲食店よりも電気・ガスの容量や排気設備に高いスペックが求められるため、内装工事費が割高になる傾向にあるので注意が必要です。

【店舗に関わる費用相場】

項目 費用相場(20坪想定) 内容・備考
物件取得費 200〜400万円 保証金(家賃10ヶ月分〜)、礼金、仲介手数料など。自宅なら0円。
内装工事(スケルトン) 800〜1,200万円 何もない状態から工事。自由度は高いが、空調・給排水・電気・ガス全てを新設するため高額。
内装工事(居抜き) 300〜600万円 前の店の設備を流用。ただし、パン屋に必要なスペック(動力電気など)が足りない場合、追加工事が必要。
内装工事(自宅) 300〜500万円 居住用スペースを店舗用に改装。床の防水加工や、保健所基準の手洗い場設置などが必要。

物件取得費はテナントか自宅か、また内装工事費はゼロから作る「スケルトン物件」か前の店の設備が残る「居抜き物件」を利用するかで数百万円単位で変動します。テナント型でスケルトン物件を取得する場合は、店舗に関わる費用だけで1,000万円を超える費用が必要になるケースもあり得ます。

なお、居抜き物件での開業は一見お得に見えますが、元々がパン屋の居抜き物件は市場に少なく、元飲食店の物件の場合はオーブンやミキサーを動かすための「3相200Vの動力」や「10号以上のガス容量」が備わっていないケースがほとんどです。他業種の居抜きを検討する際は内見時に専門業者を同行させて「設備容量」を確認し、パン屋の規格に利用できるか事前に確認しておくことをおすすめします。

機材に関わる費用相場

パン屋の開業において、物件取得費と並んで資金を圧迫するのが厨房機器の購入費です。機材に関わる費用は選択した製法によって変動し、スクラッチ製法の場合は全ての機器を揃えるため500万円〜800万円近くかかりますが、ベイクオフ製法であれば主要な高額機器が不要となり、半額以下の200万円〜300万円程度に抑えることが可能になります。

【機材に関わる費用相場】

区分 機材名 用途 費用目安(新品) 必要性
共通
(どちらも必須)
オーブン パンを焼成する 200〜400万円 パン屋の心臓部。段数や性能で価格差大。
ホイロ 発酵を促進させる 50〜100万円 生地を膨らませる部屋。
コールドテーブル 作業台兼冷蔵庫 30〜50万円 成形作業などのスペース。
冷凍ストッカー 生地の保管 10〜30万円 ベイクオフでは特に大量に必要。
スクラッチ専用
(職人型のみ)
ミキサー 生地を捏ねる 100〜200万円 粉からグルテンを生成する必須機械。
ドゥコンディショナー 温度・湿度管理 100〜200万円 深夜労働を避けるための自動発酵機。
モルダー 生地を成形する 50〜100万円 ガス抜き・成形の効率化。

スクラッチ製法が高額になる主因は「ミキサー」と「ドゥコンディショナー」の有無です。とくにドゥコンディショナーは、前日に仕込んだ生地を翌朝まで低温管理し、設定した時間に発酵を完了させるための機械であり、これがないと職人は深夜から早朝まで発酵の見極めに拘束されることになります。

資金を節約するために中古品を検討するのも一つの手ですが、オーブンやミキサーなどの駆動系は故障リスクが高いため、メーカーのメンテナンス体制が整っているかを確認してから購入することが重要になるでしょう。

什器に関わる費用相場

パン屋の開業をする際には、トングやトレー、レジスターといった「什器」の購入費用が必要になります。大型機械に比べれば一つ一つは安価ですが、店舗型の場合は売り場から厨房の小物まで全てを揃える必要があり、総額にすると100万円〜200万円近くになることもあります。お客様が直接手に触れるトングやトレーは店の印象を左右する重要なアイテムであり、ここを安っぽくするとパンの価値まで下がって見えるため、予算を確保しておくべきポイントとも言えるでしょう。

【什器に関わる費用相場】

区分 項目 費用目安(一式) 備考
売り場 レジ・POSシステム 50〜100万円 最近は衛生面から自動釣銭機やキャッシュレス対応が必須。
陳列棚・ショーケース 30〜80万円 対面販売ならガラスケース、セルフなら棚が必要。
トング・トレー 5〜10万円 消耗品だが、デザイン性重視で選ぶべき「店の顔」。
厨房・その他 天板・番重(ばんじゅう) 20〜40万円 生地の保管・焼成に大量枚数が必要。
ユニフォーム 5〜10万円 清潔感とブランドイメージを統一する。
販促物 10〜20万円 ロゴ入りショップカード、プライスカード等。

とくに意外と費用がかかるのは、焼き上がったパンや発酵前の生地を入れておく「天板」や「番重(ばんじゅう)」の枚数です。パン屋は「焼く前」「焼いた後」「冷ます時」と常にスペースを必要とするため、想定の1.5倍〜2倍の枚数を用意しておかないと、ピーク時にパンを置く場所がなくなってしまい、作業をストップさせかねません。

その他、トングやトレーも一つ一つの費用は安くても、ピーク時には大量のストックが必要になるため、その総額は高額になりやすいです。一方でユニフォームや販促物などは初期投資としてはカットできる部分でもあるため、用意できる資金とあわせてどこまで什器を揃えるかは試算することをおすすめします。

パン屋開業で必要になる運転資金の相場

パン屋の運営にかかる運転資金は、大きく分けて「原材料費」「諸経費(家賃・光熱費)」「人件費」の3つで構成されます。一度支払えば終わりの設備資金とは異なり、運転資金は店を開けている限り毎月発生し続ける費用です

。開業時の資金計画では、どうしても内装や機材などの初期費用に目が行きがちですが、店舗を運営する上で重要なのは「毎月いくらのコストがかかり、いくら売れば利益が出るのか(損益分岐点)」を正確に把握することです。ここを見誤ると、開業できても毎月の支払いで資金が底をつき、赤字経営に陥ってしまうリスクがあります。

【運転資金の内訳(月商200万円を想定)】

項目 内容 月額目安
材料費(原価) 小麦粉、バター、包材など。 50〜90万円(売上の25〜45%)
諸経費 家賃、水道光熱費、広告宣伝費など。 40〜60万円(売上の20〜30%)
人件費 従業員の給与、交通費、福利厚生費。 50〜60万円(売上の25〜30%)
推奨確保額 開業時に用意すべき現金 450〜900万円(3〜6ヶ月分)

とくにパン屋は、小麦粉やバターなどの材料費を先に支払い、売上の回収が後になる「先出し」のビジネスモデルであるため、手元の現金(キャッシュフロー)の管理が生命線となります。オープン直後は売上が伸びても、リピーターが定着するまでの数ヶ月間は売上が落ち込むことが一般的です。

創業期の赤字期間を耐え抜くためにも、月商の見込み値の3〜6ヶ月分の運転資金を手元に残し、不測の事態でも店を維持できる体力をつけておくことをおすすめします。

材料費に関わる費用相場

パン屋の材料費は、選択した製法によって構造が異なるため、それに応じて開業前に用意すべき運転資金の額も変動します。粉から作るスクラッチ製法は原価率を低く抑えられますが、加工済みの冷凍生地を仕入れるベイクオフ製法は、メーカーの加工賃や物流費が上乗せされるため割高になるためです。月商200万円の店を想定した場合の、製法ごとの必要な準備金額は以下の通りです。

【製法別の材料費に関わる費用相場】

項目 スクラッチ製法(職人型) ベイクオフ製法(経営型)
原価率の目安 25〜30% 35〜45%
月間の仕入れ額
(月商200万円想定)
約50~60万円 約80〜90万円
開業時の確保目安
(3ヶ月分)
約150~180万円 約240〜270万円
特徴
  • 小麦粉等の素材が中心。
  • 安価だが加工の手間がかかる。
  • 冷凍生地が中心。
  • 高価だがロスが出にくい。

ベイクオフ製法を選択する場合、スクラッチ製法に比べて約1.5倍の材料費運転資金を用意しておく必要があります。これは、パンを売るために先に払うお金が多いため、手元の現金が減るスピードが速いことを意味します。

とくに開業当初は売上が安定しないため、ベイクオフ型の場合は設備投資を抑えた分、運転資金を厚めに確保しておかないと、仕入れ代金が払えずに黒字倒産するリスクが高まります。また、昨今の世界情勢により、小麦粉やバターなどの原材料価格は上昇傾向にあります。スクラッチ製法であっても、高級バターや国産小麦にこだわりすぎると原価率はすぐに跳ね上がるため、開業当初は原価率30%前後に着地させる商品設計が求められます。

経費に関わる費用相場

パン屋の経営において、材料費以上に利益を圧迫する隠れたコストが水道光熱費などの「諸経費」です。諸経費はさらに「家賃」「水道光熱費」「広告・消耗品費」の3項目に分けられ、合計すると売り上げの20%から30%を占める資金が必要になります。月商200万円を想定した場合の、主な経費の内訳は以下の通りです。

【パン屋の運営に必要な経費の相場】

項目 費用目安(月額) 適正比率・備考
家賃 20〜30万円 売上の10〜15%以内が適正ライン。
一等地のテナントなら広告費代わりと割り切る考え方も必要。
水道光熱費 14〜20万円 売上の7〜10%。
ガス(オーブン)と電気(冷凍ストッカー・空調)が大半を占める。
広告・消耗品費 5〜10万円 チラシ、SNS広告、通信費、洗剤などの雑費。
※包材費は材料費に含む場合が多い。

パン屋の運転資金でとくにかさむのが水道光熱費です。一般的な飲食店では水道光熱費は売上の5%程度と言われていますが、パン屋はオーブンを高温で稼働させ続け、かつ24時間体制で生地を保管する冷蔵・冷凍庫が必要なため、その比率は7%〜10%近くまで跳ね上がることがあります。

とくに注意が必要なのは、季節による電気代の変動です。夏場のパン屋の厨房はオーブンの排熱で40度を超える過酷な環境となるため、業務用の空調をフル稼働させる必要があり、電気代が冬場の1.5倍〜2倍に膨れ上がることも珍しくありません。

事業計画を立てる際は、光熱費を年間の平均値で見積もるのではなく、8月などの最も高い月を基準に資金を確保しておくことをおすすめします。そうすることで、予想外の出費によって資金のショートを防ぐことに繋がっていくでしょう。

人件費に関わる費用相場

パン屋の経営において、人件費は売上の25%〜30%程度が適正と言われていますが、その内訳は採用する製法によって大きく異なります。スクラッチ製法の場合、早朝から生地を仕込むための「職人(経験者)」が必須となるため、採用難易度が高く、給与水準も高くなりがちです。一方、ベイクオフ製法であれば、マニュアル化された作業が中心となるため、未経験のパート・アルバイトでも戦力化しやすく、採用コストと時給を抑えることが可能です。

【人件費に関わる費用相場】

運営スタイル 必要な人材 人件費の目安(月額) 採用難易度
スクラッチ(雇用型) 職人1名+販売補助 50〜70万円 高(技術者の確保が困難)
ベイクオフ(雇用型) パート・アルバイト2〜3名 30〜50万円 低(地域で採用しやすい)
ワンオペ(一人) 店主のみ 0円(自分の生活費) ―(体力が続くかが鍵)

ここで問題となるのが、「一人で開業できるか(ワンオペ)」という点です。スクラッチ製法で製造と販売を一人でこなす場合、物理的な限界から売上は日商4〜5万円が天井となり、原料費や経費を払うと手元に利益がほとんど残らないどころか、赤字になる可能性が出てきます。

もし「人を雇う資金はないが、利益は出したい」と考えるなら、製造の手間を省けるベイクオフ製法を選んで販売に注力するか、あるいは「週3日営業の専門店」にして仕込み時間を確保するなど、一般的なパン屋とは異なる戦い方を選ぶ必要があります。

開業事例を参考にしてみる

開業資金の目安を算出するときは、実際のパン屋の開業事例を参考にすることも方法のひとつです。開業事例を参考にすることにより、資金計画を立てるときのヒントを得られる可能性があるため、開業資金の目安を算出するときは開業事例を参考にすることも検討してみましょう。

たとえば、日本政策金融公庫の「Story-全国創業事例集-」では、パン屋の開業事例が掲載されています。日本政策金融公庫は全国に支店があるため、「移住して開業した事例」「Uターンして開業した事例」など、さまざまな地域での開業事例を参考にすることができます。

その他には、パン屋を開業した人の話を聞いてみる方法もあります。「最寄りにあるパン屋」や「行きつけのパン屋」など、実際にパン屋を開業した人の話を聞いてみる方法もあるため、開業資金の目安を算出するときは選択肢のひとつとして検討してみましょう。

まとめ

パン屋の開業資金は、一般的に1,000万円を超えると言われますが、これは全ての理想を叶えた場合の金額です。製法を工夫したり、店舗のあり方を見直したりすることで、初期費用は数百万円台まで抑えることが可能です。

もし手元の資金が足りないと感じたら、無理に融資を増やすのではなく、開業スタイルそのものを柔軟に変更してみましょう。職人として味を追求するなら「自宅開業」で固定費を削る、ビジネスとして成功させたいなら「ベイクオフ」で投資を抑えるなど、成功へのルートは一つではありません。

まずは、ご自身が目指すパン屋の姿と、用意できる自己資金を照らし合わせ、無理のない事業計画を立てることから始めてください。

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この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
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