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ケーキ屋の開業に必要な届出を解説
ケーキ屋を開業する際は、役所に届出を提出することになります。届出を提出できていないと罰則を受けることもあるので、期日内に漏れなく届出を提出できるように準備する必要があります。
当記事では、ケーキ屋の開業に必要な届出を「すべてのケーキ屋に必要なもの」「状況によって必要なるもの」に分けて解説します。届出の一覧表も用意しているため、ケーキ屋を開業する予定の人は参考にしてみてください。
すべてのケーキ屋が必要となる届出
ケーキ屋を開業するすべての人に必要となる届出には、税金に関わる届出と防災に関わる届出があります。それぞれの届出で提出するタイミングや場所が異なるため、ひとつずつ確認しておきましょう。
【すべての人が提出する届出】
- 開業届
- 所得税の青色申告承認申請書
- 事業開始等申告書
- 火を使用する設備等の設備届出書
- 防火対象物使用開始届出書
たとえば「開業届」は、開業後に税務署へ提出する届出です。一方で「火を使用する設備等の設備届出書」は、開業前に消防署へ提出する届出で、それぞれの届出によって、提出する時期や管轄が異なることがわかります。
ケーキ屋を開業する際、必ず提出しなければならない届出が複数あります。ケーキ屋を開業したい人は、それぞれの届出の「提出先(管轄)」「期限」「申請方法」を確認しておきましょう。
開業届
開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業届出書)は、所得税法に基づき、事業を開始したことを税務署に知らせるための書類です。開業届は、ケーキ屋を開業するすべての人が提出することになるので、開業届の概要を確認しておきましょう。
【開業届の概要】
項目 | 概要 |
提出場所 | 開業予定地を管轄する税務署 |
期限 | 開業日から1か月以内 |
申請方法 | 窓口へ持参、郵送、電子申請 |
必要書類 |
|
フォーマット | 国税庁の公式サイト |
店名で銀行口座を開設するときや融資の申請をするときなど、個人事業主として手続きをする際は、個人事業主であることの証明として開業届を利用します。そのため、窓口や郵送で開業届を申請するときは、提出用と控え用で2部の申請書を用意し「控え」を手元に残しておきます。
開業届は、個人事業主としてケーキ屋を開業するすべての人に必要な届出です。控えを再発行するには追加で時間もお金もかかるので、申請手続きをする際は忘れずに開業届の控えを受け取るようにしましょう。
なお、法人としてケーキ屋を開業する際は、開業届は必要ありません。開業届の代わりに法人設立届出書や源泉所得税関係の届出書が必要となるため、国税庁の公式サイトで必要な届出を確認しておいてください。
所得税の青色申告承認申請書
所得税の青色申告承認申請書は、所得税法に基づき、青色申告で納税を希望することを税務署に知らせるための書類です。青色申告承認申請書は、青色申告で納税を希望するすべての人が提出することになるので、青色申告承認申請書の概要を確認しておきましょう。
【所得税の青色申告承認申請書の概要】
項目 | 概要 |
提出場所 | 開業予定地を管轄する税務署 |
期限 | 青色申告承認申請書による申告をしようとする年の3月15日まで |
申請方法 | 窓口へ持参、郵送、電子申請 |
必要書類 | 所得税の青色申告承認申請書 |
フォーマット | 国税庁の公式サイト |
青色申告は何かしらの事業をする人のみが利用できる納税方法です。そのため、所得税の青色申告承認申請書には、店名や所在地など、事業実態がある旨を記入することになります。
所得税の青色申告承認申請書は、個人事業主として開業する人が提出する届出です。手続きを期日内にしないと青色申告で得られる控除が受けられなくなるため、忘れずに届出を提出しましょう。
事業開始等申告書
事業開始等申告書は、各都道府県の税条例に基づき、事業を開始したことを都道府県税事務所に知らせるための書類です。都道府県別に手続きの概要が異なるため、事業をする予定の地域の税事務所で手続きの仕方を確認しましょう。
たとえば、事業開始等申告書の提出期限は、東京都で「事業開始日から15日以内」、千葉県で「事業開始日から1ヶ月以内」と定められています。都道府県によって提出期限や申請書のフォーマットが異なるため、開業予定地のルールを確認する必要があります。
事業開始等申告書は都道府県によって設定されているため「個人事業開業・休業・廃業届出書」「個人の事業の開始等の報告書」など、名称が異なります。「都道府県名+事業開始等申告書」と検索すれば税事務所の公式サイトを見つけられるため、申請手続きの内容を確認しましょう。
火を使用する設備等の設置届出書
火を使用する設備等の設置届出書は、消防法に基づき、火を使用する設備を使うことを消防署に知らせるための書類です。ケーキ屋では、ガスオーブンやコンロを使用するため、火を使用する設備等の設置届出書を提出する必要があります。
【火を使用する設備等の設置届出書の概要】
項目 | 概要 |
提出場所 | 開業予定地を管轄する消防署 |
期限 | 設置する7日前まで |
申請方法 | 窓口へ持参、郵送、電子申請 |
必要書類 |
|
フォーマット | 各都道府県の消防庁公式サイト |
たとえば、ガスオーブンやコンロを設置する際は、火事にならないように火を使う設備の配置や換気方法などの厨房設備に関わる基準を守らなければなりません。届出の提出後に、基準を守っているかどうかを消防署に検査されるので、届け出た通りに設備を配置しておく必要があります。
火を使用する設備等の設置届出書は、ケーキ屋を開業する際に必ず提出することになる届出です。消防法に違反すると罰則を受ける可能性もあるので、設備を購入する前に基準を確認しておきましょう。
防火対象物使用開始届出書
防火対象物使用開始届出書は、消防法に基づき、飲食店として建物を使用することを消防署に知らせるための書類です。飲食店を開業する際に届け出なければならないため、ケーキ屋を開業する場合は必ず防火対象物使用開始届出書を提出することになります。
【火を使用する設備等の設置届出書の概要】
項目 | 概要 |
提出場所 | 開業予定地を管轄する消防署 |
期限 | 建物を使用する7日前まで |
申請方法 | 窓口へ持参、郵送、電子申請 |
必要書類 |
|
フォーマット | 各都道府県の消防庁公式サイト |
たとえば、空いている建物やテナントスペースなどの物件を工事してケーキ屋を開業する人は届出が必要です。また、既に飲食店として利用している物件であっても、工事をする場合は届出が必要になります。
ケーキ屋を開業する場合は、ほぼすべての人が防火対象物使用開始届出書を提出することになります。工事業者ではなく事業者自身が提出しなければならない届出のため、各都道府県の消防庁公式サイトで提出方法を確認しましょう。
なお、居抜きで全く工事を行わず、設備も変えない場合は防火対象物使用開始届出書の提出は必要ありません。少しでも工事を行う場合は防火対象物使用開始届出書の提出が必要になるため、期限内に提出できるよう準備してみてください。
ケーキ屋の条件次第で必要となる届出
ケーキ屋を開業する場合、想定しているケーキ屋の条件次第で必要となる届出があります。「建物の規模」や「従業員の有無」など、ケーキ屋を運営するイメージをしながら届出の条件に当てはまるかどうかを確認していきましょう。
【条件】
- 従業員を雇う場合
- 建物を工事して入居する場合
- 建物の収容人数が30人以上の場合
たとえば、客席が25席以上あるケーキ屋を開く場合、「従業員を雇う」ために必要な届出と「建物の収容人数が30以上の場合」に必要な届出の両方を提出することになります。その際、入居する建物が居抜きでない人は「建物を工事して入居する場合」の届出も必要です。
開業するケーキ屋の条件次第で必要な届出は変わります。当てはまるすべての条件の届出を期限内に提出できるよう、準備しておきましょう。
従業員を雇うときに必要な届出
従業員を雇うときに必要な届出は、雇う従業員が「家族」か「家族以外」かの属性によって変わります。「家族」「家族以外」の場合に分けて必要になる書類を紹介するので、それぞれの属性にあわせて必要になる届出を確認しておきましょう。
【従業員を雇う際に必要な届出】
項目 | 提出先 | 期限 |
共通 | ||
給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 開設、移転又は廃止の事実があった日から1か月以内 |
家族を従業員として雇う場合 | ||
青色事業専従者給与に関する届出 | 税務署 | 申告をしようとする年の3月15日まで |
他人を従業員として雇う場合 | ||
労働保険概算保険料申告書 | ・労働基準監督署 ・都道府県労働局 ・所定の金融機関 |
従業員雇用開始の翌日から50日以内 |
保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 法律上両者の間で保険関係が成立した日の翌日から起算して、10日以内 |
雇用保険適用事業所設置届 | 管轄のハローワーク窓口またはハローワークインターネットサービス | 適用事業に該当(労働者を雇用する事業を開始)した日の翌日 から起算して 10日以内 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 管轄のハローワーク窓口またはハローワークインターネットサービス | 被保険者となった日の属する月の翌月10日まで |
社会保険 | 日本年金機構 | 雇用開始から5日以内 |
たとえば、開業直後は雇用している従業員が家族のみだった場合「給与支払事務所等の開設届出書」「青色事業専従者給与に関する届出」を届け出ます。その後、家族以外の従業員も雇うことになった場合は、家族以外の従業員を雇うタイミングで他の届出も出すことになります。
従業員を雇うときに必要な届出は従業員の属性によって変わります。従業員を雇うタイミングで届出を提出することを覚えておきましょう。
建物を工事して入居する場合に必要な届出
建物を工事して入居する場合は「防火対象物工事等計画届出書」が必要です。空き店舗や居抜きの物件を改装工事してケーキ屋を開業する予定の人は、防火対象物工事等計画届出書の概要を確認しておきましょう。
【防火対象物工事等計画届出書の概要】
項目 | 概要 |
提出場所 | 開業予定地を管轄する消防署 |
期限 | 工事開始の7日前まで |
申請方法 | 窓口へ持参、郵送、電子申請 |
必要書類 |
|
フォーマット | 各都道府県の消防庁公式サイト |
たとえば、営業許可をとるために間取りを変更する場合は、防火対象物工事等計画届出書を提出することになります。一方で、壁や柱など建物の主要部を半分以上変更する工事の場合は、別途、建築確認申請手続きをするため防火対象物工事等計画届出書を提出する必要はありません。
物件の内装工事をしてケーキ屋を開業する場合は防火対象物工事等計画届出書を提出することになります。開業前の忙しい時期に事業者自身が申請しなければならないため、余裕をもって準備をすすめましょう。
建物の収容人数が30人以上で必要な届出
建物の収容人数が30人以上の場合は、消防法に基づいて「防火管理者選任届出書」を提出することになります。そのため、飲食スペースのあるケーキ屋を開業する予定の人は、防火管理者選任届出書の概要を確認しておきましょう。
【防火管理者選任届出書の概要】
項目 | 概要 |
提出場所 | 開業予定地を管轄する消防署 |
期限 | 期限なし(目安は開業日まで) |
申請方法 | 窓口へ持参、郵送、電子申請 |
必要書類 |
|
フォーマット | 各都道府県の消防庁公式サイト |
たとえば、客席が25席あり従業員が5名で働く場合、収容人数が30人になるため、防火管理者選任届出書を提出することになります。ケーキ屋の1坪あたりの客席数を1.5〜2席と考えると、店舗面積が20坪程度であれば防火管理責任者選任届出書を提出する対象となる可能性があります。
飲食スペースのあるケーキ屋を開業する場合、規模によっては防火管理者選任届出書が必要になります。物件が決まったら大きさを確認して防火管理者選任届出書が必要かどうかを検討しましょう。
なお、防火管理責任者の資格の種類には、店舗面積が「300m²以上の甲種」と「300m²未満の乙種」があります。開業する予定の物件に合わせて防火管理責任者の資格要件も確認しておきましょう。
ケーキ屋を開業するときの届出の一覧表
ケーキ屋の開業における届出の一覧表を用意しました。ケーキ屋の開業準備をしている人は参考にしてみてください。
【届出の一覧】
項目 | 提出先 | 提出期限 | 提出条件 |
開業届 | 税務署 | 事業開始日から1か月以内 | 必須 |
事業開始等申告書 | 各都道府県税事務所 | 各都道府県が定める期日 | 必須 |
火を使用する設備等の設備届出書 | 開業予定地を管轄する消防署 | 設置する7日前まで | 必須 |
防火対象物使用開始届出書 | 開業予定地を管轄する消防署 | 使用開始の7日前まで | 必須 |
所得税の青色申告承認申請書 | 税務署 | 事業開始日から2か月以内 | 必須 |
青色事業専従者給与に関する届出書 | 税務署 | 事業開始日から2か月以内 | 家族従業員の給与を経費にする場合は必須 |
給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 給与支払い事務所を設けた日から1か月以内 | 従業員を雇う場合は必須 |
保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 従業員雇用開始の翌日から10日以内 | 従業員を雇う場合は必須 |
労働保険概算保険料申告書 | ・労働基準監督署 ・都道府県労働局 ・所定の金融機関 |
従業員雇用開始の翌日から50日以内 | 従業員を雇う場合は必須 |
雇用保険適用事業所設置届 | 公共職業安定所 | 従業員雇用開始の翌日から10日以内 | 雇用保険が適用される従業員を雇う場合は必須 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 公共職業安定所 | 従業員を雇用した日の翌月10日まで | 雇用保険が適用される従業員を雇う場合は必須 |
防火対象物工事等計画届出書 | 開業予定地を管轄する消防署 | 工事開始の7日前まで | 内装工事をする場合は必須 |
防火管理者選任届出書 | 開業予定地を管轄する消防署 | 期限なし(目安は開業日まで) | 防火管理者の選任が義務付けられている場合は必須 |
想定しているケーキ屋の条件次第では、その他の届出も必要となる可能性があります。今回紹介した届出に加え、その他の届出も必要になることもあるため、ケーキ屋を開業予定の人は各自治体の担当者と相談しながら手続きを進めましょう。
まとめ
ケーキ屋の開業における届出は「すべてのケーキ屋が必要となる届出」と「ケーキ屋の条件次第で必要となる届出」に分けられます。とくに、条件次第となる届出は想定しているケーキ屋にもよるため、希望条件と照らし合わせながら手続きを進めることを検討してみましょう。
ケーキ屋の届出に関する書類のフォーマットや申請要件は自治体ごとに異なる可能性があります。法的根拠が改正されることもあるため、それぞれの届出の情報が知りたい人は開業予定地を管轄する自治体に問い合わせることを検討してみましょう。
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この記事の監修者
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
田原 広一(たはら こういち)
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
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