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個人タクシーを開業するときの条件を解説

個人タクシーを開業する場合は、許可や資格など複数の条件を満たす必要があります。個人タクシーは道路を管轄する運輸局により様々な条件が設定されていると同時に、道路交通法や都市計画法など複数の法律を守る必要があるためです。

当記事では、個人タクシーの開業時に満たすべき10種類の条件を解説します。タクシーの運転手で個人事業主になる方法は「新規取得」や「譲渡譲受」などの3つがありますが、開業時の条件は共通しているので、個人タクシーの条件が知りたい人は当記事を参考にしてください。

個人タクシー開業の主な条件は10種類ある

個人タクシーを開業する際に必要な条件は、主に10種類あります。個人タクシーを開業するには、道路運送法で定められた「一般乗用旅客自動車運送事業」の許可が必要で、許可の主な条件が10種類あるためです。

【一般乗用旅客自動車運送事業(個人タクシー)の許可の条件】

①資金が160万円以上ある
②普通第二種免許を取得する
③運転に支障がなく健康である
④申請日時点で65歳未満である
⑤営業区域内に住所があり、申請日前後1年間で継続して1年以上居住している
⑥運転手の経歴が10年以上ある
⑦法令違反の場合は過去5年で処分が終了している
⑧「一般乗用旅客自動車運送事業経営適正化審査(試験)」を受けて合格する
⑨自己が使用権原をもつ自動車を保有する
⑩申請する営業区域内にあり、営業所から2km以内にある車庫を確保できる見通しがある

たとえば、営業区域の場合、タクシー事業を始めたい地域がどこの営業区域となるか確認し、営業区域内に営業所(自宅)をもつ必要があります。運輸局の定める審査基準には「営業所」という項目があり、使用権原をもつ営業所があることが条件に含まれるためです。

また、試験の場合、個人タクシーを開業するなら、一般乗合旅客自動車運送事の許可に申請するだけでなく、申請に伴う試験に合格する必要があります。一般的には申請をしてから試験を受ける流れになりますが、日程や申請方法によっては受験のあとに申請する場合もあります。

個人タクシーを開業する人は運輸局が決めた条件(審査基準)を満たす必要があり、条件を満たすと一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取得できます。これから個人タクシーを開業したい人は、各条件の内容を確認し、自分が個人タクシーを開業できるか判断してみましょう。

なお、個人事業主として介護タクシーや買い物代行などを開業する人は、基本的には同じ条件です。別に研修や資格を取る場合もありますが、特定の用途で使用されるタクシー事業を開業したい人も、まずは10種類の条件を満たせるか確認してみてください。

試験を受ける前に満たすべき条件

10種類の条件のうち、一部の条件は一般乗用旅客自動車運送事業の試験を受ける前に満たす必要があります。試験に申請する際、試験の実施機関「運輸局支部」が試験の申請者は条件を満たしているのかを確認するからです。

【一般乗用旅客自動車運送事業(個人タクシー)の許可の条件と概要】

項目 概要
①資金が160万円以上ある
※地域によっては140万円以上となる
設備資金に80万円以上、運転資金に80万円以上が必要となり、許可の申請時に残高証明書を提出する。
※地域によっては設備資金に70万円以上、運転資金に70万円以上となる
②普通第二種免許を取得する 既に持っている場合は、有効期限が切れていないことを確認する。
③運転に支障がなく健康である 許可の申請時に、4か月以内に発行された健康診断書を提出する。
④申請日時点で65歳未満である 現在法人でタクシー運転手をしている場合は、65歳の誕生日までに申請する必要がある。
⑤営業区域内に住所がある 運輸局は営業区域ごとに許可を出すため、どの営業区域で開業するのかを決めてから許可の申請をする。
⑥運転手の経歴が10年以上ある 必要な運転手の経歴はタクシー運転手の年齢により異なるので確認する。
⑦法令違反の場合は過去5年で処分が終了している 運転に関する法令違反の場合、許可の申請日前3年間は無違反であるかを確認する。

たとえば、運転に支障がない健康の場合、許可の申請時に証拠書類として健康診断書の提出し、健康であることを証明しなければなりません。健康診断の際、医師による胸部疾患、心臓疾患などの診断を受け、運転に支障がないことを証明できれば問題ありません。

また、法令違反をしたことがある人の場合は、許可の申請日から起算して5年以内に処分が終了していれば試験を受けられます。たとえば、2024年9月に禁煙地区の路上でタバコを吸い、10月に罰金を支払った場合は、10月の支払い日以降に許可を申請して試験を受けられます。

個人タクシーの開業で必要な条件の一部は、一般乗用旅客自動車運送事業の試験に申し込む際に確認されます。これから個人タクシーの開業を考えている人は、国土交通省の資料「申請に対する処分に関する処理方針」を参考に、試験を受けるまでに条件を満たすようにしましょう。

36歳以上はタクシー以外の運転経歴も認められる

36歳以上の人の場合、条件の一つである運転経歴はタクシー運転手以外の場合でも認められることがあります。なぜなら、運転経歴の条件は運転手が36歳以上の場合、トラックやバスの運転手の経験も運転経歴に含めることができるからです。

たとえば、許可の申請日に申請者の年齢が40歳以上65歳未満の場合、10年以下のタクシー運転歴でも運転経歴の条件は満たします。申請日から遡る3年間のうち、2年間タクシー運転手として勤務していれば、残りの8年はトラックやバスの運転歴でも申請が可能となるためです。

一方、許可の申請日に運転手の年齢が35歳以上40歳未満の場合は、継続して5年以上区域内でタクシーの運転を職業とした経験が必要です。年齢が35歳以上40歳未満の人の条件は10年間の運転経歴となり、そのうち5年以上はタクシー運転手としての経験が必要となるためです。

36歳以上で他の業種の運転経験があれば、法人タクシーでの運転経験が10年なくても許可申請できる場合があります。詳細は、一般社団法人東京都個人タクシー協会の公式サイトの「運転経歴の例示」を参考にしてください。

人口が概ね30万人以上ない都市では条件が緩和される

人口が概ね30万人以上ない都市では、条件が緩和されます。人口が概ね30万人以上ない都市の場合、タクシー運転手の数が減少していてタクシー輸送の担い手を確保する必要があるため、一部の項目で別の条件が設定されているからです。

【人口が概ね30万人以上の都市を含まない営業区域における別の条件】

  • 申請日時点で80歳未満である
  • 営業区域内に住所があり、申請日前後1年間で継続して1年以上居住している実態がなくても認められる
  • 運転手の経歴は、申請日以前に1年以上の個人タクシーの経験があれば認められる

たとえば、千葉県千葉市の場合、年齢が70歳の人は一般乗用旅客自動車運送事業許可に申請できません。しかし、千葉県長生郡睦沢町、埼玉県秩父郡横瀬町などの運輸局が特別に認めた営業区域では、他の条件を満たせば70歳でも許可の申請が可能です。

また、現在68歳の法人タクシー運転手の場合、申請日以前に1年間の個人タクシーの経験があれば運転経歴の条件を満たします。現在勤めているタクシー会社と連絡が取れる状態にあり、個人タクシー事業者団体とも連絡を取ることで個人タクシーの経験を積むことが可能です。

個人タクシーを開業する際の条件は各地域の運輸局で決めるため、開業場所によっては条件が一部異なります。タクシーの運転手不足により現在の条件が変わることもあるので、開業を希望する際は営業区域を管轄する運輸局で最新の情報を確認するようにしましょう。

譲渡譲受と相続で開業する場合は取引する相手の条件もある

個人タクシーの許可を得る方法には「新規許可」「譲渡譲受」「相続」の方法がありますが、「譲渡譲受」「相続」の場合は取引する相手の条件もあります。個人タクシーを「譲渡譲受」または「相続」で開業する人は取引する相手の条件も確認しておきましょう。

【譲渡譲受、相続で個人タクシー業を引き継がれる人の条件】

項目 概要
譲渡譲受 個人タクシー事業を譲渡する人が以下のいずれかに当てはまること
① 年齢が65歳以上75歳未満である
②年齢が65歳未満で、傷病などにより業務ができない正当な理由がある
③年齢が65歳未満で、20年以上個人タクシー事業を行っている
相続 相続の対象となる個人タクシー事業を行っていた人の死亡時における年齢が75歳未満である

※運輸局により条件が異なる場合があります

現在は総量規制で個人タクシーの登録を制限しているため、新規許可で申請できない地域があります。新規許可を受け付けない営業区域で開業する場合は、個人タクシーの協会や組合に所属し、譲渡してくれる人を紹介してもらうことになります。

個人タクシーを開業する際の条件は、どの申請者にも課される10種類の条件の他、申請方法により異なる追加の条件があります。一般乗用旅客自動車運送事業の許可の申請方法が決まったら、追加の条件も忘れずに確認するようにしましょう。

なお、以前は新規許可の条件に「事業者乗務証を車内に掲示する」という条件がありました。しかし、個人情報保護の観点から2023年8月1日に廃止され、現在は個人タクシーの開業で事業者乗務証の掲示をする必要はないので覚えておきましょう。

試験を受ける際に満たすべき条件

試験を受ける際に満たす条件として、許可の申請をする日から起算した2年以内に合格することが挙げられます。一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取得できても、許可を取得する日から2年以内に試験に合格しない場合は、許可が無効となるためです。

【許可の申請日と事前試験と事後試験の合格日の例】

事前試験の申請の順番 事後試験の申請の順番
①2024年11月1日に試験に申請する ①2024年11月1日に許可に申請する
②2024年11月21日に試験に合格する ②2025年2月25日に許可を取得する
③2024年11月25日に許可に申請する ③試験に2月26日に申請する
④2025年2月25日に許可を取得する ④3月25日に試験に合格する

個人タクシーの試験は毎年、3月、7月、11月の年3回実施されています。許可の取得と試験のタイミングが合えば最短5か月未満で個人タクシーの開業が可能ですが、許可を得たあとにすぐ受験できない場合は個人タクシーの開業に半年以上かかります。

個人タクシーの開業で一般乗用旅客自動車運送事業許可に申請する場合は、許可に関連する試験にも申請し、許可の申請から2年以内に合格する必要があります。試験の募集時期は年に3回なので、許可の申請をする際は試験の勉強時間を確保したうえで許可に申請するようにしましょう。

なお、試験に合格して許可を取得した場合、許可の期限は原則3年間です。ただし、無事故無違反の人は5年間、法令違反のある人は3年間と個人差があるので、試験に合格して許可を取得した際は、いつまで有効な許可なのか許可期限を確認してください。

個人タクシーの試験は条件が緩和された

個人タクシーの試験は条件が緩和され、東京都と神奈川県のタクシーセンターでは令和6年2月29日に地理試験が廃止されました。令和6年5月1日には国土交通省で全国的に地理試験撤廃の公示が出されたため、これから個人タクシーを開業する人が受ける試験は法令試験のみとなります。

【関東運輸局での試験の条件】

地理試験 法令試験
令和6年5月14日から 免除 有り
令和6年5月13日まで 有り

  • 申請する営業区域の地名、道路、建造物、駅名
  • 目的地への最短距離、運賃、所要時間など
  • 運転に必要な法律の知識
  • 交通事故を防ぐ知識、発生時の対応に関する知識
  • さまざな乗客への対応方法

令和6年5月13日までの場合、区域内で法人タクシー運転種の経験が10年以上ある人は地理試験の免除制度がありました。しかし、令和6年5月14日からは地理試験が廃止されたため、地理試験の免除制度もなくなりました。

タクシーの地理試験が撤廃されたため、これから個人タクシーの開業を目指す人にとっては令和5年までの制度と比べて条件が有利になりました。個人タクシーを開業したいものの、試験がネックで開業をためらっていた人は、改めて個人タクシーの開業を検討してみてください。

なお、地理試験が撤廃された日付は地域によって異なり、2024年5月1日や2月29日などがあります。地理試験の撤廃は東京タクシーセンターと神奈川タクシーセンターで先行して行われ、その後、他の地域でも免除となったため、地域差があることに留意しましょう。

試験に合格した後に満たすべき条件

一般乗用旅客自動車運送事業の試験に合格した後に満たすべき条件として、自動車と車庫に関する条件があります。試験に合格して許可を取得する際、条件を満たす自動車と車庫を持つと証明する書類を提出する必要があるためです。

【試験合格後の手続きで満たすべき自動車と車庫の条件】

項目 条件
自動車
  • 自分が使用権原をもつ
  • 使用する自動車は1人につき一台のみで、他の者に使用させない
  • 自動車の両側面に「個人タクシー」と表示する
車庫
  • 申請する営業区域内にあり、営業所から2km以内にある
  • 自動車の全体を収容できる
  • 隣接する区域と明確に区分されている
  • 土地、建物について、3年以上の使用権原を有する
  •  建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等の関係法令に抵触しない
  • 計画する事業用自動車の出入りに支障がなく、前面道路が車両制限令に抵触しない

自動車に関する条件の1つは使用権原をもつことで、使用権原は所有権ではありません。タクシーに使う自動車が他人の自動車だとしても、一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取得する人が使用できる権利を持つならば、使用権原の条件は満たせます。

車庫に関する条件は、道路や都市計画に関わるため複数あります。タクシーの審査基準において営業所とは自宅のことですが、許可を受ける際に申請する車庫は自宅から2km以内にあり、3年以上の使用権原をもつ必要があります。

一般乗用旅客自動車運送事業の試験に合格した後は、許可を取得するためにさまざまな手続きを行います。その際、条件を満たした自動車と車庫があると書面で証明する必要があるので、個人タクシーを開業する際は、あらかじめ自動車と車庫の条件を確認しておきましょう。

まとめ

個人タクシーを開業する人は、一般乗用旅客自動車運送事業の許可を取得しないと開業できないため、許可の条件を満たす必要があります。許可の条件は主に10種類あり、許可の申請時に160万円以上の資金があること、年齢が65歳未満であること、などの条件があります。

条件のひとつである運転経歴は、許可に申請する時点の年齢で条件が変わるため、注意が必要です。35歳未満の場合は10年以上法人でタクシーハイヤー運転手をした経歴が必要ですが、35歳以上の場合はトラックやバスなどの運転も運転経歴としてみなされるためです。

個人タクシーの開業にはさまざまな条件がありますが、令和6年5月に国土交通省が公示を出したことにより、地理試験が正式に廃止されました。試験における条件が緩和されたので、個人タクシー開業を検討している人は、地理試験が廃止されたことも含め開業を検討してみましょう。

この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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