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飲食(飲食店・外食・デリバリー)

バーの開業に必要な資格を解説

バーを開業する際は、さまざまな準備を決められた期間内で同時に進めていくことが求められます。そのなかで「資格の取得」は、準備しておく重要事項の1つです。また、開業時には「必要となる資格」と「状況によって必要となる資格」があります。

当記事では、バーの開業に必要な資格を解説します。経営するバーのコンセプトによっては活かせる資格の情報も紹介するため、バーの開業を目指す人は参考にしてみてください。

バーの開業には食品衛生責任者の資格が必要

バーの開業には「食品衛生責任者」の資格が必要です。飲食店を含む食品関係の営業を行う場合は食品衛生法により、食品衛生責任者を各店舗に配置することが義務付けられているためです。

食品衛生責任者は、店舗の衛生管理および従業員の衛生教育について必要な措置を実施し、食品の安全確保や食中毒のリスクを最小限に抑える重要な役割を担います。

たとえば、店舗の設備や備品、食品などの衛生を確認し、不衛生な箇所がある場合は改善にすることになります。そのため、バーでは酒類、食品の保管方法や冷蔵・冷凍の温度も定期的に確認し、食中毒や異物混入などの事故を未然に防止するための管理、運営が求められます。

バーの開業には「食品衛生責任者」の資格が必要です。食品衛生責任者の資格は全国共通のため、どの都道府県で取得しても全国で飲食店を開業できます。ただし、資格取得の際は、受講者の勤務地や居住地での受講が定められているため、受講資格を確認しておきましょう。

なお、食品衛生責任者とよく似た資格で「食品衛生管理者」という資格があります。食品衛生管理者は、特定の食品の製造や加工をする人に必要な資格であり、バーの開業には不要です。食品衛生責任者とは異なる資格なので、混同しないように留意しておきましょう。

食品衛生責任者の資格の取得方法

食品衛生責任者の資格の取得方法は、講習を受講する方法と、調理師や栄養士などの資格を持つことで食品衛生責任者の資格の取得を免除される方法の2つです。食品衛生責任者の資格の取得を免除される資格を持っていない人は「食品衛生責任者養成講習」を受講しましょう。

【食品衛生責任者養成講習会の概要】

項目 概要
講習資格 17歳以上(地域によって現役高校生が受講不可の場合あり)
・外国人の場合は在留カード・特別永住者を持っている人に限る
講習科目 食品衛生学、食品衛生法、公衆衛生学
講習時間 ・食品衛生学(2時間)・食品衛生法(3時間)・公衆衛生学(1時間)
・地域によって簡単な終了テスト有
講習費用 10,000円~12,000円程度(都道府県や主催者によって異なる)
講習形式 会場での集合型講習会、e-ラーニング型養成講習会

集合型講習の受講後は、学んだ内容の確認テストを行い、講習会の最後に修了証として食品衛生手帳が配布されます。また、オンラインで受講した場合の終了証は、講習終了後10日以内に記載した住所へ郵送されます。

バーの開業に必要な食品衛生責任者の資格は、食品衛生責任者養成講習会を受講することで取得できます。また、栄養士や調理師、製菓衛生士などの資格を持っている人は、その免許で食品衛生責任者として認められるため、受講が免除となります。

なお、集合型講習の受講には、事前の予約が必要です。予約方法は、電話やインターネットなどで申し込みます。その際、東京都や大阪府など人口の多い地域では、1ヶ月~3ヶ月の予約が埋まってしまっている場合があるため、開業前に余裕を持って予約しましょう。

経営する店舗の状況により防火管理者の資格が必要

バーの開業には店舗の収容人数の状況により「防火管理者」の資格が必要です。消防法の規定により、対象となる店舗には「防火管理者」の有資格者を配置することが義務付けられているためです。

【防火管理者の種類】

項目 店舗の状況
甲種防火管理者 店舗の収容人数が30人以上かつ店舗の延床面積が300㎡以上
乙種防火管理者 店舗の収容人数が30人以上かつ店舗の延べ床面積が300㎡未満

防火管理者の配置が必要になるのは、店舗の収容人数が30人以上になる場合です。30人とは客数だけではなく、すべての従業員を含む数を示します。また、防火管理者の資格は、店舗の規模により「甲種」と「乙種」の2種類に分けられています。

防火管理者の役割は、火災の発生を防止し、万一火災が生じた場合には被害を最小限にとどめるための対策を立て、実行することです。人命に関わる重要な役割を担うため、防火管理者の資格は、店舗に常駐する経営者や店長などの責任者が取得するようにしましょう。

なお、テナントビルに入居するバーの場合、ビル全体の収容人員が30人以上の場合は各テナントに防火管理者が必要です。そのため、自店舗の収容人員が30人未満であっても防火管理者を配置することが求められる可能性があります。

防火管理者の資格の取得方法

防火管理者の資格の取得方法は、講習を受講する方法と、安全管理者や防災管理点検資格者などの資格で取得を免除される方法の2つです。安全管理者や防災管理点検資格者などの資格を持っていない人は「防火管理講習会」を受講しましょう。

【防火管理講習会の概要】

項目 概要
講習資格 日本語を理解できる中学校卒業以上の学力を有するもの
講習科目 <甲種防火管理者>
・講習「防火管理の意義及び制度、防火管理にかかる消防計画」など
・実技「避難器具の使い方や地震体験、消火器の使い方」など
<乙種防火管理者>
・法改正の概要、火災事例研究などの講習
講習時間 ・甲種防火管理者「甲種新規講習」約10時間(2日間)
・乙種防火管理者「乙種講習」約5時間(1日)
講習費用 ・甲種防火管理者 ~8,000円程度
・乙種防火管理者 ~7,000円程度
講習形式 会場での集合型講習会、e-ラーニング型養成講習会

参考:防火管理講習|日本防火・防災協会

集合型の甲種新規講習の場合、講習と実技の内容を2日続けて受講することになります。一方で、e-ラーニング型講習の場合は、9時間の講義をPCやスマートフォンから都合の良い時間に受講し、後日指定の会場にて1時間の実技を受講することになります。

収容人数が30名以上のバーを開業する際に必要な防火管理者の資格は、防火管理講習会を受講することで取得できます。また、安全管理者や防災管理点検資格者資格を持っている人は、その資格で防火管理者として認められるため、受講が免除となります。

なお、防火管理者講習会は、事前の予約が必要です。予約方法は、インターネットやハガキでの申し込みとなり、電話での予約は行っていません。地域によっては定員に達するのが早い場合があるため、予定が決まったら早めに予約を入れましょう。

経営するバーのコンセプトや客層によって活かせる資格もある

バーを開業する際に必須となる国家資格とは別に、経営するバーのコンセプトや客層によって活かせる資格もあります。バーの顧客は、お酒を楽しむ以外にも「バーテンダーとの会話」や「バーのコンセプト」を楽しみにお店を訪れる人もいるためです。

【経営するバーのコンセプトに活かせる資格の一例】

バーのコンセプト 活かせる資格
従来型バー カウンターバー
ショットバー
バーテンダー、
カクテルアドバイザー
複合型バー
ワインバー
ダイニングバー
ソムリエ、ワインエキスパート、
ビアソムリエ
カフェバー
コーヒー&紅茶カフェマスター
シガーバー
シガーマネージャー、シガーエキスパート

資格を取得する際に身につけた知識やスキルを持ち合わせていることで、お客様との会話に深みが出ることや接客の幅が広がることも期待できます。自身のキャリアをこれから積んでいく段階の時期に箔をつけ、顧客からの信頼を得ることを目的に資格取得に励むのも1つの方法です。

バーのコンセプトや客層によって活かせる民間資格は多岐に渡り、受講方法や試験の難易度、費用などもさまざまです。バーの開業後は、自身の目指す店舗経営の方向性や顧客との関係性を広げる方法の1つとして、資格の取得を検討してみましょう。

バーテンダー・インターナショナルバーテンダー

バーテンダー呼称技能認定試験は、バーテンダーとして働くうえで、アルコールに関する知識や信頼を得られるように定められた資格です。未経験でチャレンジする試験ではなく、現在バーテンダーとして働いている人がスキルアップや知識向上のために受ける技能認定試験です。

【日本バーテンダー協会NBAの資格】

受験資格 <バーテンダー>
・会員、非会員共にアルコールを提供している飲食業やサービス業に従事している、もしくはバーテンダーとして働いている20歳以上の人
<インターナショナル・バーテンダー>
・会員限定、協会在籍期間3年以上、実務経験7年以上で、バーテンダーの資格取得後2年が経過している満25歳以上の人
内容 <バーテンダー>
・種類に関する学科試験のみ
<インターナショナル・バーテンダー>
・学科試験では種類、衛生問題が出題され、実技試験ではフルーツカッティング、ステア、シェークの基本技術を採点
費用 <バーテンダー>
正会員:5,400円、非会員:10,800
<インターナショナル・バーテンダー>
5,400円、合格認定料:16,400

バーテンダーの資格を持っていると、知識やスキルがあることの証明となり、顧客の信頼感を得ることに繋がります。また、大きな大会やカクテルコンペに出場する際に資格が必要となる場合もあるため、取得した資格が有利に働く可能性があります。

なお、紹介した資格は、バーテンダーの資格の一例です。ほかにもカクテルやビバレッジ全般に関するさまざまな資格があるため、自身のキャリアや学びたい内容に合わせてチャレンジしてみてください。

ソムリエ・ワインエキスパート試験

ワインソムリエやワインエキスパートの試験では、どちらもワインに関する知識や技術の習得を目指します。ソムリエ試験の場合、受験資格にソムリエとして一定の職務経験が求められるのに対し、ワインエキスパートの受験では職種、経験などは問われず、チャレンジしやすくなっています。

【日本ソムリエ協会J.S.Aの資格】

受験資格 <ソムリエ>
20歳以上でソムリエの職務が本職であり、全収入の60%以上をソムリエの職務により得ていること
・就労時間90時間以上の勤務で通算3年以上の実務経験があること
<ワインエキスパート>
20歳以上であること(職種、経験は不問)
内容 <ソムリエ>
・一次試験:コンピューターによるCBT方式試験
・二次試験:テイスティング試験、論述試験
・三次試験:サービス実技試験(ワインの開栓及びデカンタージュ)
<ワインエキスパート>
・一次試験:コンピューターによるCBT方式試験
・二次試験:テイスティング試験
費用 <一次試験から受験の場合>
会員:20,380円、一般:29,600
<二次試験から受験する場合>
会員:7,300円、一般:14,210
<三次試験から受験する場合>
会員のみ:3,650

ソムリエやワインエキスパートの資格を持っていると、ワインに関する知識やスキルがあることの証明となります。さまざまな種類のワインの中からお客様の好みを聞き、お勧めの商品を選ぶことで、ワインに付加価値を添えて提供することが叶います。

なお、紹介した資格は、ワインに関する資格の一例です。ほかにもワインの知識全般やテイスティング能力などを高められる資格や検定があるため、自身のキャリアや興味のある内容に合わせて調べてみましょう。

コーヒー&紅茶カフェマスターの資格

コーヒー&紅茶カフェマイスターの資格は、コーヒーや紅茶に関する知識やカフェの開業に必要なノウハウなども学べる資格です。豆や茶葉の選び方やサイフォン、フレンチプレスなどを使った本格的な淹れ方を身につけます。

【日本能力開発推進協会JADPの資格】

受講項目 内容
コーヒー 基礎知識、豆の選び方・焙煎、コーヒーの淹れ方、道具の使い方など「バリスタ」としての知識と技術をマスターする
紅茶 基礎知識、茶葉の銘柄と特徴、おいしい紅茶を淹れるためのルールと味わい方など「ティースペシャリスト」としての知識と技術をマスターする
開業

 

店舗のコンセプト設計、店舗選定、メニューの決め方、オープン後の集客・マーケティング方法など「カフェの開業に係る知識」を学ぶ

カフェでお酒も楽しめる「カフェバー」のコンセプトで開業する場合には、コーヒーや紅茶に関する資格に着目してみましょう。バリスタやティースペシャリストなどの資格取得を目指すことで、より深い知識が身に付きます。

なお、紹介した資格は一例で、コーヒーや紅茶に関する知識やおいしい淹れ方などを学べる資格は多数あります。中には、ラテアートやロイヤルミルクティーに関する知識や技術を学べる講座もあるため、自身の習得したい内容が学べるものを探してみましょう。

シガーマネージャー・シガーエキスパート

シガーマネージャーやシガーエキスパートの呼称資格認定試験では、お客様の好みに合わせた葉巻をプロデュースできる知識の習得を目指します。シガーマネージャーの受験資格には一定の職務経験が求められるのに対し、シガーエキスパートの場合は職種や経験不問で受験可能です。

【キューバ・シガー協会CCAの資格】

受験資格 <シガーマネージャー>
20歳以上で飲食サービス業を通算5年以上経験、もしくはバーテンダー業を通算3年以上経験し、現在も従事していること
<シガーエキスパート>
20歳以上であること(職種、経験は不問)
内容 <シガーマネージャー>
・一次試験:筆記試験(オンライン)
・二次試験:シガー・テイスティング(別途レポート提出)
・三次試験:口頭試問(オンライン)
<シガーエキスパート>
・一次試験:筆記試験(オンライン)
・二次試験:シガー・テイスティング(別途レポート提出)
費用 <シガーマネージャー>
10,000円
<シガーエキスパート>
5,000円
<合格後の認定料>
20,000円
※その他、協会入会金、年会費あり

静寂な時間をもたらすシガーをお酒とともに楽しめる「シガーバー」を経営する場合、シガーに関する資格が役立ちます。ワインを選ぶときにお客様の要望に応えるソムリエがいるように、シガーバーではシガーマネージャーがお客様の好みに合わせた葉巻をおすすめします。

食べ物やお酒の好み、1本にかけられる時間や費やせる予算などを聞き、どんな葉巻が合うかを選べるスペシャリストがいるお店は顧客のリピートが見込めます。経営するバーでシガーを扱う予定がある人は、見識を高めるために資格の取得を検討してみましょう。

まとめ

バーを開業する際に取得が必要な資格は「食品衛生責任者」の資格です。「食品衛生法」の定めにより、食品の製造や販売を行う場合は、食品衛生責任者の有資格者を店舗に1人配置することが義務付けられています。

また、経営するバーの建物の収容人数が30人以上の場合は「防火管理者」の資格も必要になります。消防法の定めにより、延べ床面積が300㎡以上であれば「甲種防火管理者」300㎡未満であれば「乙種防火管理者」の有資格者を店舗に配置することが義務付けられています。

なお、開業時には不要でも、経営するバーのコンセプトや客層によって活かせる資格が多数あります。資格を取得する際に身につけた知識やスキルが接客力を深め、お客様の信頼を得ることでリピーターの獲得にも繋がります。

 

 

 

 

 

 

 

この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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