- ホーム
- パン屋の開業に必要な資格を解説
飲食(飲食店・外食・デリバリー)
パン屋の開業に必要な資格を解説
パン屋を開業する場合、いくつかの資格を取得することになります。そして、それらの資格は「必要となる資格」と「状況次第となる資格」に分けられます。
当記事では、パン屋の開業に必要な資格を解説します。パンに関する資格や検定も紹介するため、パン屋を開業したい人は参考にしてみてください。
必要となるのは食品衛生責任者の資格
パン屋を開業する場合、必要となるのは「食品衛生責任者」の資格です。食品衛生法の定めにより、食品の製造や販売を行うときは食品衛生責任者を選任しなければならず、パン屋を開業するときは食品衛生責任者の有資格者を店舗に配置しなければなりません。
【食品衛生責任者の役割】
項目 | 役割 |
食品衛生責任者 | ・店舗の衛生管理 ・講習の定期参加 |
食品衛生責任者の役割は店舗の衛生管理をすることです。製造から販売に至るまでの各工程の衛生管理に加え、従業員の衛生教育や健康管理など、食品衛生責任者はその施設における衛生管理全般に責任を持たなければなりません。
食品衛生責任者のもうひとつの役割は食品衛生の講習会に参加することです。各自治体が実施する食品衛生の講習会に参加し、最新知識や法律改正など、食品衛生責任者は食品衛生に関する知見の習得に努めなければなりません。
なお、パン屋を開業する場合、開業者本人が食品衛生責任者の有資格者になることを検討してみてください。食品衛生責任者の有資格者がいなければ、その店舗の営業は認められないため、まずは開業者本人が有資格者になることを検討してみましょう。
食品衛生責任者の資格の取得方法
食品衛生責任者の資格を取得する方法として挙げられるのは「食品衛生責任者養成講習会に参加する方法」です。各自治体が実施する食品衛生責任者養成講習会に参加し、所定の講習科目を受講することにより、食品衛生責任者の資格を取得することができます。
【食品衛生責任者養成講習会の概要】
項目 | 概要 |
講習期間 | 1日間 |
講習費用 | 10,000円~12,000円 |
講習内容 | 「食品衛生学」「食品衛生法」「公衆衛生学」「修了試験」 |
食品衛生責任者養成講習会の講習期間は1日です。「食品衛生学」「食品衛生法」「公衆衛生学」など、計6時間程度の講習科目を受講し、講義の理解度や知識の定着度を確認するための修了試験に合格すれば、食品衛生責任者の資格を取得できます。
食品衛生責任者養成講習会の講習費用は10,000円~12,000円です。各都道府県や各指定機関など、食品衛生責任者養成講習会の主催者によっても講習費用は異なりますが、オンライン上での受講方法を選択した場合も講習費用が異なることがあります。
なお、調理師や製菓衛生師などの有資格者は食品衛生責任者養成講習を受けずとも食品衛生責任者になれる可能性があります。該当する場合は食品衛生責任者養成講習会の受講が免除されるため、気になる人は各都道府県の公式サイトを確認してみましょう。
状況次第となるのは防火管理者の資格
パン屋を開業する場合、状況次第となるのは「防火管理者」の資格です。消防法の定めにより、建物の収容人数が規定にあたる場合は防火管理者を選任しなければならず、該当するときは防火管理者の有資格者を店舗に配置しなければなりません。
【防火管理者が必要になる要件】
資格 | 店舗の状況 |
甲種防火管理者 | 店舗の収容人数が30人以上かつ店舗の延べ面積が300㎡以上 |
甲種または乙種防火管理者 | 店舗の収容人数が30人以上かつ店舗の延べ面積が300㎡未満 |
「店舗の収容人数が30人以上かつ店舗の延べ面積が300㎡以上」の条件に該当するときは甲種防火管理者の資格が必要です。防火対象物の規模が大きい場合は乙種防火管理者ではなく、甲種防火管理者の資格を検討することになります。
「店舗の収容人数が30人以上かつ店舗の延べ面積が300㎡未満」の条件に該当するときは甲種または乙種防火管理者の資格が必要です。防火対象物の規模が小さい場合は甲種防火管理者ではなく、乙種防火管理者の資格を検討することになります。
なお、パン屋を開業する場合、開業者本人が防火管理者の有資格者になることを検討してみてください。防火管理者の有資格者は店舗管理や監督業務を行う人が望ましいため、まずは開業者本人が有資格者になることを検討してみましょう。
防火管理者の資格の取得方法
防火管理者の資格を取得する方法として挙げられるのは「防火管理講習会に参加する方法」です。各自治体が実施する防火管理講習会に参加し、所定の講習科目を受講することにより、防火管理者の資格を取得することができます。
【防火管理講習の概要】
項目 | 概要 |
講習期間 | 乙種防火管理者は1日間 / 甲種防火管理者は2日間 |
講習費用 | 5,000円~8,000円 |
講習内容 | 講義、実技訓練、効果測定試験 |
防火管理講習会の講習期間は1日~2日です。防火管理の制度や防火管理に係る消防計画など、計5時間~10時間程度の講習科目や実技訓練を受講し、講義の理解度や知識の定着度を確認するための効果測定試験に合格すれば、防火管理者の資格を取得できます。
防火管理講習会の講習費用は5,000円~8,000円です。各都道府県や各消防署など、防火管理講習会の主催者によっても講習費用は異なりますが、オンライン上での受講方法を選択した場合も講習費用が異なることがあります。
なお、防火管理に関する業務の有資格者や経験者は防火管理講習会を受けずとも防火管理者になれる可能性があります。該当する場合は防火管理講習会の受講が免除されるため、気になる人は各都道府県の公式サイトを確認してみましょう。
開業後の経営に活かせる資格と検定もある
パンに関する資格試験や検定試験に合格しているということは、パンに関する専門知識や専門技術を有するということです。開業後の経営に活かせる可能性もあるため、パン屋を開業したい人はパンに関する資格や検定も押さえておきましょう。
【パンに関する資格と検定の例】
- パン製造技能士
- パンシェルジュ検定
- パンコーディネーター
パンに関する資格や検定として挙げられるのは「パン製造技能士」「パンシェルジュ」「パンコーディネーター」です。いずれも開業後の経営に活かせる可能性があるため、パン屋を開業したい人はそれぞれの概要を確認してみましょう。
パン製造技能士
パンに関する検定として挙げられるのは「パン製造技能士」です。パン製造技能士は国家資格となる技能検定制度のひとつとして位置付けられ、パン製造技能士の検定試験に合格することにより、パンの製造における知識や技術を身に付けられます。
【パン製造技能士の概要】
等級 | 概要 |
特級 | ・1級合格後5年以上の実務経験者 ・学科試験と実技試験がある |
1級 | ・7年以上の実務経験者 ・学科試験と実技試験がある |
2級 | ・2年以上の実務経験者が対象 ・学科試験と実技試験がある |
パン製造技能士の受検資格は実務経験によっても異なります。条件となる実務経験の年数は等級ごとに異なるため、実務経験がない人や専門学校を卒業していない人は、まずはパン製造技能士2級の合格を目指すことになります。
パン製造技能士の受検内容は学科試験と実技試験から構成されています。学科試験は「パン一般」や「パン製造法」などの所定の科目から構成され、実技試験は「水の配合割合」や「各材料の使用量」など、決められた時間内に指定の作業を行う内容となります。
なお、パン製造技能士は国家資格の位置付けとなります。パン製造技能士の検定試験に合格することにより、パンの製造における知識や技術を習得できるため、パン屋を開業したい人はパン製造技能士の検定試験を受検することも検討してみましょう。
パンシェルジュ検定
パンに関する検定として挙げられるのは「パンシェルジュ検定」です。パンシェルジュ検定は歴史や文化に加え、トレンドやマナーを学ぶこともできるため、パンシェルジュ検定の検定試験に合格することにより、パンに関する幅広い知識を身に付けられます。
【パンシェルジュの概要】
等級 | 概要 |
パンシェルジュマスター(1級) | 3級と2級の出題範囲に加え、パンのスペシャリストに向けた専門的かつ高度な内容が出題される。 |
パンシェルジュプロフェッショナル(2級) | 3級の出題内容に加え「パンのマーケット」や「パンのトレンド」など、専門的かつ実践的な内容が出題される。 |
パンシェルジュベーシック(3級) | 「パンの製法」や「パンの歴史」など、パン好きな人が知っておきたい基礎知識の内容が出題される。 |
パンシェルジュ検定の受検資格は等級ごとに異なります。2級と3級は誰でも受検できますが、1級を受検できるのは2級を合格した人のみとなるため、1級を受検したい人は、まずはパンシェルジュプロフェッショナル(2級)の合格を目指すことになります。
パンシェルジュ検定の受検内容は筆記試験です。2級と3級は「マークシート形式を用いた全100問」の構成ですが、1級は「マークシート形式(全80問)+記述式のレポート」の構成になるため、1級を受検する場合は記述問題の対策を講じることになります。
なお、パンシェルジュの受検者数は累計70,000人(第25回までの延人数)を超えています。年齢や職業を問わず、あらゆる人が受検している検定となるため、パン屋を開業したい人はパンシェルジュ検定の検定試験を受検することも検討してみましょう。
パンコーディネーター
パンに関する資格として挙げられるのは「パンコーディネーター」です。パンコーディネーターはパンのプロフェッショナルになるための資格として位置付けられ、公益財団法人日本生涯学習協議会により、監修と認定を受けている資格となります。
【パンコーディネーターの概要】
等級 | 概要 |
パンコーディネーターアドバンス | パンに関わる知識や技術を人に伝える・教える技術を身に付けられる |
パンコーディネーターエキスパート | パンに関わる企画提案に必要となる知識を学べる |
パンコーディネーター | パンのコーディネーションに必要となる基礎知識を学べる |
パンコーディネーターの受験資格は等級ごとに異なります。下位資格となるパンコーディネーターは誰でも受験できますが、上位資格を取得したい場合は下位資格を取得している必要があるため、まずはパンコーディネーターの合格を目指すことになります。
パンコーディネーターの受験内容は3日間にわたる認定講座の受講です。受講内容は等級ごとに異なりますが、いずれの等級もパンコーディネーターの認定講座を受講し、認定試験に合格することにより、その等級の資格を取得できます。
なお、パンコーディネーターエキスパートに合格した場合、企業からの案件を紹介してもらえる可能性があります。メディア掲載の実績もあるため、パン屋を開業したい人はパンコーディネーターの認定講座を受講することも検討してみましょう。
まとめ
パン屋を開業する場合、必要となるのは「食品衛生責任者」の資格です。食品衛生法の定めにより、食品の製造や販売を行うときは食品衛生責任者を選任しなければならず、パン屋を開業するときは食品衛生責任者の有資格者を店舗に配置する必要があります。
また、パン屋の状況次第となるのは「防火管理者」の資格です。消防法の定めにより、建物の収容人数が規定にあたる場合は防火管理者を選任しなければならず、該当するときは防火管理者の有資格者を店舗に配置しなければなりません。
なお、パンに関する資格や検定の中には、パンの知識や技術を深めるためのものもあります。パン屋の開業に必須ではありませんが、開業後の経営に活かせる可能性もあるため、パン屋を開業したい人はパンに関する資格や検定も押さえておきましょう。
関連記事
飲食(飲食店・外食・デリバリー)
この記事の監修者
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
田原 広一(たはら こういち)
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
開業に関するお悩みサポートします!
- どの金融機関から、いくらくらい資金調達すればいいか知りたい
- 開業時に必要な届出や書類を知りたい
- 開業に関する手続きをスムーズに行いたい
開業支援ガイドを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)は、
事業用融資や補助金の申請支援をはじめとした、起業家支援を行う会社です。
6,000件以上の融資支援、1,300件以上の補助金支援の実績と専門知識で、あなたの開業をサポートいたします。