キッチンカーでクレープ屋を開業するための準備と費用目安について解説 - 開業支援の相談なら「開業支援ガイド」

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キッチンカーでクレープ屋を開業するための準備と費用目安について解説

一般的な店舗に比べ、設備投資や内装費用を抑えることができるためキッチンカーでクレープ屋を開業したいと考えている方も多いのではないでしょうか?

キッチンカーは、イベントや人通りの多い場所に自ら行くことができるため、ターゲット層に合わせた出店戦略が立てやすいことも魅力の一つと言えます。今回の記事では、キッチンカーでクレープ屋を開業するための準備と開業にかかるお金の目安、キッチンカーでクレープ屋を開業するにあたって注意しておきたいことを紹介します。

キッチンカーでクレープ屋を開業するまでの準備

キッチンカーは、固定店舗に比べて初期費用を抑えやすく、場所を選ばずに出店できる自由さが魅力です。特にイベント出店や観光地、公園など人の集まる場所に自ら出向けるという点で、クレープとの相性も良いと言えます。

とはいえ、キッチンカーで開業するには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。

  • どんなお店にしたいかというコンセプトづくり
  • クレープを提供するためのキッチンカー設備の準備
  • 食品を扱う上での資格や営業許可の取得
  • 材料の仕入れ先の確保
  • 価格設定の検討
  • 実際に販売する出店場所の選定と交渉

はじめての開業には不安もあると思いますが、少しずつ準備をすすめていけるように、それぞれのステップをわかりやすく解説していきます。

どんなお店にしたいかというコンセプトづくり

キッチンカーでクレープ屋を開業するにあたり、一番最初に取り組んでほしいのが「コンセプト作り」です。コンセプトとは、「どんなお店にしたいか」「どんな人に届けたいか」など、お店の芯になる部分です。コンセプトを作ることでメニューや価格、車のデザイン、SNSの発信内容まで、すべてが決めやすくなります。

コンセプトの決め方は色々とありますが、以下の4つの項目を書き出してみましょう。

なぜクレープ屋をやりたいのか 例)子どものころからクレープが好き、自分のお店を持ちたいと思ったなど
誰に届けたいのか 例)流行に敏感な20代の若者、休日を楽しむファミリーなど
どんな世界観をとどけたいか 例)海外のお店のようなシックな雰囲気、カラフルでポップなど
商品のウリは何にするか 例)地元のフルーツのみを使う、グルテンフリーのクレープにするなど

書き出した項目を一言でまとめてコンセプトを作ります。たとえば、「休日に親子で楽しめる子どもが喜ぶクレープ店」というイメージです。

クレープを提供するためのキッチンカー設備の準備

お店の方向性が決まったら、次はお店そのものであるキッチンカーの準備をします。

車両の入手方法を検討する

予算や希望の車種に応じて、新車または中古車の購入、あるいはリースを検討します。
中古車の場合は、走行距離や状態をよく確認し、必要であれば専門家に見てもらうことも考慮しましょう。リース契約の場合は、契約期間や条件をしっかりと確認し、自分のビジネスプランに合ったものを選びましょう。

キッチンカーに必要な設備をまとめる

クレープ調理に必要な設備はもちろん、キッチンカーでは食品衛生法に基づいた基準を満たしている必要があります。2021年6月1日の食品衛生法改正完全施行により、キッチンカーの設備基準が全国統一となりました。これにより、各自治体によって異なっていた基準が統一されてわかりやすくなりましたが、都道府県によっては追加で必要な設備などを設けている場合もあります。
営業許可を申請する保健所で事前に設備について相談しておくようにしましょう。

<キッチンカーの基本的な設備基準>

設備 基準
シンク(洗浄設備) 原則2槽以上

深さ18㎝以上、縦横それぞれ30㎝以上が望ましい

手洗い専用シンクを別に用意する

※1槽を手洗い専用としてもOKなケースもある

給排水設備 給水タンク:40L以上

排水タンク:給水タンクと同等以上の容量

※排水タンクは清潔に管理でき、汚水漏れがない構造

手洗い設備 石けん、ペーパータオルなど

非接触で水がでる構造が推奨される

冷蔵・冷凍設備 温度管理ができる冷蔵庫・冷凍庫

温度計の設置が必要な場合もある

換気設備 換気扇の設置など十分な換気ができる構造
調理スペース(内装) 衛生的に作業できるように床や壁、作業台は掃除しやすい素材

調理器具、洗浄設備、冷蔵設備などをすべて車内に備える必要があります。
キッチンカーを購入する場合は、必要な設備が搭載されているか、後付けはできるのかなどを確認しておきます。中古車の場合は、設備の動作状況や状態の確認も行いましょう。

食品を扱う上での資格や営業許可の取得

クレープ屋に限らず、キッチンカーで飲食の販売を行うためには、食品衛生責任者と営業許可が必要です。

食品衛生責任者

「食品衛生責任者」は飲食店など、食品を扱う事業を行うには必須の資格です。食品衛生責任者は講習を受けることで資格を取得することができます。

以下の資格を保有している場合は、講習を受ける必要がありません。

  • 栄養士
  • 調理師
  • 製菓衛生士
  • 食鳥処理衛生管理者
  • 畜場法に規定する衛生管理責任者若しくは作業衛生責任者
  • 船舶料理士
  • 食品衛生管理者の有資格者(医師・歯科医師及び学校教育法に基づく大学での課程を修了した者)

食品衛生責任者の資格取得の方法については、「食品衛生責任者の資格の取り方」をご覧ください。

営業許可

キッチンカーでクレープの販売を行うためには、保健所から営業許可を取得する必要があります。これは固定店舗と同様に、食品を扱う事業を行う上で必須の手続きです。

営業許可の申請は主に以下の流れで進めます。

  1. 営業予定エリアを管轄する保健所相談
  2. 必要な書類を提出して申請
  3. キッチンカーの設備確認(検査)を受ける
  4. 許可証の発行を受ける

営業許可を取得するには、食品衛生法に基づいた設備基準を満たす必要があります。シンク数や給排水設備、冷蔵庫の設置、換気など、基準に合っているかどうかを保健所に確認しておくことが大切です。

なお、営業許可の種類は「自動車営業(食品の調理・販売)」となります。申請先や必要書類は自治体によって異なります。まずは、営業予定地域の保健所に事前相談しましょう。また、営業許可の取得は、出店場所を管轄する保健所ごとに行う必要があります。複数エリアで営業を検討している場合は、各保健所に事前確認をしておきましょう。

必要に応じて必要になる届出

キッチンカーでの営業は、営業許可だけでは完結しない場合があります。出店する場所や提供スタイルによっては、別途、届出や許可申請が必要になるケースがあります。以下に代表的な届出と許可をご紹介します。

  • 道路使用許可(警察署)

公道や歩道など道路上にキッチンカーを停めて営業する場合は、営業前にその地域を管轄する警察署で「道路使用許可」を取得する必要があります。許可なく営業をすると違法となる可能性がありますので、事前に確認し申請を行いましょう。

  • 公園、公共施設での使用許可(自治体)

自治体が管理する公園や広場、公共施設の敷地内での営業には、その施設の「占用許可」や「使用許可」が必要となる場合があります。自治体や施設ごとにルールが異なるため、希望する場所の担当課(公園緑地課や地域振興課など)に問合せをしておきましょう。

  • イベント出典申請(主催者)

マルシェ、音楽フェス、地域イベントなどの催事に出店する場合は、イベント主催者のルールに従って申請が必要です。出展料や電源、水道の使用有無、搬入出のスケジュールなどもこの段階で確認しておきましょう。

  • 火気使用届(消防署)

キッチンカー内でガスコンロや発電機など火気を使用する場合は、消防署への届出が必要になることがあります。使用する機材の種類や規模によっては、防火管理者の選任が求められることもあるため、事前相談をおすすめします。

材料の仕入れ先の確保

安定した品質で、おいしいクレープを提供し続けるためには、仕入れ先の選定がとても重要です。まずは、以下のような食材、備品についてそれぞれの仕入れ先を検討しますしょう。

  • クレープ用の粉(小麦粉、米粉、グルテンフリー粉など)
  • トッピング用食材(生クリーム、フルーツ、ソース類、チョコレート、ナッツ、アイスクリーム等)
  • 包装紙、紙皿、ナイフ、フォーク、持ち帰り袋などの消耗品

ポイントは、味、価格、安定供給のバランスです。また、地元の農家さんや製造業者さんと直接つながり、オリジナル性のある食材を使うなど差別化できるポイントなどの観点から考える方法もひとつです。

出店場所の選定、交渉

出店場所は売上にも影響するため、どこで始めるかは重要です。商業施設のイベントスペースや、観光地など人通りの多い場所、フェスやマルシェなどのイベント出店、学校や地域の行事など出店候補をリスト化してみましょう。

出店候補が決まったら、管理者や主催者に連絡して条件の確認などを行いましょう。

【チェックするポイント】

出店料の有無や金額(月額、日額など)

電源、水道の使用可否(使用料がかかるかなど)

営業時間、設営、撤去のルール等

ごみ処理方法(持ち帰り、回収可)など

また、出店場所によっては「ジャンル制限」や「販売品目の申請」が必要な場合もあります。キッチンカー同士の競合状況も確認して、自分のクレープが埋もれずに魅力が出せる場所を選ぶようにしましょう。

キッチンカーでクレープ屋を開業する場合の費用相場と内訳

キッチンカーは、店舗での開業よりも費用は抑えられる傾向にはありますが、おおよその開業費用の目安は150万円~530万円前後とされています。

選ぶ車両や設備、どこまで準備するかによって差はありますが、ざっくりとした費用相場をご紹介します。

キッチンカーでクレープ屋を開業する場合の費用内訳(例)

項目 内容 費用目安
車両購入・改装費 車両+キッチンカーへの改装 約80万円~350万円
キッチン設備 冷蔵庫、鉄板、換気扇など 約30万円~100万円
保健所基準対応 二層シンク、衛生設備など(改装費や設備に含まれることもある) 約0円~20万円
営業許可・資格取得 食品衛生責任者、営業許可など 約1万円~2万円
材料・備品費 食材・包材・調理器具など 約5万円~15万円
宣伝・販促費 看板・メニュー・チラシ・SNS素材など 約3万円~10万円
出店料・場所代 イベント等出店費(初期分) 約2万円~10万円
雑費・予備費 保険料・ガソリン代・予備備品など 約10万円~20万円

費用を抑えるためには、中古の車両を活用して改装コストを最小限にしたり、必要最低限の設備からスタートするなど、スモールスタートで動き出してみるという方法も一つです。集客などを考慮してまずは、イベント出店で初期費用を回収しながら本格展開するなど予算に応じてメリハリをつけながら、徐々にファンを増やしていくなど検討してみてください。

キッチンカーでクレープ屋を開業する際に注意しておきたいポイント

キッチンカーでのクレープ屋開業は自由度が高く魅力的ですが、実際に運営してみると「想像と違った!」と感じる場面もあるかもしれません。ここでは、開業前にぜひ知っておいてほしい注意点をまとめました。

衛生管理はしっかりと実施する

クレープのトッピングは、フルーツや生クリームなど傷みやすい食材が多いため、温度管理や衛生面には特に注意が必要です。とくに、6月~9月は食材によっても厳しい季節です。食中毒などの事故はご自身もお客様も大変な思いをすることになります。食材管理、衛生管理はしっかりと行いましょう。

  • 冷蔵庫の温度をしっかり管理する
  • 手洗いや清掃はこまめに実施する
  • 食材は素手で触らない
  • 食材の使いまわしは避ける

天候の営業を受けやすい

キッチンカーは屋外での営業が中心となるため、雨、風、猛暑、寒波など天候による影響を大きく受けます。

天候のリスクを想定して、月ごとの売上目標やコスト管理に余裕を持たせておくことが重要です。また、近年は暑さが厳しくなっています。夏場は自身もお客様も熱中症のリスクが高まるため、熱中症対策もしっかりと考慮しておきましょう。

SNSなどを活用し、営業の案内が発信できる場所を準備しておくことも大切です。

許可・届出の更新や期限に注意

営業許可や保険の更新忘れ、出店先ごとのルール違反、火気使用や道路使用の無許可営業などが無いように注意しましょう。こうしたミスは最悪の場合、営業停止につながる恐れがあります。スケジュール管理やチェックリストで抜け漏れ防止を徹底しましょう。

まとめ

キッチンカーでクレープ屋を開業することは、固定店舗に比べて初期費用が抑えられ、自由な出店スタイルで始められるのが大きなメリットです。クレープという親しみやすい商品は、イベントや観光地、ファミリー層にも好まれやすく、キッチンカーとの相性も良いといえます。この記事では、コンセプトづくりから設備、資格、仕入れ、価格設定、出店交渉まで開業に必要な準備についてご紹介しました。

やるべきことが多く見えるかもしれませんが、一つずつクリアしていくことがポイントです。素敵なクレープ屋さんが形になることを願っています。

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この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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