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自宅兼美容室を開業するときのポイントを解説

美容室を開業したい人の中には、自宅での開業を考えている人もいますよね。また、自宅を美容室にするための情報を調べている人もいるでしょう。 当記事では、自宅兼美容室を開業するときのポイントを解説します。開業準備の工程も紹介するため、自宅での開業を考えている人は参考にしてみてください。

ポイントは開業するための条件を満たせるかどうか

自宅兼美容室を開業するときのポイントは、開業するための条件を満たせるかどうかです。開業するための条件を満たすことができなければ、美容室を始めることはできないため、自宅での開業を考えている人は開業するための条件を押さえておきましょう。

【自宅兼美容室を開業するための条件】

  • 設備に関する条件
  • 地域に関する条件

自宅兼美容室を開業する場合、「設備に関する条件」と「地域に関する条件」を満たしている必要があります。改装と新築のいずれにおいても満たすべき条件となるため、自宅での開業を考えている人はそれぞれの項目を確認してみましょう。

設備に関する条件

自宅兼美容室を開業する場合、設備に関する条件を満たしている必要があります。各自治体が定める「構造設備基準」を満たしている必要があるため、自宅での開業を考えている人は構造設備基準を満たす設備を導入できるかどうかを確認してみましょう。

【美容室における構造設備基準の有無】

項目 設備基準の有無
洗髪設備 あり
給湯設備 あり
空調設備 あり
換気設備 あり
給水設備 あり
排水設備 あり
流水設備 あり
消毒設備 あり
照明設備 あり
音響設備 なし

※厚生労働省の公式サイトにあるPDF資料「理容所及び美容所における衛生管理要領」をもとに株式会社SoLabo作成

構造設備基準が定められている設備として挙げられるのは「洗髪設備」です。「洗髪を行える流水式の設備を設けること」「十分な大きさと強度を有すること」「洗い場と別に設置すること」など、具体的な条件が定められている場合もあります。

また、構造設備基準が定められている設備として挙げられるのは「消毒設備」です。「洗髪を行える流水式の設備を設けること」「十分な大きさと強度を有すること」「洗い場と別に設置すること」など、具体的な条件が定められている場合もあります。

なお、構造設備基準の中には、構造に関する基準もあります。「作業室面積」「作業椅子台数」「客待場所」など、構造に関する基準も満たしている必要があるため、自宅での開業を考えている人は構造設備基準と自宅の構造を照らし合わせてみましょう。

構造設備基準は保健所によっても異なる

美容室を開業するときは設備の条件を満たしている必要がありますが、設備の条件は自宅の所在地を管轄する保健所によっても異なります。設備の条件は「美容師法」と「美容師法施行規則」に加え、各自治体が定める「美容師法施行条例」をもとに決まるからです。

たとえば、東京都渋谷区における「作業室面積」の条件のひとつは「作業室は内法13㎡以上」です。東京都渋谷区に自宅がある場合、美容室の作業室部分の面積が内法13㎡以上に達していなければ、美容室を開業することはできません。

一方、埼玉県さいたま市における「作業室面積」の条件のひとつは「作業室は内法9.9㎡以上」です。埼玉県さいたま市に自宅がある場合、美容室の作業室部分の面積が内法9.9㎡以上に達していなければ、美容室を開業することはできません。

なお、美容室を開業する場合は保健所の担当者の立ち入り検査を受けることになります。導入した設備が構造設備基準に適合しているかどうかを確認されるため、まずは自宅の所在地を管轄する保健所の公式サイトから立ち入り検査の詳細を確認してみましょう。

美容室の開業における保健所の手続きが知りたい人は「美容室の開業における保健所の手続きの流れを解説」を参考にしてみてください。

地域に関する条件

自宅兼美容室を開業する場合、地域に関する条件を満たしている必要があります。都市計画法により、地域ごとに建築物の用途が制限(=用途地域)されているため、自宅での開業を考えている人は美容室の建築が認められている用途地域を確認してみましょう。

【用途地域の一覧】

項目 種類
自宅兼美容室を建築できる用途地域 ・第一種低層住居専用地域
・第二種低層住居専用地域
・第一種中高層住居専用地域
・第二種中高層住居専用地域
・第一種住居地域
・第二種住居地域
・準住居地域
・田園住居地域
・近隣商業地域
・商業地域
・準工業地域
・工業地域
自宅兼美容室を建築できない用途地域 ・工業専用地域

用途地域は「住居系用途地域」「商業系用途地域」「工業系用途地域」に分類され、全13種類あります。種類ごとに建物の用途が制限されていますが、「工業専用地域」以外の地域ならば、原則として自宅兼美容室を開業することは可能です。

また、「床面積は50㎡以下」「床面積は建物の延べ面積の2分の1未満」など、兼用住宅における面積の制限がある地域もありますが、所定の条件を満たすことができれば、原則として自宅兼美容室を開業することは可能です。

ただし、用途地域は地域の状況に応じて変更される可能性があります。用途地域が見直され、建蔽率や容積率などの条件が変更されることも考えられるため、自宅での開業を考えている人は自宅の所在地を管轄する自治体の公式サイトを確認してみましょう。

立地の条件は集客効果に影響を与える

開業後の売上は集客数に左右されますが、立地の条件は集客効果に影響を与えます。人通りの多さや駅徒歩の分数など、立地の条件は集客効果に影響を与えるため、自宅での開業を考えている人は美容室を開業する前に立地の特徴を押さえておきましょう。

【立地の種類ごとの特徴】

項目 特徴 メリットとデメリット
住宅立地 住宅が密集する地域 <メリット>
・競合となる店舗が少ない傾向がある
・リピーターを獲得しやすい傾向がある
<デメリット>
・販促の費用対効果が低い傾向がある
・顧客が周辺住民に限られる傾向がある
商業立地 商業施設が密集する地域 <メリット>
・販促の費用対効果が高い傾向がある
・曜日や時間を問わず人通りが多い傾向がある
<デメリット>
・賃料が高い傾向がある
・競合となる店舗が多い傾向がある
オフィス立地 オフィスビルが密集する地域 <メリット>
・平日の人通りが多い傾向がある
・リピーターを獲得しやすい傾向がある
<デメリット>
・賃料が高い傾向がある
・土日祝日の人通りが少ない傾向がある

たとえば、自宅の所在地が住宅立地にある場合、競合となる店舗が少なく、リピーターを獲得しやすい傾向があります。その反面、販促の費用対効果が低く、顧客が周辺住民に限られる傾向があるため、新規顧客の獲得が難しくなる可能性があります。

また、自宅の所在地が商業立地にある場合、販促の費用対効果が高く、曜日や時間を問わず人通りが多い傾向があります。その反面、賃料が高く、競合となる店舗が多い傾向があるため、競合となる店舗との差別化が必要になる可能性があります。

人通りの多さや駅徒歩の分数など、立地の条件は集客効果に影響を与えます。自宅を新築する場合は立地を選択できますが、今ある自宅を改装する場合は立地を選択できないため、自宅での開業を考えている人は周辺状況から集客戦略を立ててみましょう。

ポイントを押さえた人は開業準備に取り掛かる

自宅兼美容室を開業するときのポイントを押さえた人は開業準備に取り掛かることを考えてみてください。美容室の開業における工程は多岐にわたるため、美容室を開業するときは段階を踏みながら開業準備を進めることがひとつのポイントになります。

【開業準備の工程の例】

  • コンセプトの設計
  • 事業計画書の作成

美容室を開業するときは「コンセプトの設計」と「事業計画書の作成」から始める方法があります。いくつかの工程に分けることにより、段階を踏みながら開業準備を進められるため、自宅での開業を考えている人は最初の工程となる各項目を確認してみましょう。

コンセプトの設計

美容室における開業準備の工程のひとつは「コンセプトの設計」です。コンセプトはその店舗が提供する価値や方向性を示し、顧客に対してのメッセージにもなるため、自宅での開業を考えている人は自宅兼美容室の視点からコンセプトを設計してみましょう。

【美容室におけるコンセプトの例】

  • 髪と心を癒す、実家のような空間
  • キレイになれる隠れ家
  • ホッとできるサロン

たとえば、「髪と心を癒す、実家のような空間」をコンセプトにした場合、その美容室が示す価値と方向性は「髪と心を癒す、実家のような空間」です。顧客に対してのメッセージにもなるため、まずは「髪と心を癒す、実家のような空間」を目指すことになります。

また、「髪と心を癒す、実家のような空間」をコンセプトにした場合、そのコンセプトは決めるべき事項の判断軸になります。経営上の選択に迷ったときは「髪と心を癒す、実家のような空間」を判断軸にすることにより、一貫した方向性を保つことができます。

美容室におけるコンセプトはそのお店が提供する価値や方向性を示し、顧客に対してのメッセージになります。経営上の選択に迷ったときの判断軸にもなるため、自宅での開業を考えている人は自宅兼美容室の視点からコンセプトを設計してみましょう。

美容室のコンセプトに関する情報が知りたい人は「美容室の開業におけるコンセプトとは?作るときの手順を解説」を参考にしてみてください。

事業計画書の作成

美容室における開業準備の工程のひとつは「事業計画書の作成」です。事業計画書を作成することにより、その事業を成功に導くための設計図ができるため、自宅での開業を考えている人は自宅兼美容室の視点から事業計画書を作成してみましょう。

【事業計画書に入れ込む項目の例】

項目 具体例 イメージ
営業計画 ・商品戦略
・価格戦略
・販促戦略
・施術の内容は?
・施術の価格は?
・広告の媒体は?
仕入計画 ・仕入先
・仕入額
・流通経路
・仕入れ先の企業は?
・仕入れの価格は?
・仕入れ先の企業は?
売上計画 ・売上目標
・売上予測
・利益計算
・売上の目標額は?
・売上の予測額は?
・利益予測は?
資金計画 ・設備資金
・運転資金
・資金調達
・設備の導入費は?
・運転資金の額は?
・資金調達の額は?

事業計画書に入れ込む項目として挙げられるのは「営業計画」です。大型店舗と比較した場合、1日に対応できる客数が少なくなる傾向があるため、自宅を美容室にしたい人はその点を考慮しながら「商品戦略」や「価格戦略」を練ることになります。

また、事業計画書に入れ込む項目として挙げられるのは「資金計画」です。テナント物件と比較した場合、物件まわりの費用が抑えられる傾向があるため、自宅を美容室にしたい人はその点を考慮しながら「設備資金」や「運転資金」を算出することになります。

なお、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受ける場合、事業計画書を提出することになります。事業計画書は審査材料のひとつとして扱われるため、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けたい人は留意しておきましょう。

美容室の開業資金に関する情報が知りたい人は、「美容室の開業資金はいくら?平均と内訳を解説」を参考にしてみてください。

まとめ

自宅兼美容室を開業するときのポイントは、開業するための条件を満たせるかどうかです。「設備に関する条件」と「地域に関する条件」を満たしている必要があるため、自宅での開業を考えている人はそれぞれの概要を押さえておきましょう。

また、立地の条件は集客効果に影響を与えます。自宅を新築する場合は立地を選択できますが、今ある自宅を改装する場合は立地を選択できないため、自宅での開業を考えている人は周辺状況から集客戦略を練ることを検討してみてください。

なお、美容室を開業するときは段階を踏みながら開業準備を進めることがひとつのポイントになります。いくつかの工程に分けることにより、段階を踏みながら開業準備を進められるため、自宅での開業を考えている人は留意しておきましょう。

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この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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