2022/4/5
2022/04/05
建築基準法の内装制限の緩和条件とは?不燃材料など防火材料も解説
建築基準法の内装制限の緩和が認められる「緩和条件」を中心に、2020年4月に改訂された最新の緩和規定について、店舗内装工事をご検討中の方向けに解説します。
建築基準法の「内装制限」は、店舗内装工事を検討中の方が知っておくべき事項のひとつです。
内装制限とは店舗で使える内装材の選択肢を狭めるルールのことです。内装制限に当てはまる物件は、火事が起こった時に燃え広がらないよう、天井や壁などで使う内装材や施工方法などの指定があります。
しかし、一定の条件下では内装制限が緩和され、内装材の選択肢の幅が広がることがあります。本記事では内装制限の緩和規定を含め、詳しくお伝えします。
また、同じく内装材やインテリアの選択肢を制限する消防法について知りたい方は次の関連記事をご覧ください。
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Contents
建築基準法の内装制限の緩和条件をオーナーがおさえておくべき理由
どの建物の店舗内装も内装制限がかかるわけではありませんが、内装制限の対象になると、規定の防火性能を有する内装材や施工方法の選択肢が限られ、内装工事費が高額になることもあります。
内装制限は人の命を守るためにも遵守すべきものですが、選ぶ物件や方法、または緩和条件に当てはまると、内装の選択肢を広げられます。
店舗内装工事を伴う開業予定のオーナーはぜひ内装制限の緩和条件を確認しておきましょう。
まず建築基準法の内装制限についてオーナーがやるべきことは3つです。
- 借りる物件に内装制限がかかるのかどうか調べる
- 内装制限の対象の場合はどの部分に内装制限が該当するのか確認する
- 内装制限を守りつつ、どんな内装材なら許されるかおおまかに把握する
内装制限は開業する業種や、建物の構造、階数、面積、その他条件によって決まります。内装制限がかかる物件かどうかは関連記事で確認できます。
最新の内装制限の緩和条件
2020年3月6日に公布され、4月1日に施行された建築基準法施行令が最新の緩和条件になっています。
建築基準法施行令第128条の5の中で、内装制限の対象外は次のように改訂されました。
(中略)前各項の規定は、火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分として、床面積、天井の高さ並びに消火設備及び排煙設備の設置の状況及び構造を考慮して国土交通大臣が定めるものについては、適用しない。
つまり、避難に支障のない高さのある天井や規定の消火設備を満たしていれば、内装制限の対象にならないということです。
国土交通大臣が定めるものには4点あり、いずれかの1点を満たすと内装制限の対象外となります。詳しく見ていきましょう。
条件 | 備考 |
1.床面積が100㎡以内であり、天井(天井がない場合には屋根)が3m以上の居室あること | ただし、以下の場所は除きます。
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2.延べ面積が500㎡以内の建築物の部分であり、スプリンクラー等の自動式の消火設備を設けていること | |
3.スプリンクラーの設備等を設けた建築物の部分 | ただし天井の室内に面する部分の仕上げに準不燃材料を使用したものに限られます。また上の項の3~6の場所は除きます。 |
4.スプリンクラー設備等及び規定を満たす排煙設備を設けた建築物の部分 | − |
建築基準法の内装制限の緩和条件
建築基準法の内装制限の緩和条件は次の通りです。
- 政令で定める窓がない部屋:天井を高くする
- 調理室など火を使う部屋:耐火構造の建物・不燃材の区画を設置・IHの使用
- 内装材に木材を使用したい場合:天井を準不燃にする
それぞれ見ていきましょう。
政令で定める窓がない部屋:天井を高く
政令で定める窓がない部屋は内装制限の対象となります。ただし、物件に6m以上の高さがあった場合は内装制限の対象外になります。
窓がない部屋だった場合は内装制限を緩和させるために「天井の高さ」を確認してみるのもいいでしょう。
建築基準法施行令第128条の3の2
(中略) 法第三十五条の二(中略)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当するもの(天井の高さが六メートルを超えるものを除く。)とする。
調理室など火を使う部屋:耐火構造の建物・不燃材の区画を設置・IHの使用
調理室など火を使う部屋は内装制限の対象となりますが、耐火構造の建物であることや、不燃材の区画を設置、IHの使用が緩和条件になります。
耐火構造の建物
調理室などの火を使用する部屋には内装制限がかかりますが、物件が耐火建築物だと内装制限の対象外となります。
耐火建築物とは、建物の主要構造部に耐火性能を持たせた建築物です。性能によって耐火建築物・準耐火建築物・準耐火建築物(イ)・その他の建築物の4つに分類されますが、そのうちの「耐火建築物」であった場合に内装制限の対象外になります。
不燃材の区画を設置
キッチンと客席がつながっているダイニングキッチンの場合、客席も内装制限に当てはまることになります。
しかし、天井から50㎝以上下方に突出して、不燃材料で作られた垂れ壁などで当該部分が区画された場合は、キッチン以外の部分は内装制限の対象外となります。
コンロにIHを使用する
IHヒーターを使用した厨房室の場合は火気を使用していないとみなされるため、建築基準法では内装制限の対象外になります。
ただし、消防法ではIH調理器と周囲の距離について制限があるため注意が必要です。
地下街・11階以上に開業する場合:防火区画が100㎡にある物件
地下街や11階以上に飲食店や物品販売店などを開業する場合は、防火区画の設置されている広さによって内装制限がかかります。
ただし、防火区画が100㎡以内にある場合は内装制限の対象外となります。
建築基準法施行令第112条
(中略)建築物の十一階以上の部分で、各階の床面積の合計が百平方メートルを超えるものは、第一項の規定にかかわらず、床面積の合計百平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。
内装材に木材を使用したい場合:天井を準不燃にする
木材は耐火性がないため、内装制限がかかると使いづらい内装材の一つです。内装材に木材を使用する条件を見ていきましょう。
内装制限の対象で本来は難燃材料で仕上げるべき居室は、天井(天井がない場合は屋根)を準不燃材料で仕上げることで、木材を使用することができます。

なお、内装材に木材を使用するには、次の制約もあるので注意しましょう。
- 木材等の表面に、火災を助長するような溝を設けないこと。
- (木材等が厚さ10㎜未満の場合)難燃材料の壁に直接貼り付けること
- (木材の厚さが10㎜以上25㎜未満の場合)壁の内部で火災が防止できるように配置された柱・梁などの横架材または壁に直接貼り付けること
内装制限で使える防火性能のある内装材
内装制限を受ける場合、内装材は防火性能を有している内装材を使用します。防火性能を有する内装材にはどのようなものがあるのか詳しく解説していきます。
防火材料とは国土交通大臣が定めた材料、または認定した材料です。
建築基準法に基づき、通常の火災による火熱が加えられた場合に、次の要件を満たす加熱時間に応じて分類されています。
一 燃焼しないものであること。
二 防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること。
三 避難上有害な煙又はガスを発生しないものであること。
防火性能を分類する加熱時間は以下のように規定されています。
防火材料 | 加熱時間 |
難燃材料 | 加熱開始後5分以上 |
準不燃材料 | 加熱開始後10分以上 |
不燃材料 | 加熱開始後20分以上 |
そのため、防火性能のレベルは難燃材料<準不燃材料<不燃材料となっています。
国土交通大臣が定めた不燃材料・準不燃材料・難燃材料
国土交通大臣が定めた不燃材料・準不燃材料・難燃材料をそれぞれ確認していきましょう。
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国土交通省が検査し認定した防火性能のある内装材
国土交通大臣に定められたもの以外にも、防火性能を持つ内装材は豊富な種類があります。「国土交通省の試験に通ったもの」は防火性能を有している内装材としてと認められるからます。
難燃材料は5分間、準不燃材料は10分間、不燃材料は20分間の加熱試験を行い、以下の基準を満たしたものが合格となります。
- 総発熱量が、8MJ/㎡以下であること。
- 防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと。
- 発熱速度が、10 秒以上継続して 200kW/㎡を超えないこと。
参考:壁紙の防火性能は下地材と仕上げ材で決まる
壁の防火性能を知りたい場合は使用する壁紙の防火種別と下地材を調べましょう。
防火性能を持つ壁紙には防火種別が割り振られています。
防火種別は日本塗装協会で級に分けられ、壁紙を分類しているもので「1-1」~「2-6」まで全部で26種類あり、施工方法や金属板の有無により防火の強度が分けられており、内装材のメーカーのwebサイトやカタログ等でも確認できます。
参考:「個別認定 防火性能一覧表」 – 「防火種別」とは何ですか?|東リオンライン よくあるご質問
使用する壁紙の防火種別と下地材を組み合わせたときに、内装制限の規定を満たすようにしましょう。
まとめ
今回は建築基準法の内装制限における緩和の条件についてご紹介しました。
建築基準法で最新の緩和では、いままでスプリンクラーと排煙設備を設けなければいけなかった場所の条件が広くなっています。
従来のようにスプリンクラーや排煙設備を設けることで内装制限の緩和になることに加え、100㎡以内に区画された天井が3m以上の居室、避難階で延べ面積が500㎡以内の建築物で警報設備を設けた部分は条件を満たせば内装制限の対象外です。
内装制限は複雑でわかりづらい部分もありますが、人命を守るルールなので、内装業者に任せっきりにせず、店舗内装に手を入れるときにしっかり確認することをおすすめします。内装材の選べる選択肢も広がり、場合によってはコストダウンにもつながります。
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