2021/12/27
2021/12/27
店舗の床材の選び方とは?種類と内装工事費用と業種別の注意点を解説
店舗内装における床材の種類や特徴、施工工事費用の相場とそれぞれの業種別に床材を選ぶときでの注意点について解説します。
店舗の内装を決めるとき、床材は種類や機能が豊富にあり、多くの人が悩む部分です。店舗に合った床材を選ぶことで、長期的にみた費用を抑えることができます。
工事費用の相場や業種別の特徴をふまえて、自身の店舗に合った床材を選びましょう。
Contents
店舗の床材の選び方
床材を種類やデザイン、費用相場から詳しく解説します。
そもそも床材とは?
床材とは、建物内部の床に使用する材料(仕上げ材)のことを指します。
使用する床材によって特徴はさまざまで、選択の軸も複数あります。例えば、色合いや模様といった「デザイン性」、歩いたときの感触や存在感のような「インテリア性」、防炎や防水といった「機能性」、掃除のしやすさや汚れにくさなど管理の手間がかからない「メンテナンス性」などです。
なお、床材と似ているものとしてマットやカーペット、絨毯などの「敷物」がありますが、建物の一部になる仕上げ材として使われるものではないため、床材ではなくインテリアの一部です。
店舗の床材の種類
床材の種類を把握し、自身の店舗にどの床材が合うのか見ていきましょう。
店舗内装に使用される床材の種類は次の通りです。
床材の分類 | 詳細 |
フローリング | 単層フローリング
複合フローリング |
塩ビシート | クッションフロア
長尺シート |
硬質タイル | 磁器質タイル
陶器質タイル 塩ビタイル |
セメント | モルタル
コンクリート |
畳 | 縁付き畳(へりつきたたみ)
縁なし畳(へりなしたたみ) |
店舗の床材の雰囲気は敷物で後から変えられる
床材を何にするかで店舗の雰囲気は決まりますが、施工した床の上にマットやカーペットなどの敷物(しきもの)を重ねて覆うことで、後から店舗の雰囲気を変えられます。
|
和風の店舗で畳を施工するべきかを迷っている方はとりあえずフローリングにしておき、フローリングの上から畳マットを敷くと、後から雰囲気を検討しやすく、メンテナンスも簡単になるのでおすすめです。
*記事の後半でも床材のメリット・デメリット、機能やメンテナンス方法についても解説します。
床材の種類と内装工事の費用相場を知ろう
床の種類ごとに内装工事にかかる費用を表にまとめたので、見ていきましょう。
床材の工事費は1m×1mの範囲をいくらで工事するかの単価と施工予定の面積をかけあわせて試算します。
この表の費用には床材の材料費と施工費が含まれています。
なお、同じ床材でも選ぶ素材の価格によって費用は変動します。
フローリング | ||
単層フローリング | 13000~17000円/㎡ | |
複合フローリング | 7000~13000円/㎡ | |
塩ビシート | ||
クッションフロア | 2500~5000円/㎡ | |
長尺シート | 4000~6000円/㎡ | |
硬質タイル | ||
磁器質タイル | 15000~25000円/㎡ | |
陶器質タイル | 11000~18000円/㎡ | |
塩ビタイル | 4000~5000円/㎡ | |
セメント | ||
モルタル | 1500~5000円/㎡ | |
コンクリート | 8000~15000円/㎡ | |
畳 | ||
縁付き畳 | 10000~35000円/畳 | |
縁なし畳 | 20000~35000円/畳 |
工事費用とあわせてメンテナンス費用も考えよう
それぞれの内装材の特徴は後半で解説しますが、どの内装材も時間経過とともにある程度、劣化します。初期費用が安いからという面だけで床材を選んでしまうと、メンテナンスの費用が高くなる場合があり、注意が必要です。
材料が手に入れば自分でメンテナンスができるものもありますが、専門業者にしかできないものもあり、その場合は施工費がかかります。
店舗の改装リフォームを頻繁に行う方針であれば、壁材やインテリアであれば比較的簡単に新しくできますが、正直、床は手を入れにくい部分です。
床材を考えるときは床材の耐久年数とメンテナンス費と方法も含め、よく考えましょう。
内装制限もふまえた機能性も考えよう
店舗の床材は内装制限もふまえて機能性を考えましょう。
飲食店や美容室では営業許可の取得のため、内装に決められたものを使用しなければいけません。
例えば、飲食店であれば次の通りです。
「床は、クリンカタイル、コンクリート、石材等の耐水性の材料を用い、排水が良く、かつ清掃しやすい構造であること。また、そのための充分な勾配をつけ、床には排水設備を設ける。」参照:千代田区千代田保健所
ご自分の内装のルールの詳細については実績のある内装業者に確認しましょう。
*この記事の後半でも業種別の注意点やおすすめの内装材の解説をしています
木の床材「フローリング」
それぞれの床材の特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
まず木の床材であるフローリングは、単層フローリングと複合フローリングに分けられます。

画像素材:店舗内装ラボ
単層フローリング(無垢フローリング)
単層フローリングは、木材を切り出した一枚の板を基材とした床材です。横から見ると、つなぎ目がないことが特徴で、自然素材ならではの素材感を楽しむことができます。
単層フローリングの木の種類:ナラ・チーク・かりん・カバ・レッドパイン・杉・ヒノキなど
単層フローリングのメリット | 単層フローリングのデメリット |
・耐久性がある
・多彩な樹種から選べて自然素材の香りや雰囲気を楽しめる ・踏み心地が柔らかなものが多い ・傷ついても削って修復できる |
・自然素材のため、複合フローリングに比べると材料費が高い
・水染みが付きやすい ・柔らかい樹種は傷がつきやすい |
複合フローリング(合板フローリング)
複合フローリングは、一般に普及しているフローリングです。合板などの基材の表面に化粧材を貼ったものです。横から見ると、いくつもの層が重なっていることが特徴です。
合板につける化粧材(化粧板)には主に3種類あります。
挽き板 | 天然木を2㎜の厚みに挽き、基材に貼り合わせたものです。表面に厚みがあるため、単層フローリングと同等の質感を出すことができます。 |
突き板 | 木材を0.3㎜~1㎜程度の厚さにスライスしたものを基材に貼り合わせたものです。均一な質のフローリングを安価に生産することができます。 |
シート | オレフィンや塩ビなどのシートを基材に貼り合わせたものです。シートの素材によって耐水性や耐久性などの機能をつけたものがあります。 |
複合フローリングのメリット | 複合フローリングのデメリット |
・単層フローリングに比べると材料費が安い
・耐候性があり、膨張や収縮、ねじりや反り、割れが生じにくい ・化粧材によって色合いのバリエーションが多い ・化粧材の種類によっては耐水性や耐久性などの機能を持たせられる |
・強度は化粧材に頼っているため、単層フローリングよりも劣化しやすい
・単層フローリングに比べ、自然な風合いに劣る ・単層フローリングに比べ、踏み心地は硬い ・深い傷がつくと、中の合板が見える |
フローリングの掃除・メンテナンス
フローリングの掃除方法
フローリングは、水や薬剤に弱い性質なので、掃除は乾いたモップなどでほこりを取り除きます。
しっかりと掃除をしたい時には、モップなどでほこりを取り除いた後に、濡らして硬く絞った雑巾で水拭きします。水拭き後はフローリングの床に水分が残らないよう、乾いた布で拭いて完全に乾燥させましょう。
フローリングのメンテナンス
フローリングは紫外線によるダメージや、生活の中でつく傷や水分の吸収による変質・変色があります。
単層フローリングは傷や汚れが付いた場合、サンドペーパーで削ってメンテナンスします。オイルやワックスなどの乾燥を防ぐ施工がある場合、同じもので削った部分をコーティングして保護します。
複合フローリングは汚れがひどい場合、フローリングクリーナーなどの床用洗剤で拭いてから水拭きし、乾拭きしたあとでフローリングワックスを塗ります。
ただし、複合フローリングは10年~15年で貼り替えるのが一般的です。合板をつなぎ合わせる接着剤の寿命が短く、削って修復することが難しい事情によるものです。
最近では、複合フローリングの表面的な劣化であれば、貼り替えを選択する前に、傷による凸凹はパテなどの補修材で埋め、フローリングの上から貼るシートで汚れや経年劣化をカバーする改修リフォーム方法も採用されています。
フローリングの塗装仕上げ
フローリングには、塗装しているものとしていないものがあります。
塗装をすることによって色や艶、肌触りなどをよくする効果があります。
フローリングの塗装仕上げは大きく2つあります。
オイル塗装
オイル塗装は油性で木に染み込む塗料です。オイル塗装をすると塗料が染み込み、木目がはっきりと浮かび上がります。木本来の肌触りを楽しむこともできます。
日焼けによる色の変化などが生まれるため、経年劣化を楽しみたい方に向いています。
ウレタン塗装
ウレタン塗装は樹脂を主成分とした塗料です。木に薄い塗膜ができ、キズがつきにくく水分や汚れに強くなります。ウレタン塗料は工場で機械的に塗布されるものが多くDIYでは扱えません。
ウレタン塗装は光沢のある仕上がりになります。
日焼けや摩耗の影響が少なく、状態を長期的に保ちやすいです。
合成樹脂の床材「塩ビシート」
塩ビシートとは、合成樹脂のポリ塩化ビニール素材でできているシート状の床材です。
塩ビ素材に共通の強みは水や汚れに強く、水周りにも使用できる点です。
今回は塩ビシートの中でも、店舗に使い勝手のよい「長尺シート」と「クッションフロア」をご紹介します。
長尺シート
長尺シートは耐久性があり摩耗に強い素材で、店舗や公共施設など人が歩く場所の内装にはほとんど長尺シートが使われています。
デザインや機能も豊富にあり、お店に合ったものを見つけることができます。
長尺シートのメリット | 長尺シートのデメリット |
・重いものを乗せた時もへこみや傷が残らないほど耐久性がある
・デザインのバリエーションが豊富 ・特定の薬剤に強い耐薬性など、機能のバリエーションも豊富 ・耐水性や防汚性が高いため、掃除しやすくメンテナンスが簡単 |
・クッションフロアに比べると、材料費が高い
・クッションフロアに比べると施工が難しく、施工費も高い ・長尺シートの機能を活かすため、下地を整える塗装工事や防水工事とセットで施工する必要がある ・通気性がなく、湿気がこもりやすい |
クッションフロア
クッションフロアは中間層に発泡塩化ビニールを使いクッション性を高めたものです。
主に土足を前提にしない住宅用に使用されますが、現在は店舗用に耐久性を高めた製品もあります。
店舗用のクッションフロアは、住宅用よりも摩耗に強くなっていますが、長時間一点に集中している重さに対する耐久性は低く、へこみが残ってしまうため、重いものを置く場合は長尺シートを選ぶ方がいいでしょう。
クッションフロアのメリット | クッションフロアのデメリット |
・床が柔らかいので利用者の足腰への負担が少ない
・デザインのバリエーションが豊富 ・施工も簡単にできるため、内装工事費が他の床材と比較すると安い ・耐水性や防汚性が高いため、掃除しやすくメンテナンスが簡単 |
・一般的なフローリングと比較すると劣化が早い
・表面が柔らかいため、傷がつきやすい ・長時間重いものを置くとへこんで戻らないため、使用場所を選ぶ必要がある ・通気性がなく、湿気がこもりやすい |
塩ビシートの掃除・メンテナンス
塩ビシートの掃除方法
塩ビシートは普段はほうきや掃除機などでほこりを取り除く掃除だけで問題ありません。
塩ビシートには耐水性があるので、汚れがひどい場合、中性の床用洗剤を使って汚れを落とした後、洗剤を取り除くように水拭きと乾拭きをします。
塩ビシートのメンテナンス
塩ビシートの表面のコーティングは、経年に伴い、はがれてきます。ワックスを定期的にかけると床を保護でき、見た目も美しく保てます。
塩ビシートの下地に水がしみ、カビが生える場合は貼り替えが必要です。なお、製品にもよりますが、塩ビシートの耐久年数は約10年と言われます。
硬質の床材「タイル」
硬質の床材であるタイルには、磁器質やせっ器質、大理石など様々な種類があります。
今回は内装で使われる磁器質タイルと陶器質タイル、塩ビタイルをご紹介します。
磁器質タイル

画像素材:PIXTA
磁器質タイルとは、石英や長石など白っぽい素材でできており、水の染み込みの指標である「強制吸水率」が3%以下の内装材を指します。
緻密で硬く、表面をたたくと金属のような高い音がします。防水性と耐火性と防汚性の高さから、厨房の床材でよく使われます。
壁材の磁器質タイルには表面をつやつやと光沢のある加工をしたものもありますが、床材の場合は滑りにくいよう、表面をざらさらさせた加工の磁器質タイルがほとんどです。
磁器質タイルのメリット | 磁器質タイルのデメリット |
・内装制限のある厨房などで使用できる
・耐久性が高く、耐候性に優れているので劣化、変色、変質しにくい ・長期間、床の状態を維持でき、補修の必要があっても部分的に行える ・汚れが落としやすく掃除が簡単 |
・他のどの床材よりも材料費と施工費が高く、内装工事費用が高額になる
・衝撃を与えるとタイルが欠けやすい ・タイルそのものの経年劣化はあまり見られないが、接着剤の劣化によるタイルの浮きが起こる ・表面が濡れていると滑りやすい |
陶器質タイル
陶器質タイルは陶土や石灰などでできた、水の染み込みの指標である「強制吸水率」が50%以下の内装材です。
陶器質タイルは素材を加工しやすいものの、水分を吸うため、基本的には内装でのみ使用されます。
ただし、釉薬とよばれるガラス質のコーティング(施釉)がされた陶器質タイルは、コーティング部分はガラスと同じ性質を保つため、水を弾きます。
陶器質タイルのメリット | 陶器質タイルのデメリット |
・色合いやデザインを出すため釉薬で仕上げられているので、バリエーションが豊富
・磁器質タイルよりも施工が簡単で、補修の必要があっても部分的に行える ・耐候性に優れているので劣化、変色、変質しにくい ・カットなど加工がしやすく寸法精度が高いので正確な仕上がりになり内装に向いている |
・磁器質タイルに比べると耐久性が低く、強い圧力に弱い
・衝撃を与えるとタイルがひび割れて破損する ・タイルそのものの経年劣化はあまり見られないが、接着剤の劣化によるタイルの浮きが起こる ・表面が濡れていると滑りやすい |
参考:磁器質タイル・陶器質タイルの機能性は「施釉」で変わる
磁器質タイル・陶器質タイルは、タイルを焼く前に表面に塗るガラス質の釉薬(ゆうやく)が施されている「施釉(せゆう)タイル」と、施されていない「無釉(むゆう)タイル」に分かれます。
無釉タイルはざらざらとした質感で土本来のぬくもりを感じられる点、滑りにくい点、摩耗しても色の変化がない点が魅力です。
施釉タイルは表面がガラス質に変化し、色合いや光沢、風合いが多種多様になるほか、強度や耐水性など機能性がプラスされます。
表面にでこぼこがないので、汚れが付きにくく掃除も簡単に行えますが、床材としては滑りやすくなります。
施釉によって色のバリエーションや質感だけでなく、強度や耐水性といった機能性も変わるため、内装の目的や狙いにあわせて磁器質タイル・陶器質タイルを選ぶことができます。
磁器質タイル・陶器質タイルの掃除・メンテナンス
磁器質タイル・陶器質タイルの掃除方法
磁器質タイルは、基本的に雑巾やモップでの拭き掃除です。
ウェットキッチンなどで汚れがしつこい場合には中性洗剤、黒ずんだ汚れには重曹が効果的です。洗剤を水で薄めてタイルにかけ、モップやブラシなどで汚れを落としていきます。
陶器質タイルでも、基本的には拭き掃除で汚れを落とします。施釉の施されているタイルなどは耐水性があり中性洗剤なども使用できます。
タイルによっては酸性洗剤で色が変わってしまう場合があるので避けた方がいいでしょう。
磁器質タイル・陶器質タイルのメンテナンス
タイルのメンテナンスは専門業者に頼み、都度ひび割れなどの補修や部分的な張り替えを行います。タイルの浮きが全体にわたるケースなどは全面的に貼り替えます。
磁器質タイルは陶器質タイルと比べても、他の床材と比べても耐火・耐水の面で耐久性が高いですが、衝撃によるタイルのひび割れや、接着剤の経年劣化によるタイルの浮きが起こる可能性があります。
陶器質タイルで浮きが発生した場合は専門業者が接着剤を補充し、補強用のステンレスピンを埋め込み、固定させます。
塩ビタイル
塩ビタイルは塩ビ素材でできている内装材です。磁器質タイル・陶器質タイルのようなでこぼこも表現できるリアルなデザインが魅力です。
表面に耐摩耗性の高いフィルムの層があるため、傷に強く、土足に耐えられます。
ただし、磁器質タイル・陶器質タイルのような耐火性はなく耐久年数も短いので、完全な代用はできません。
塩ビタイルのメリット | 塩ビタイルのデメリット |
・耐水性と防汚性があり、水汚れに強い
・本物の磁器質タイルのような質感が出せる ・硬い質感だが、傷がつきにくく衝撃による破損はしにくい ・磁器質タイルと比較すると材料費が抑えられる |
・耐火性がない
・塩ビ素材なので磁器質タイルが持つようなタイルそのものの耐久性はない ・磁器質タイルと比較すると耐久年数が短い ・セメントで目地をつくる陶磁器質タイルと違いボンドで仕上げるため、目地に水が入りやすくカビが生えやすい |
塩ビタイルの掃除・メンテナンス
塩ビタイルの掃除方法
塩ビタイルはほうき等でほこりを取り、硬く絞ったモップなどで水拭きをします。汚れのひどい場合には中性洗剤を薄く溶かしたものを使い、その後水拭きで仕上げます。
塩ビタイルのメンテナンス
塩ビタイルは塩ビシートと同じく、定期的にワックスをかけることで汚れの防止や美しさを保てます。塩ビタイルの耐久年数は10年で、貼り替えが必要になります。
セメントの床材「モルタル」と「コンクリート」
セメントの床材である「モルタル」や「コンクリート」は、洗練されたスタイリッシュな空間を作り上げます。2つの違いとともに、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
モルタル

画像素材:PIXTA
モルタルはセメントと水、砂を混ぜた内装材で、無機質な雰囲気がありながら滑らかさがあるシンプルな空間を作り出します。ステイン塗装という塗料で加工することができ、素材の風合いを残しながらカラーリングができます。
なお、モルタルとコンクリートとの違いとしては、コンクリートは砂利も含まれ、でこぼこしていますが、モルタルは砂利が含まれないため、表面が滑らかです。
モルタルは耐火性がありますが、防水性がないため、撥水加工や防水塗装をしないと水回りには使えません。
モルタルは蓄熱性能が高く、熱をたくさん蓄えられます。冬の間でも日が当たる部分は熱を蓄え、日が落ちてから放熱が続くので、室温維持の対策として省エネにもなります。モルタルはあたたまるまでには時間がかかるので、真夏はピークを過ぎても暑さが続き、冷え込む冬場は冷たさが続くので、使いみちに注意が必要です。
モルタルのメリット | モルタルのデメリット |
・無機質でシンプルな雰囲気になる
・蓄熱性が高く、省エネになる ・撥水加工や防水塗装をしていれば防水性もある ・防水塗装をしていれば内装制限のある厨房でも使用できる |
・硬い素材のため、ひび割れしやすい
・防水性が低い素材に撥水加工や防水塗装するため、定期的なメンテナンスが必要 ・音が反響しやすい ・真夏は暑さが続き、真冬は冷え込むなどの蓄熱性ならではの問題が起こる |
モルタルの掃除・メンテナンス
モルタルの掃除方法
モルタルは基本、掃き掃除を行います。
撥水加工や防水塗装などを施しているモルタルに関しては水拭きなどで掃除ができますが、ウェットキッチンのような大量に水を流す掃除はコーティング部位の劣化を招くため、行わない方がよいでしょう。
モルタルのメンテナンス
モルタルの防水性は低いので、撥水加工や防水塗装が前提で、何年かおきに定期的に塗りなおしが必要です。
モルタル自体の耐久年数は30年ほどといわれ、経年劣化として変色やひび割れ、白い粉が付く「チョーキング」が見られます。
大規模なメンテナンスとしては、左官工事での全面塗り直しが必要です。
コンクリート
コンクリートはセメントと水、砂、砂利を混ぜた内装材です。強度が高いため、基本的には柱や梁、壁といった建物の構造体に使用されます。また不浸透性の素材のため、飲食店の床などにも使用できます。
コンクリート仕上げは取り入れることでスタイリッシュな雰囲気にすることができます。その他にも研磨することやステイン塗装仕上げにすることでデザイン性を高めることができます。
コンクリートは研磨をすることでつやつやとした質感を出すことができます。
研磨したコンクリートは「ポリッシュ仕上げ」とも呼ばれ、表面に光沢が出て高級感のある仕上がりです。表面の耐久性も高くなり、表面が緻密になることで、掃除もしやすくなります。
コンクリートも「ステイン塗装仕上げ」にすることで、空間にあった色を取り入れられます。
コンクリートのメリット | コンクリートのデメリット |
・無機質でシンプルな雰囲気になる
・物質の比重が高く、防音性が高い ・研磨や塗装など加工ができる ・モルタルよりも硬く、耐久性が高い |
・熱伝導率が高いため、夏場は暑く、冬場は寒い
・モルタルに比べて費用が高い ・コーティングされていないと、水分を吸収してしまうため、汚れが目立ちやすい ・結露しやすいため、カビが発生する |
コンクリートの掃除・メンテナンス
コンクリートの掃除方法
コンクリートは掃き掃除が基本です。汚れがひどい場合、プロのクリーニング業者は洗剤を使用し、ブラシなどで落とします。
なお、コンクリートはアルカリ性のため、酸性の洗剤を使うと傷んでしまうので避けましょう。
コンクリートのメンテナンス
コンクリートのメンテナンスには撥水材の塗布、カラークリヤー工法、再現工法があります。
方法 | 概要 | 塗直し周期 |
撥水材 | 防水性を高め、雨染みなどを防ぐ | 2~7年 |
カラークリヤー工法 | コンクリートが劣化する原因の中性化を防ぐ | 5~15年 |
再現工法 | コンクリートの質感を保ち保護力を高める | 10~20年 |
コンクリートの主な劣化はひび割れ(クラック)です。コンクリートの耐久性は強いですが、引っ張られる力には弱いので、地震などで建物が揺れるとひび割れます。ひび割れが浅いものは市販されているクラック補修材を使用することでメンテナンスできます。
構造クラックと呼ばれる幅0.3㎜以上、深さ4㎜以上のひび割れは地盤のゆがみなども考えられるので、専門の業者に見てもらいましょう。
和の床材「畳」
床材としての畳(たたみ)の特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
縁付き畳・縁なし畳
日本ではおなじみの床材です。畳を床材に使うだけで空間に和の雰囲気が広がります。
イ草と経糸(たていと)で作られます。縁(へり・ふち)のある「縁付き畳」(へりつきたたみ)と、縁のない「縁なし畳」(へりなしたたみ)があります。
縁あり畳は一般的に普及しているものです。取り入れることで空間が和風になります。縁のデザインが多様化してきているので、空間に合わせたデザインにすることもできます。
縁なし畳の代表は琉球畳です。和風・洋風どちらのインテリアにも合い、モダンでスタイリッシュな雰囲気を作ることができます。
畳の費用は使用するイ草や使われている量、その仕上がりのグレードによって変わります。良いものは厚みがありイ草の本数が多く使われています。また、イ草の根と先を使っていないので色ムラがありません。
畳の上に「上敷き(うわしき、うわじき)」と呼ばれるござを敷くと、畳の日焼けや汚れを防止できます。花などの模様をつけた「花ござ」と呼ばれるものもあります。
畳のメリット | 畳のデメリット |
・調湿効果がある
・防音性がある ・イ草の香りによるリラックス効果がある ・防湿遮熱シートとセットで施工すれば断熱性能を引き出せる |
・ダニやカビが発生しやすい
・重いものを置くと跡が付く ・水に弱く、汚れが付きやすい ・材料費が高い |
畳の掃除・メンテナンス
畳の掃除方法
水に弱いので、基本はから拭きをします。から拭きだけで落ちない汚れには強めに絞った雑巾で拭いた後、乾いた雑巾で水分をふき取ります。
その他に、固くしぼったお茶の葉を畳全体にまいた後に、ほうきで集める方法もあります。カテキンの吸着性と抗菌・殺菌効果を期待できます。
畳のメンテナンス方法
畳の経年数や傷や汚れの状態によってメンテナンス方法が変わります。
畳は、畳表(たたみおもて)、畳床(たたみどこ)、縁(へり・ふち)で作られています。

画像素材:店舗内装ラボ
使用年数 | 状態 | 方法 | 詳細 |
3~4年 | 日焼け程度 | 裏返し | 畳床はそのまま生かし、畳表は変色していない裏面といれかえる |
6~8年 | 表面に傷 | 表張替 | 畳床はそのまま生かし、畳表と縁を新しくする |
10~15年 | へこみ等 | 畳入れ替え | 畳表・畳床・縁一式を新しくする
畳床が傷んでいる場合に適している |
飲料や水をこぼしてしまっていると、裏返しをしても綺麗にならない場合があるので、その場合は表貼り替えになります。
畳の一部分が切り取られている場合、琉球畳などの縁がない畳の場合は裏返しができません。切り取られている場合は裏返すと、畳床と畳表がかみ合わないためです。琉球畳は縁もイ草でできており裏返すと縁の部分が反対側に折れて割れてしまうためです。
畳は吸湿性があるので、年に1~2回ほど畳干しを行うことをおすすめします。畳干しは晴れた日に、直射日光が当たらない風通しがいい場所で、4~5時間ほど立てて行いましょう。干す場所がない場合は扇風機を使っても干すことができます。
業種や店舗にあわせた床材を選ぶための注意点
床材には多くの種類があって、メリット・デメリットも含め、どの床材を使うべきか迷いますよね。業種別におすすめの床材をご紹介していきます。
店舗内装で使う床材は土足が基本のため、土足に耐えられる床材の種類、DIYが可能な扱いやすい床材の種類についてもあわせて解説します。
業種別のおすすめの床材
床材は業種によっても向き不向きが変わります。業種別におすすめの床材をみていきましょう。
業種名 | 使いみち | おすすめの床材 | 備考 |
飲食業 | 客席 | 長尺シート
塩ビタイル フローリング |
長尺シートと塩ビタイルは水汚れに強く掃除しやすい
ウレタン塗装されたフローリングは水にも強くなるので、飲食店でも取り入れやすい |
厨房 | 長尺シート
磁器質タイル |
厨房には内装制限があるため不浸透性の素材を使う
長尺シートは防滑性がある タイルは耐久年数が高いため長期間使うことできる |
|
美容室 | 作業場 | 磁器質タイル
長尺シート 塩ビタイル |
耐水性があり、デザインも豊富
磁器質タイルは費用が高いため、部分的に使うのもおすすめ |
オフィス | 事務所 | フローリング
タイルカーペット 塩ビタイル |
フローリング+タイルカーペットは素材が柔らかいので足が疲れにくく、パンプスなどでも音が響かないのでおすすめ
塩ビタイルはデザインが豊富で個性を出すことができる |
物販 | 店内 | 長尺シート
塩ビタイル |
どちらも塩ビ素材で、耐久性に優れている
デザインも豊富なので、アパレルなどのおしゃれな空間にもおすすめ |
飲食店は防水工事を前提に床材を選ぶ
飲食店の厨房の床にはドライキッチン・ウェットキッチンの2種類があります。ウェットキッチンを取り入れる場合は、防水工事をしましょう。
ドライキッチンで使用する床材は長尺シートが主流です。防水性、防滑性に優れています。通常の床材と同じ工程で進められるので費用が抑えられます。
ウェットキッチンに使用する床材は耐久性に優れているタイルやコンクリートを使用します。ウェットキッチンは水を多量に使用して掃除をするので、漏水が起こる可能性があります。そのため、防水工事を行うことをおすすめします。
関連記事
DIYで貼り替えるなら施工が簡単な床材を選ぶ
費用を抑えるため、店舗の床を手作りDIYで施工するケースや、メンテナンスするケースもあるかもしれません。
店舗内装でよく使われる5つについて、DIYでの施工しやすさ順に解説します。
店舗内装でよく使われる床材 | DIYでの施工しやすさ | 施工方法 |
塩ビタイル | DIYで比較的簡単に施工できる
傷に強く、カットもしやすいので、施工しやすい |
ボンドを塗り塩ビタイルを貼っていく
または塩ビタイルにもともと粘着剤がついているものを貼っていく |
フローリング | DIYの難易度は中程度
素材のカットの道具や、フローリングを貼った経験があればDIYでも施工できる |
床にボンドを塗り貼っていく
一枚一枚が大きくないので扱いやすいが、湿気による木材の伸縮を計算しないで敷くと、フローリングが浮く また、最後の壁際の木材のカットと埋め込み処理にもテクニックが必要 DIYしやすいフローリング製品を選ぶのがおすすめ |
長尺シート | DIYの難易度は高い
クッションフロアに比べても重く、硬さもあるので、施行しにくい |
シートを広げながら部屋の形に合わせて切っていく
最後に壁と長尺シートの隙間を合わせる部分にテクニックが必要 |
磁器質タイル | DIYの難易度はかなり高い
ただし、タイルの後ろがシールになっているものであれば、簡単に施工できる ただし、接着剤の耐久年数は短い |
タイルには接着剤で貼る乾式工法と、モルタルとセメントペーストで貼る湿式工法がある
乾式工法のほうが比較的簡単だが、どちらもテクニックが必要 |
土足前提の店舗は耐久性のある床材を選ぶ
店舗の床は土足に耐える耐久性のある床材を選びましょう。
フローリング
強度の強い木材や塗装によって強度を増した床材を選ぶことがポイントです。
単層フローリングでは木によって硬さが変わります。硬い樹種の方は傷がつきにくく、土足に向いていると言えます。硬い木としてはカリンやクマルなどが挙げられます。
単層フローリング、複合フローリングともに、塗装によって強度が変わります。表面にウレタン樹脂などコーティング系の塗料や高機能塗料が塗ってあるとキズや汚れに強くなります。
塩ビシート
クッションフロアは基本的に傷がつきやすく柔らかい素材です。土足対応の表示のあるものを選びましょう。
長尺シートは表面が固く傷がつきにくいです。デザイン性も高く土足の店舗の床材におすすめです。
タイル
磁器質タイルは強度が強く水に強いため、頻繁に使われるような場所でも十分な耐久性があります。
陶器質タイルは比較的欠けやすいため、頻繁に使用される場所には向いていません。釉薬が塗られたタイルは雨の日など滑りやすいので注意しましょう。
塩ビタイルは強度があり、キズや水汚れにも強いため、土足に向いていると言えます。
モルタル・コンクリート
もともと屋外でも使用されることの多いモルタルやコンクリートは、強度も十分で土足でも問題なく使用できます。
畳
畳は汚れやすく、耐久性もないので土足の店舗には向いていません。土足前提でない店舗の内装で使用しましょう。
安全・安心を示すマークがついている床材を選ぶ
内装材にはその素材の安全性や環境保護に努めていることを示すマークがあります。
マークがついているかもその素材を選ぶ一つの指標になります。
SIAAマーク | SIAA(抗菌製品技術協議会)で規定されているマークです。
SIAAでは、適正で安心できる抗菌・防カビ・抗ウイルスの加工製品の品質や安全性のルールを整備し、そのルールに適合した製品はSIAAマークを表示することが認められています。 |
シックハウス対策品ラベル | シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの発散量の指標です。「F☆☆☆☆(フォースター)」のように表示されています。 星2つから4つで飛散量を表しており、星4つあるものはホルムアルデヒドの飛散量が低く安心して使用できます。 |
エコマーク | 環境への負担が少ない商品に付けられています。 |
まとめ
今回は床材の種類や費用、店舗を開業するのにおすすめのものをご紹介しました。
たくさんの種類があり、選ぶのに迷うこともあると思います。
床材はデザイン、種類、特徴から選ぶのもいいですが、メリット・デメリットをしっかりと理解したうえで決めることで、居心地の良い空間にすることができます。素材の安さだけを考えて取り入れると、メンテナンスの費用が高くなってしまう場合もあります。
その他にも、人が土足で何度も行き来するのを支えています。耐久性や耐水性などその場所に合った機能を持つものを取り入れましょう。
店舗内装ラボで、ぜひ一緒に素敵な店舗を作りましょう。